テイラー (DD-468)

USS テイラー (DD/DDE-468):

USS テイラー (DD/DDE-468) は、第二次世界大戦中に目覚ましい活躍を見せたアメリカ海軍のフレッチャー級駆逐艦です。その艦名は、19世紀のアメリカ海軍少将、ウィリアム・テイラーに由来します。

特筆すべきは、第二次世界大戦中に合計15個もの従軍星章と海軍部隊感状を受章したことです。この功績は、アメリカ海軍の艦艇の中でも上位に位置します。ウィリアム・ハルゼー元帥も、著書の中で「参加したどの任務でも見事に務めを果たした」と、その働きぶりを絶賛しています。

2019年現在、アメリカ海軍にはテイラーの名を持つ艦が他に2隻存在しますが、いずれも艦名の由来は異なっています。

艦歴

1941年8月28日にバス鉄工所で起工され、1942年6月7日にH・バルドリッジ夫人によって進水しました。1942年8月28日、マサチューセッツ州チャールストン海軍工廠にてベンジャミン・カッツ少佐の指揮下、就役。

第二次世界大戦

就役後、「テイラー」は大西洋艦隊に配属され、第20駆逐戦隊に加わりました。メイン州カスコ湾での訓練後、沿岸部での船団護衛に従事します。

大西洋

1942年11月、トーチ作戦のため大西洋を横断し、カサブランカ沖へ向かう船団を護衛します。中立国スペインの商船「ダロー」を拿捕するも、敵への情報漏洩を防ぐためジブラルタルへ移動させました。12月初旬にノーフォークへ帰還。

太平洋

1942年12月17日、太平洋艦隊での任務に就くため、第13任務部隊と共にハンプトン・ローズを出港。パナマ運河、サモアを経由し、ニューカレドニアのヌーメアに到着。1943年1月20日から南西太平洋での任務を開始します。

ニューヘブリディーズ諸島に加わり、エファテ島へ。第21駆逐戦隊第41駆逐隊に加わり、重巡洋艦3隻、軽巡洋艦3隻、護衛空母2隻からなる第18任務部隊を護衛。

レンネル島沖海戦

1943年1月27日、第18任務部隊はガダルカナル島周辺で作戦活動中、日本軍の航空攻撃を受けます。29日、一式陸上攻撃機による魚雷攻撃を受け、「シカゴ」が大破。「ルイビル」による曳航中、「テイラー」は敵機から2隻を護衛。翌日、「シカゴ」は更なる攻撃を受け沈没。「テイラー」らは乗員の退艦を援護した後、エファテ島へ帰還。

ガダルカナル島の戦い

2月から3月にかけて、「テイラー」はエスピリトゥサント島とガダルカナル島間で活動する軽巡洋艦3隻を護衛。3月15日から16日の夜には、ソロモン諸島中部のコロンバンガラ島ヴィラ・スタンモーアプランテーションへ砲撃を加えます。

4月4日から6日にかけては、「ザ・スロット」を哨戒。7日には給油艦「カナワ」を護衛しますが、日本軍の空襲により「カナワ」は破壊されます。「テイラー」は敵機を撃墜しつつ離脱。

その後もソロモン諸島とエスピリトゥサント島間の船団護衛、ベラ湾での機雷敷設の援護、敵施設への艦砲射撃などを実施。

コロンバンガラ島沖海戦

7月、ニュージョージア島上陸を支援。7月12日には呂号潜水艦を発見し、損傷させたと判断されました。同日、「テイラー」はコロンバンガラ島沖海戦に参加。魚雷攻撃により、日本側の旗艦である軽巡洋艦「神通」を撃沈したと推定されています。

第一次ベララベラ海戦

8月15日、上陸を援護。8月17日、第一次ベララベラ海戦が生起。アメリカ側の砲撃が日本の駆逐艦「浜風」らを損傷させたものの、双方の駆逐艦に損失は出ませんでした。

第二次ベララベラ海戦

10月2日の夜、第二次ベララベラ海戦が発生。「テイラー」は僚艦と共に、すでに交戦中であった駆逐艦に加勢します。戦闘の結果、駆逐艦「夕雲」と「シャヴァリア」が失われました。

