ノースカロライナ (戦艦)

戦艦ノースカロライナ（USS North Carolina, BB-55）

ノースカロライナは、アメリカ海軍が第二次世界大戦で使用した戦艦であり、ノースカロライナ級戦艦のネームシップです。艦名はノースカロライナ州に由来し、同名の艦としては3隻目にあたります。姉妹艦には「ワシントン（USS Washington, BB-56）」があります。

概要

ノースカロライナ級戦艦は、大和型戦艦と同世代の艦です。1930年代中旬、ロンドン海軍軍縮条約の解除に伴い、アメリカ海軍は新世代戦艦の建造を決定しました。コロラド級戦艦以来、十数年ぶりの新造戦艦であり、旧式戦艦の代替と仮想敵国に対する戦力優位を確保する目的がありました。当時、ヨーロッパではドイツ海軍の装甲艦を皮切りに建艦競争が再燃しており、アメリカもこれに対応する必要がありました。

当初、アメリカ海軍は第二次ロンドン条約を見越して、14インチ砲12門を搭載する条約型戦艦を検討していましたが、日本が条約を脱退したため、16インチ砲搭載へと変更しました。しかし、パナマ運河の通過を前提とした設計であったため、防御力は同世代の戦艦並みにとどまりました。その一方で、27ノット以上の速力を発揮できる高速戦艦としても設計されました。

ノースカロライナはニューヨーク海軍工廠で建造され、1937年10月27日に起工、1941年4月9日に就役しました。就役当初はいくつかの不具合に悩まされましたが、太平洋戦争開戦後は機動部隊に所属し、輸送船団の護衛や航空母艦の直衛などの任務に就きました。

1942年9月15日には、伊号第十九潜水艦の雷撃により中破しましたが、修理後、再び戦線に復帰しました。終戦まで、機動部隊の護衛や上陸作戦の支援砲撃に従事し、日本本土への艦砲射撃も行いました。

第二次世界大戦後は練習艦として使用され、その後予備艦艇として保管されたのち退役し、現在は記念艦として現存しています。

艦歴

建造から太平洋戦争前半まで

ノースカロライナ級戦艦は、旧式戦艦の代替として計画されました。建造は1936年6月3日に議会で承認され、ノースカロライナは1937年10月27日にニューヨーク海軍工廠で起工しました。

1940年6月13日、ノースカロライナ州知事の娘、イザベル・ホーイによって進水しました。進水後、同工廠では高速戦艦「アイオワ」の建造が開始されました。当初の予定より工期が短縮され、1941年7月中旬には竣工予定と報道されました。

1941年4月9日、初代艦長オーラフ・M・ハストベット大佐の指揮下で就役しました。同時期には、Uボートの雷撃で損傷したイギリス海軍の戦艦マレーヤが、修理のためニューヨーク港に到着しており、ノースカロライナの就役を待っていました。

同年7月、ノースカロライナは太平洋艦隊の旗艦になる予定と報道されましたが、艤装工事と試運転でいくつかの不具合が見つかり、特に推進器の振動問題は深刻でした。修理を重ねた結果、振動は危険水準以下に抑えられましたが、実戦投入までには時間がかかり、「ショウボート」や「USO ノースカロライナ」などと揶揄されました。

太平洋戦争開戦前にカリブ海で整備を完了し、集中的な訓練を実施しました。開戦時には、大西洋艦隊の第六戦艦戦隊に所属していました。

1942年6月10日、パナマ運河を渡って太平洋に転じました。

ガダルカナル島の戦い

1942年8月7日、アメリカ海軍はウォッチタワー作戦を開始し、ガダルカナル島とフロリダ諸島に海兵隊を上陸させました。ノースカロライナは、空母3隻（サラトガ、エンタープライズ、ワスプ）を擁する第61任務部隊の護衛艦艇として参加しました。

ガ島上陸作戦に対し、日本軍はラバウル航空隊を中心に反撃しましたが、フレッチャー提督は空母の損耗を懸念し、機動部隊を撤退させました。これにより、ガ島に上陸した海兵隊は孤立しました。

