ドコモPHS

ドコモPHSとは

ドコモPHSは、NTTドコモグループがかつて日本国内で展開していたPHS事業、およびそのサービス名です。2005年4月30日に新規契約受付を終了し、2008年1月7日をもってサービスを完全に終了しました。PHS事業者としては、アステルグループに次ぐ事業廃止となりました。

事業の変遷

NTTパーソナルからの事業譲渡

NTTグループ内でPHS事業を担当していたNTTパーソナルは、携帯電話事業者との競争激化により経営が低迷していました。そのため、1998年12月1日にPHS事業をNTTドコモグループへ譲渡。NTTパーソナルはその後、解散・清算されました。

ドコモによる事業展開

ドコモは、NTTパーソナル時代の反省を踏まえ、音声通話よりもPHSならではのデータ通信や位置情報サービスに注力しました。1999年には、携帯電話（mova）とPHSの複合端末「ドッチーモ」を発売。また、当時としては高速で安価なデータ通信や、構内PHS内線サービス「パッセージ」を展開しました。さらに、ドコモの携帯電話ユーザーに対して、PHSを2台目として利用する際の優遇策を講じました。

事業の終焉

ドコモPHSは、最盛期には2001年度末に192万契約を達成しましたが、DDIポケット（現ウィルコム）の定額データ通信サービス開始により競争力が低下。ドコモも定額データ通信サービス「@FreeD」を開始しましたが、劣勢を挽回できませんでした。携帯電話市場の競争激化やPHS設備の維持費増大により、2005年にサービス終了が決定しました。

サービスの特徴

データ通信

1999年3月、ドコモPHSはPHS事業者として初めて64kbpsデータ通信サービスを開始しました。当時、固定回線はISDNが主流だったため、モバイルで固定回線並みの速度が出せる64kbps通信は注目を集めました。しかし、DDIポケット（現ウィルコム）のような高出力基地局が少なく、64kbps通信が利用できない地域も存在しました。ドコモPHSでは、64kbpsを維持できない場合には回線を切断する「ギャランティ方式」を採用し、安定性で劣るという批判もありました。

音声通話

「@FreeD」開始以降、ドコモPHSはデータ通信に特化したため、音声通話サービスでは目立った動きはありませんでした。音声端末は2003年の「WRISTOMO（リストモ）」が最終機種となりました。

その他のサービス

NTTパーソナル時代から提供していたメールサービス「パルディオEメールサービス」は、対応端末の登場により携帯電話からも利用可能になりました。また、FOMAに先駆けて音楽配信サービス「M-stage music」などのマルチメディアサービスを展開していました。

サービス終了と移行措置

2005年2月、ドコモがPHS事業からの撤退を検討しているという報道があり、同年4月30日に新規契約受付を終了。2008年1月7日にサービスを完全に終了しました。ドコモはPHSユーザー向けに、FOMAやmovaへの移行策を提示し、携帯電話への移行を促しました。また、ウィルコムへの移行も支援しました。

移行時の課題

PHSから携帯電話への移行には、電話番号の変更、月額料金の上昇、データ通信端末の対応機種不足などの問題がありました。

主な端末

ドコモPHSでは、「パルディオ」ブランドから「ブラウザホン」ブランドへと移行しました。

音声端末

331S-II、331P-II、331T-II、331N-II：NTTパーソナル端末のリモデル
332S：331S-IIのストレート版
333P：薄型フリップ端末
611S：パルディオ611Sを参照
621S、622S：「Eメールパルディオ」として初のEメール対応機種
623N、623P：「パルディオ テラ」としてクイックリンク機能搭載
631S：622Sベースの「ここだけプラン98」対応機種
632P：P-link機能対応の唯一の音声端末
641Ss、641Sf：ブラウザホン641Sを参照
641P、641P-II：ブラウザホン641Pを参照
642S：ブラウザホン642Sを参照
633S：ブラウザホン633Sを参照
Picwalk SH712m：音楽配信サービス対応端末
Lookwalk P751v：Lookwalk P751vを参照
WRISTOMO：リストモを参照

ドコモPHSの音声端末は、公衆モードのほかに、ホームステーションモード、オフィスステーションモード、トランシーバモードといった独自の機能も搭載していました。

データ通信端末

Mobile Card P-in：初のデータ通信端末
P-in Comp@ct：CFカード型データ通信端末
P-in m@ster：携帯電話接続型データ通信端末
P-in memory：16MBフラッシュメモリ搭載CFカード型データ通信端末
P-in Free 1S、P-in Free 1P：@FreeD対応データ通信端末
P-in Free 2PWL：@FreeD対応無線LANデータ通信端末
Picwalk P711m：音楽配信サービス対応端末

オプション製品

ホームアンテナ HA-3S：電波中継用アンテナ
P-link station：P-link機能の親機となるホームアンテナ
ホームステーション 903U-II：PHSを固定電話の子機にする装置
パルディオデータカード DC-6S：64kbps対応データカード
Mobile Card Duo：PHS/PDC対応データカード
Mobile Card Triplex N：PHS/PDC/DoPa対応データカード

ドコモは、CF型データ通信カードと接続できるHandheld PCやPocket PCなどのモバイル端末も提供していました。

料金プラン

音声通話コース

プラン270：月額2,700円、無料通話分なし
おはなしプラスL：月額4,200円、無料通話分2,200円分
プラン198：月額1,980円、無料通話分なし、通話料金割高
プラン198デイライト：月額1,980円、昼間はプラン270と同等、夜間は割高
おはなしプラス：月額1,980円、無料通話分1,000円分、通話料金割高
プラン135：月額1,350円、無料通話分なし、通話料金18秒10円固定
データプラス：月額1,980円、無料通話分1,000円分、通話料金割高
ここだけプラン98：月額980円、通話先3箇所限定

データ通信コース

@FreeD：定額データ通信サービス

オプションプラン

データ料金プランF5：5時間まで通信可能
P-p@c10：10時間まで通信可能
P-p@c20：20時間まで通信可能
mopera：ダイヤルアップ接続サービス

沿革

1998年12月：ドコモに経営移譲
1999年1月：64kbpsデータ通信試験サービス開始
1999年3月：64kbpsデータ通信サービス開始
2002年4月：P-p@cサービス開始
2003年4月：@FreeDサービス開始
2005年4月：新規契約受付終了
2008年1月7日：サービス終了

脚注

詳細は、以下のNTTドコモの公式サイトを参照してください。

PHSサービスの新規申込み受付終了及び2005年3月期業績予想の修正に関するお知らせ - NTTドコモ
PHSサービスの終了に関するお知らせ - NTTドコモ
* ウィルコムへの優待申込み開始のお知らせ - NTTドコモ

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