デチェン・チベット族自治州

デチェン・チベット族自治州：大いなる安楽の地

デチェン・チベット族自治州は、中国雲南省の西北部に位置する自治州です。チベット族が人口の約33%を占め、カム地方の南部に位置しています。その名はチベット語で「大いなる安楽」を意味する「デチェン」に由来します。

歴史

この地は、唐代には吐蕃の支配下にあり、南詔との連携が図られました。吐蕃の衰退後は大理国の支配下に入り、その後モンゴル帝国の梁王国に組み込まれます。1390年に梁王国が滅亡すると、ジャン王国の支配下に入りました。17世紀半ばには、グシ・ハン王朝によってジャン王国が征服され、デチェン地方を含むカム地方南部の広大な領土が奪われました。

1724年、清朝は雍正帝の時代にチベット分割を行い、グシ・ハン一族がチベット諸侯に対して有していた支配権を接収しました。ジャン王国はデチェン地方をはじめとするカム地方南部に対する支配権の回復を求めましたが、清朝はこれを拒否。デチェン地方の諸侯は、四川省と雲南省のどちらに帰属するかを議論した結果、1726年に雲南省を通じて土司の称号を受けることになりました。この時、現在の領域を枠組みとするデチェン州という行政単位が成立しました。

辛亥革命後、チベット政府は独立を宣言し、アムド、カムへと出兵しました。1913年には、雲南軍がデチェン地方を経由してカム地方に侵攻し、チベット軍と交戦。チベット軍はディチュ河以西に押し返され、デチェン地方は雲南省の支配下に留まりました。1936年には、中国紅軍が長征の途中でこの地区を通過しています。1950年に人民解放軍が進駐し、1956年にデチェン・チベット族自治州が成立、麗江地区に所属しましたが、1973年に雲南省直轄の自治州となりました。

行政区画

自治州政府所在地のシャングリラ市は、元の中甸県です。チベット語のデチェン方言では、英語の「シャングリラ」に近い発音をすることから、観光客誘致のため2001年12月に正式に改名されました。シャングリラは、ジェームズ・ヒルトンの小説『失われた地平線』に登場する桃源郷に由来します。

現在、デチェン・チベット族自治州は、1県級市、1県、1自治県を管轄しています。

県級市：シャングリラ市（香格里拉市）
県：徳欽県
自治県：維西リス族自治県

地理

デチェン・チベット族自治州は、北はチベット自治区チャムド市、東は四川省のカンゼ・チベット族自治州および涼山イ族自治州、南と西は雲南省の麗江市および怒江リス族自治州と接しています。チベット高原が南に伸びた場所に位置し、横断山脈が南北に走っています。標高は1,600メートルから6,000メートルに及び、梅里雪山が有名です。長江の上流にあたるディチュ河（金沙江）が州の南境を大きく蛇行し、メコン川が州の西部を南流しており、三江併流の一部を構成しています。金沙江の本流には、虎跳峡と呼ばれる深い峡谷があります。

交通

航空：デチェン・シャングリラ空港
鉄道：麗香線
道路：香麗高速道路、G214国道

デチェン・チベット族自治州は、その豊かな自然と多様な文化が魅力の地域です。近年は観光地としても注目されており、多くの人々がその美しい景観を求めて訪れています。

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