8月下旬、日本軍はガ島への増援部隊を輸送するため、輸送船団を派遣しました。連合艦隊もガ島に接近し、両軍は第二次ソロモン海戦で激突しました。

8月24日の海戦で、ノースカロライナは至近弾を受けたものの、大きな損傷はなく、日本軍機7機以上を撃墜しました。エンタープライズは被弾しましたが、応急修理で致命傷は避けられました。

8月25日朝、伊15はノースカロライナを含むアメリカ艦隊を発見し通報しました。大和は追撃を開始しましたが、南雲機動部隊とすれ違い、捕捉できませんでした。

8月26日、伊19は空母と戦艦を含む米機動部隊を発見しましたが、雷撃の機会を得られませんでした。8月31日には、伊26が空母サラトガを雷撃、同艦は戦線を離脱しました。

伊号第十九潜水艦の攻撃

1942年9月13日、アメリカ軍機動部隊発見の報告により、連合艦隊はソロモン方面で行動中の潜水艦に攻撃を命じました。9月15日、伊19は空母ワスプを雷撃し、同艦を沈没させました。

ワスプを護衛していたノースカロライナも、伊19の雷撃を受けました。魚雷は、ノースカロライナの装甲の無い水線下部分に命中し、浸水と船体の損傷が発生しました。乗員5名が死亡、23名が負傷しましたが、巧みなダメージコントロールにより、約6分で傾斜を復元させることができました。

この攻撃で駆逐艦オブライエンも被雷し、後に沈没しました。

日本側の記録では、伊19は一度の攻撃で3隻に魚雷を命中させたとされますが、アメリカ側の研究では、ワスプ撃沈、ノースカロライナとオブライエンを撃破したのは伊15とする説もあります。しかし、伊15が魚雷発射を記録しておらず、3隻の戦果は伊19によるものでした。

ワスプの沈没とノースカロライナの戦線離脱により、太平洋戦線における稼働空母と戦艦は一時的に減少しました。

終戦まで

真珠湾での修理を終えたノースカロライナは、姉妹艦ワシントンなどと第64任務部隊に加わり、ソロモン諸島の補給線を守る空母機動部隊の前衛を務めました。1943年3月から4月にかけて、射撃管制機器とレーダー装置を装備し、その後もギルバート・マーシャル諸島の戦い、マリアナ沖海戦、九州沖航空戦などの作戦に参加しました。レイテ沖海戦時は修理中でした。

1945年3月下旬以降の沖縄戦にも参加し、4月5日には僚艦から誤射されて小破しました。終戦後は、上陸部隊の輸送任務や日本沿岸のパトロールに従事し、10月には帰還兵を乗せてアメリカへ帰還しました。

ノースカロライナは、第二次世界大戦の戦功により15個の従軍星章を受章しました。

退役とその後

ノースカロライナは1947年6月27日に退役し、予備艦隊として保管されました。1960年6月1日に海軍籍から除籍され、1961年9月6日にノースカロライナ州民の管理下に置かれました。

1962年4月29日、ノースカロライナ州ウィルミントンで記念艦として一般公開されました。艦の一部は、原子力潜水艦ノースカロライナに使用されました。

1986年にはアメリカ合衆国国定歴史建造物に指定され、現在は「戦艦ノースカロライナ号博物館」として、多くの訪問客に公開されています。

登場作品

かわぐちかいじ作の漫画『ジパング』に登場します。アッツ島攻略作戦でキンケイド提督の旗艦として登場し、イージス艦「みらい」と交戦、大破しています。

出典

注釈、脚注、参考文献

[参考文献一覧は省略]

関連項目

アメリカ海軍の艦隊一覧
ノースカロライナ (原子力潜水艦)
海事博物館

外部リンク

USS North Carolina Battleship Memorial
Navy photos of North Carolina
history.navy.mil/danfs: USS North Carolina
Maritimequest USS North Carolina Photo Gallery
USS North Carolina(BB-55) Torpedo Damage Solomon Islands 15 September 1942
* NavSource Online: BB-55 USS North Carolina

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