クリストフォロス

聖クリストフォロス

聖クリストフォロス（Χριστόφορος, Christophoros）は、ギリシア語で「キリストを背負うもの」を意味し、3世紀のローマ皇帝デキウスの時代に殉教したとされるキリスト教の伝説的な聖人です。

概要

正教会、非カルケドン派、聖公会、ルーテル教会で聖人とされています。伝統的に7月25日が祝日でしたが、カトリック教会では「史実性に乏しい」として聖人暦から除外されています。日本正教会では「聖致命者ハリストフォル」と表記されます。

伝承

クリストフォロスの物語は教派によって異なっています。

カトリック教会の伝承

もともとレプロブスというローマ人（またはカナン出身のオフェロス）でした。キリスト教に改宗後、イエス・キリストに仕える方法を隠者に尋ね、人々に奉仕することがその道だと教えられます。流れの速い川で人々を無償で渡し始めますが、ある日、小さな男の子を渡す際、その異様な重さに驚愕します。男の子はイエス・キリストであり、全世界の罪を背負っていたため重かったのです。川を渡り終えたイエスはレプロブスを祝福し、「キリストを背負った者」という意味の「クリストフォロス」と改名させます。また、彼が地面に突き刺した杖から枝葉が生え巨木となり、それを見た人々がキリスト教に改宗しました。この話を聞いた王（またはデキウス帝）によって捕らえられ、拷問の末に斬首されたと伝えられています。

正教会の伝承

犬の頭を持つ人物として描かれることがあります。伝承では、デキウス帝の時代にレプルブスという巨人が捕虜となりました。彼はキレナイカのベルベル人部族「マルマリテ族」の出身で、同族は犬頭人で食人の習慣があると恐れられていました。キリスト教信仰を受け入れた彼は教えを説きましたが、アンティオキア総督（または皇帝）の命で捕らえられ、信仰のために処刑されます。処刑は何度も失敗し、その過程で多くの人々を信仰に導きました。正教会では5月9日が記憶日です。イコンでは犬の頭を持つ人物として描かれますが、1722年にロシア正教会の主流派聖務会院は犬頭の描写を禁止しました。しかし、正教古儀式派では伝統を守り、現在も犬頭のイコンが描かれ続けています。スヴィヤシュスクの伝統では、馬頭の人物として描かれます。

その他の伝承

エルネスト・トンプソン・セトンが採集した例では、ゴルムという巨人が「もっとも偉大な主」を探し求めます。最初は父に仕えましたが、父より強い王、王より強い悪魔に仕えようとします。しかし、悪魔が「王の中の王」を恐れることを知り、川辺で人々を渡すことで「王の中の王」を待ちます。ある冬の日、小さな男の子を渡したところ、その男の子がイエス・キリストに姿を変え、ゴルムを「クリストフォロス」と名付けたという物語です。

イギリスのデヴォンシャー州には、川を渡るものを背に乗せて運ぶ怪物の言い伝えがあり、セイバイン・ベアリング＝グールドは、教会の聖クリストフ像への信仰が源泉だと考えました。

関連項目

きりしとほろ上人伝（芥川龍之介の小説）
黄金伝説 (聖人伝))
ウプウアウト
シリウス

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