グール (クトゥルフ神話)

クトゥルフ神話のグール：死体とドリームランドを繋ぐ存在

クトゥルフ神話において、グールは死体食の邪悪な存在として知られています。ハワード・フィリップス・ラヴクラフト（HPL）の1927年発表の短編小説『ピックマンのモデル』で初登場し、以降多くの作家によって独自の解釈が加えられ、クトゥルフ神話における重要なクリーチャーとして確固たる地位を築いています。

グールの生態と特徴

アラビアの伝承を起源とするグールは、地下世界に生息し、墓を荒らして死体を食らうとされています。外見は犬のような姿で、蹄を持つと描写されることが多いです。彼らは人間社会に巧妙に寄生し、人間の赤子をグールの赤子とすり替えることで、新たなグールを育成するケースもあります。さらに、何らかの方法で人間をグールに変容させることも可能であるとされています。

グールは単に死体をあさるだけでなく、目覚めの世界とドリームランドを行き来する能力も持ち合わせています。ドリームランドではナイトゴーントと同盟関係にあり、ナイトゴーントに騎乗して飛行することもある一方、ガグ族やガストといった他のクリーチャーとは敵対関係にあるとされています。

彼らの活動範囲は墓地や都市の地下に広がり、複雑に入り組んだ迷宮のようなネットワークを形成していると考えられています。

グールと人間の関わり

グールは常に人間社会の脅威となる存在ではあません。HPLの作品に登場するリチャード・アプトン・ピックマンやランドルフ・カーターといった人間は、グールと交流し、協力関係を築いた例も存在します。ピックマンはリアリティあふれるグールの絵を描く画家として知られ、後に自身もグールとなり、ドリームランドのグールたちのリーダー格となったとされています。また、エジプト女王ニトクリスも、HPLの作品において「グールの女王」として言及されており、グールとの関わりが示唆されています。

グールが登場する主な作品

グールはHPLの作品以外にも、多くのクトゥルフ神話作品に登場し、それぞれの作品で独自の解釈が加えられています。

HPL: 『ピックマンのモデル』『未知なるカダスを夢に求めて』
クラーク・アシュトン・スミス: 『名もなき末裔』
ロバート・ブロック: 『自滅の魔術』『哄笑する食屍鬼』
ロバート・B・ジョンソン: 『遥かな地底で』
リン・カーター: 『ナスの谷にて』『窖に通じる階段』『円柱都市にて』
ブライアン・マクノートン: 『食屍姫メリフィリア』
ローレンス・J・コーンフォード: 『霊廟の落とし子』
ドナルド・タイスン: 『ネクロノミコン アルハザードの放浪』
ケイトリン・R・キアナン: 『禁じられた愛に私たちは啼き、吠える』
ジェマ・ファイルズ: 『腸卜』

これらの作品では、グールの生態や能力、人間との関わりなどが様々な形で描かれ、クトゥルフ神話の深遠さと多様性を示しています。

グールの神と関連概念

初期のHPLの作品では、グールに特有の神は設定されていませんでしたが、後の作家たちは独自にグールを司る神を創造しています。リン・カーターの作品では邪神ニョグタを崇拝するグール一族の長、ナゴーブが登場します。TRPGなどでは、ナイアーラトテップやモルディギアンがグールの神として扱われることもあります。また、ロバート・ブロックの『ブバスティスの子ら』に登場する猫神ブバスティスも、グールと関連付けて解釈されることがあります。

まとめ

グールは、その恐ろしい姿と、人間社会に潜む影のような存在として、クトゥルフ神話において重要な役割を果たしています。死体とドリームランドを繋ぐ存在として、グールは読者に恐怖と神秘的な魅力を与え続けるでしょう。 彼らの生態や行動、人間との複雑な関係性、そして様々な作家による独自の解釈は、クトゥルフ神話の奥深さを象徴する存在と言えるでしょう。さらに、グールは地下鉄など都市の地下空間とも密接に結びついており、現代社会の闇を暗示する存在としての側面も持ち合わせています。

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