ギルバート・マーシャル諸島の戦い

10月31日、中部太平洋部隊へ移籍。空母の護衛、対空戦闘、対潜哨戒に従事。

中部太平洋

1944年2月、西太平洋へ。船団護衛、護衛空母の護衛に従事。4月、第7艦隊に加わるためニューギニアへ。

モロタイ島の戦い

9月、モロタイ島の戦いでの戦闘機管制、対潜・対空警戒を行う。

レイテ島の戦い

10月18日から24日にかけて、レイテ島の戦いに参加する侵攻部隊を護衛。スリガオ海峡海戦では支援部隊として活動。撃墜されたパイロットや水兵を救助、敵機による空襲から艦隊を防衛。

ルソン島の戦い

1945年1月4日、巡洋艦を護衛してレイテ湾を出発。特殊潜航艇を撃沈。上陸作戦が行われている間、日本側の空襲を受けましたが、対空砲火で応戦。

日本本土近海

6月半ばに第3艦隊へ復帰。高速空母機動部隊の護衛を担当。8月15日、日本が降伏を表明。8月29日、戦艦「ミズーリ」が東京湾へ入った際には、「テイラー」と ”戦友" たる「オバノン」「ニコラス」が同行し、戦後初めて東京湾に入ったアメリカ海軍艦艇の栄誉に浴しました。9月2日に「ミズーリ」艦上で行われた降伏文書調印式にも立ち会い、連合国の特派員たちの送迎任務にあたりました。

1946年5月31日に退役し、サンディエゴで予備役に編入。

朝鮮戦争

1951年12月3日、護衛駆逐艦として再就役。朝鮮半島沖合で航空攻撃を展開していた第77任務部隊に合流。

敵勢力圏を爆撃する空母の護衛、ハンターキラー任務、元山沖での海上封鎖、沿岸砲撃などを実施。台湾海峡哨戒も行いました。

1953年5月2日、ハワイを出発し、朝鮮半島西岸へ。空母護衛、沿岸哨戒、北朝鮮軍支配地域への艦砲射撃などを行いました。

7月27日に朝鮮戦争休戦協定が署名された時、「テイラー」は真珠湾への航海のちょうど半ばにありました。

1954年から1962年

1954年から1959年まで、西太平洋へ5度の展開。1959年から1960年には、オーストラリアを訪問。1962年には、ドミニク作戦の支援部隊として活動。同年、駆逐艦へ類別が変更。

1962年から1965年

1963年6月4日、第7艦隊の任務に就くため真珠湾を出発。横須賀、佐世保、スービック湾の基地だけでなく神戸、香港、沖縄、そして釧路にも寄港。「ピープル・トゥ・ピープル・プログラム」への貢献を行いました。1964年11月23日、アジア方面へ。

ベトナム戦争

1966年2月25日、ベトナム沖の第70.4任務集団に加わるため横須賀を出港。台湾海峡哨戒、香港訪問、ヤンキー・ステーションでの活動、艦砲による火力支援、対潜訓練などを実施。1967年4月18日、アジアでの第7艦隊の活動へ加わるため真珠湾を出発。

1968年8月5日、真珠湾を出てトンキン湾へ向かう。空母のプレーンガード、対空・対水上監視や対潜演習、沿岸砲撃支援任務などを行う。

1969年1月半ば、「テイラー」はベトナム海域を離れて二度と戻ることはありませんでした。5月、調査の結果、もはやこれ以上任務に従事させるには不適であると判定され、1969年6月3日に退役。

イタリア海軍

1969年7月2日に除籍された「テイラー」は、同時にイタリア海軍へ移管。ランチエーレ (Lanciere, D 560) と改名され1971年1月まで使用された後、イタリア海軍で使用されていた姉妹艦の部品取りとして使用されました。

栄典

「テイラー」は、第二次世界大戦の功績で15個、朝鮮戦争の功績で2個、ベトナム戦争で6個の従軍星章を受章しました。また第二次世界大戦で海軍部隊感状も受章しています。

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