ノースカロライナ級戦艦

ノースカロライナ級戦艦

ノースカロライナ級戦艦は、アメリカ海軍がワシントン海軍軍縮条約の制限解除後に初めて建造した戦艦です。2隻が建造され、フロリダ級戦艦の後継として位置づけられました。本級は、アメリカ海軍初の高速戦艦であり、その設計思想は従来の戦艦とは大きく異なります。

概要

アメリカ海軍は伝統的に、戦艦の設計において速力よりも火力と防御力を重視してきました。コロラド級戦艦は21ノットの速力でしたが、これは艦隊速度よりも航続性能を優先した結果です。しかし、海軍休日時代の技術進歩により、小型で高出力かつ低燃費の機関が開発され、ノースカロライナ級では機関出力を大幅に増強し、巡洋戦艦並みの27ノットの速力を実現しました。

主砲配置も変更され、ネヴァダ級からコロラド級まで均等だった砲塔配置は、本級では前部に2基、後部に1基という2対1の比率になりました。これにより、前方への火力が強化されています。外観上の特徴としては、アメリカ戦艦の特徴であった籠マスト型前檣を廃止し、二重防御の円柱型艦橋を採用しています。この円柱マストは、真珠湾攻撃で損傷した旧式戦艦や条約型戦艦の近代化改装にも取り入れられました。

設計の変遷と弱点

ノースカロライナ級は、第二次ロンドン軍縮条約の影響を受けました。アメリカとイギリスは、日本が建造中の戦艦の主砲口径が16インチであるかどうかを問い合わせ、回答がない場合は16インチと見なして自国も16インチ砲を搭載する予定でした。日本が回答しなかったため、当初14インチ4連装砲を搭載する予定だったノースカロライナ級は、急遽16インチ3連装砲に換装されました。この換装は、設計段階から想定されており、過去のコロラド級での換装経験も活かされ、比較的スムーズに行われました。

装甲は14インチ砲を基準に設計されていましたが、甲板装甲を中心に強化されており、15インチ砲や遠距離での16インチ砲に対してもある程度の防御力を持っていました。

兵装

主砲

当初、ノースカロライナ級は35.6cm砲を搭載する予定で、四連装砲塔3基で12門の主砲を搭載することが計画されていました。アメリカ海軍は四連装砲塔の開発に着手し、旧式戦艦の形式を踏襲し、固定角装填方式で仰角5度に改められました。各砲身は個別に俯仰可能で、通常はクラッチで連結して連動させることができました。主砲身はテネシー級戦艦で採用された「Mark 11 35.6cm(50口径)砲」を改良した「Mark B 35.6cm(50口径)砲」が採用され、射程33,650m、射程18,000m以内で舷側装甲349mmを、射程32,000m以上で甲板装甲177mmを貫通する能力がありました。しかし、前述の通り、主砲口径は16インチに変更され、この砲塔設計は採用されませんでした。

最終的に、ノースカロライナ級は新設計の「Mark 6 40.6cm(45口径)砲」を搭載した三連装砲塔を採用しました。この砲は、重量1,225kgのAP Mark 8砲弾を最大仰角45度で射距離33,741m、重量861.8kgのHC Mark 13砲弾を最大仰角45度で射距離36,741mまで届かせることができました。

副砲・対空装備

ノースカロライナ級では、副砲と高角砲の役割を統合することで、武装重量を減らす試みが行われました。従来の戦艦では、副砲は広い射界を持つものの、高角砲は上部構造物に射界を阻まれる可能性がありました。そこで、両用砲として「Mark 12 12.7cm（38口径）両用砲」が採用されました。この砲は、発射速度が毎分12～15発、仰角85度・俯角15度と広範囲に指向でき、最大射程は15,903m、最大仰角で高度11,887mまで届く高性能な砲でした。

この砲は、連装式の砲架の上に装甲カバーを被せたもので、厳密には砲塔ではありません。砲身が38口径と短く感じられますが、これは当時のモーターの性能では、装甲砲塔に長砲身の大砲を搭載して戦闘機を追従できるほどの高出力を実現することが困難だったためです。

