バングラデシュの歴史

バングラデシュの歴史：古代から現代まで

はじめに

本稿では、現在のバングラデシュおよびその前身である東ベンガルの歴史を概観します。バングラデシュとインド（特に西ベンガル州）の国境は人工的に引かれたものであるため、ベンガル地方全体の歴史的文脈も考慮に入れています。

古代

現在のバングラデシュ地域には、紀元前10世紀頃にはドラヴィダ語族の言語を話す人々が居住しており、古くから文明が栄えていました。紀元前4世紀のマウリヤ朝や6世紀のグプタ朝など、様々な王朝の支配下にありました。仏教寺院の発掘調査から、紀元前7世紀には高度な文明が存在したことが示唆され、その社会構造は紀元前11世紀にまで遡る可能性も示されています。初期文明は仏教やヒンドゥー教の影響を受けており、北部バングラデシュに残る遺跡群からもその痕跡が見て取れます。8世紀半ばにはパーラ朝が興り、仏教が繁栄しました。世界遺産にも登録されているパハルプールの仏教寺院遺跡群はこの時代のものです。しかし、12世紀にはヒンドゥー教のセーナ朝が台頭しました。

中世：イスラム化

12世紀からイスラム化が始まりました。当初はスーフィーたちがスーフィズムを広めましたが、13世紀初頭にはデリー・スルターン朝の勢力が及ぶようになりました。15世紀前半にはバゲルハットのモスク都市が建設され、世界遺産に登録されています。16世紀にはムガル帝国の支配下に入り、商工業の中心地として発展を遂げましたが、幾つかのヒンドゥー教の王朝も存続していました。1612年には皇帝ジャハーンギールの下で、チッタゴンを除く地域がムガル帝国の支配下に置かれました。しかし、1707年にアウラングゼーブが崩御すると、地方のナワーブは独立の動きを強めていきました。

近世：イギリスの植民地化

15世紀末にはヨーロッパの貿易商人がこの地を訪れるようになっていましたが、ムガル帝国の衰退と時を同じくして、1757年のプラッシーの戦い後、1765年にはイギリス東インド会社が徴税権を獲得し、1793年には行政権を掌握しました。これにより、バングラデシュは完全にイギリスの植民地となりました。東インド会社はベンガルを足掛かりにインド全土への支配を拡大していきました。イギリス統治下では、ベンガルは度重なる飢饉に見舞われ、多くの人命が失われました。

近代：独立運動と独立

1857年のインド大反乱の後、1877年にはイギリス領インド帝国が成立しました。バングラデシュとなる地域もインド独立運動に参加し、1905年のベンガル分割令とその撤回（1911年）を経て、1947年にはインドは独立を達成しました。しかし、宗教的対立により、ベンガル地方は東西に分断され、ヒンドゥー教徒が多数派の地域はインドに、イスラム教徒が多数派の地域はパキスタンの東部として独立することになりました。

現代：東パキスタンからバングラデシュへ

独立後、バングラデシュ地域は東パキスタンとなりました。しかし、ウルドゥー語の国語化政策や西パキスタン中心の政策への反発から、東パキスタンと西パキスタンは対立しました。東パキスタンではアワミ連盟が中心となり独立運動が展開され、西パキスタンとの内戦に発展しました。インドは東パキスタンの独立を支持し、第三次印パ戦争の結果、1971年にバングラデシュは独立を達成しました。

バングラデシュ独立後

独立後、アワミ連盟のシェイク・ムジブル・ラフマンが初代首相（後に大統領）となりました。一時期一党制を敷きましたが、1975年には暗殺されました。その後、クーデターによる政権転覆を経験しましたが、1990年以降は複数政党制に基づく民主的な選挙で選出された政府が統治しています。イギリス連邦加盟国ですが、総督は置かず、元首は大統領です。独立以来、後発開発途上国に分類されてきましたが、近年はムハマド・ユヌスとグラミン銀行によるマイクロクレジットの取り組みなどが注目されており、経済発展に貢献しています。

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