副砲は、二本煙突の両脇に内側に3基、外側に2基の片舷5基、計10基が搭載されました。これにより、前後方向に最大8門、左右方向に最大10門が指向でき、同排水量クラスでは最大の対空火力を誇りました。

その他、対空火器として28mm四連装機関砲や12.7mm機銃が搭載されましたが、28mm機関砲は後に40mm四連装機関砲に換装され、更に増強されました。

機関

ノースカロライナ級は、当初巡洋戦艦並みの30ノット以上の速力が求められていましたが、主砲塔の換装や防御力の強化により、27ノットの戦艦として設計されました。

それでも、限られた重量で要求性能を満たすために、新技術が積極的に導入されました。本級の機関は、駆逐艦用のものを改良したもので、高温高圧のバブコック・アンド・ウィルコックス式高温高圧缶8基と、新開発の二段階減速ギアを持つGE製ギヤード・タービンを組み合わせました。

公試では、機関出力100%で最大出力121,000馬力を発揮し、15ノットで17,450海里の航続距離がありました。しかし、対空兵装の増強などにより、排水量が増加し、1945年には速力が26.8ノットに低下しました。

機関配置は、ボイラー缶2基とギヤード・タービン1基を1セットとして、並列に4セット配置する「シフト配置」を採用しました。これにより、機関室が複雑化しましたが、被弾時の機関の生存性能が高まりました。

防御

本級の垂直防御は15度傾斜した305mmで、35.6cm砲弾に対して17,400～27,400mの範囲で防御可能とされました。40.6cm砲弾に対しては、安全距離は20,000～25,000mと狭まりますが、当時の戦艦の交戦距離を考慮すると、十分な防御力がありました。

装甲の詳細は以下の通りです。

垂直防御：305mm（裏面STS19mm）、下端部168mm（裏面STS19mm）（傾斜15度）
水中防御：10mm、10mm、16mm、19mm、11mm（幅員5.64m、空層-液層-液層-液層-空層）
バルクヘッド：282mm
砲座：前面373mm、側面406mm、後面292mm
弾薬庫：側面95mm～56mm（傾斜15度）
砲塔：前面406mm、側面249mm、後面300mm、天蓋178mm
副砲：STS50mm
司令塔：前後面373mm、側面406mm、天蓋178mm
甲板：主甲板STS37mm、二段91mm+STS36mm、三段STS16mm
舷側甲板：主甲板STS37mm、二段104mm+STS36mm、三段STS19mm

船体

ノースカロライナ級は、主力戦艦として設計されましたが、実際にはサウスダコタ級やアイオワ級とともに高速空母を主力とした機動部隊の護衛として運用されました。船体は対空火器の増備に適しており、結果的に歓迎されました。

艦尾は、船体抵抗の減少を目的としたツインスケグ形状でしたが、高速航行時に振動が発生しました。対策により振動は軽減されましたが、完全に解決には至りませんでした。

ノースカロライナは、その名前の由来であるノースカロライナ州の博物館として保存されていますが、ワシントンは第二次世界大戦後に解体されました。

同型艦

ノースカロライナ（USS North Carolina, BB-55）
ワシントン（USS Washington, BB-56）

登場作品

漫画

『ジパング』：ノースカロライナがアリューシャン列島奪還作戦に参加する場面で登場。

ゲーム

『艦隊これくしょん -艦これ-』：ワシントンがイベント報酬として登場。
『naval creed warships』：ノースカロライナがアメリカtier4ツリー艦艇として登場。

関連項目

アメリカ海軍艦艇一覧

脚注

参考文献

歴史群像太平洋戦史シリーズVol.58『アメリカの戦艦』学習研究社 2007年
Garzke, William H.; Robert O. Dulin, Jr. (1995). Battleships: United States Battleships 1935–1992 (Rev. and updated ed.). Annapolis: Naval Institute Press. ISBN 978-0-87021-099-0. OCLC 29387525
Friedman, Norman (1986). U.S. Battleships: An Illustrated Design History. Annapolis: Naval Institute Press. ISBN 0-87021-715-1. OCLC 12214729

外部リンク

United States of America 16"/45 (40.6 cm) Mark 6
* Operational Experience of Fast Battleships Worldwar II, Korea, Vietnam(PDF)

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