ポルトガルの歴史

ポルトガルの歴史：古代から現代まで

ポルトガルの歴史は、イベリア半島における古代文明、ローマ帝国の支配、イスラム勢力とゲルマン人の影響、レコンキスタ、大航海時代、植民地支配、そして共和制への移行という、数多くの出来事を経て形成されてきました。本稿では、ポルトガルの歴史を古代から現代まで網羅的に概観します。

原始・古代

イベリア半島への人類の進出は古く、ポルトガル各地には旧石器時代からの遺跡が数多く発見されています。旧石器時代から中石器時代にかけては、アジール文化、ソーヴェテール文化など独自の文化が栄え、アフリカからの移住者と先住民との混血が進み、現在のポルトガル人とスペイン人に共通する人種的特徴が形成されました。新石器時代には定住生活が始まり、農耕や家畜化が進み、各地に巨石墓や環状列石などの遺跡が残されています。

青銅器時代や鉄器時代には、地中海沿岸部やアフリカからの移住が盛んになり、ケルト人とイベロ族の混血からケルト・イベロ族（セルティベロ族）が誕生しました。彼らはミーニョ川とグアディアナ川の間の地域に居住し、ルシタニアと呼ばれていました。紀元前8世紀頃にはフェニキア人、ギリシア人が沿岸部に進出し、貿易拠点や植民都市を築きました。これらの交易によって、造船技術やワインなどの文化がポルトガルにもたらされました。

ローマ支配

紀元前201年に第二次ポエニ戦争が終結すると、ローマ帝国がイベリア半島を支配するようになりました。ルシタニア戦争（紀元前155年～紀元前139年）では、ルシタニア人はローマ軍に抵抗しましたが、紀元前19年にはローマの支配下に完全に組み込まれました。ローマ支配下では、ラテン語が共通語となり、ローマ文明の影響を受けましたが、その影響は都市部に限られていたと考えられています。この時代、ポルトガル語の祖となるガリシア・ポルトガル語が、ポルトガルとスペインのガリシア地方で話されるようになりました。

ゲルマン人の進出

5世紀初頭、ローマ帝国の衰退に伴い、ゲルマン人の侵入が始まりました。スエビ族はガリシア王国を建国し、その後西ゴート王国に併合されましたが、ポルトガル北部では独自の文化を残しました。西ゴート王国は、トレドに首都を置いていましたが、ポルトガルへの影響は限定的でした。ゲルマン人の支配下ではキリスト教が拡大し、ブラガがポルトガルの最高位の司教座となりました。

中世：イスラム支配とレコンキスタ

711年にイスラム勢力がイベリア半島に進出すると、ポルトガルもイスラム教の影響を受けました。イスラム支配下では、アラビア語からの借用語が増えましたが、ラテン語は日常語として使用され続け、イスラム世界の科学や文化がポルトガルの発展に貢献しました。建築様式や灌漑技術にもイスラムの影響が見られます。

10世紀頃から、レオン王国やアストゥリアス王国などがレコンキスタ（国土回復運動）を開始しました。ポルトゥカーレ伯領やコインブラ伯領が、後のポルトガル王国の基盤となりました。1096年に、ポルトゥカーレ伯領とコインブラ伯領はブルゴーニュ家のアンリに与えられ、これがポルトガル王国の成立へと繋がります。

ポルトガル王国の成立

1139年のオーリッケの戦いでムラービト朝に勝利したアフォンソ・エンリケスは、1143年にアフォンソ1世として即位し、ポルトガル王国が成立しました。その後、リスボンを征服し、1179年にはローマ教皇によって王位が承認されました。1249年にはアルガルヴェを征服し、ポルトガル領内のレコンキスタが完了しました。1255年には、リスボンが首都となりました。

ポルトガル王国の発展と衰退、アヴィス王朝の成立

ディニス1世の治世には、経済が発展し、特にフランドル地方、イギリス、フランスとの貿易が盛んになりました。コインブラ大学が創設され、ポルトガル語が確立されていきました。しかし、黒死病の流行やカスティーリャとの戦争によって、国力は衰えました。1385年のアルジュバロータの戦いでカスティーリャに勝利し、アヴィス王朝が成立しました。

近世：海外進出

1415年のセウタ征服を皮切りに、ポルトガルは海外進出を始めました。エンリケ航海王子は西アフリカ探検を推進し、カナリア諸島、アゾレス諸島、マデイラ島などを発見し、植民地化しました。1488年にはバルトロメウ・ディアスが喜望峰に到達し、1498年にはヴァスコ・ダ・ガマがインド航路を開拓しました。1500年にはペドロ・アルヴァレス・カブラルがブラジルを発見しました。

アジアでは、ゴア、マラッカ、マカオなどを拠点とし、香料貿易で大きな利益を上げました。ブラジルでは、砂糖生産が盛んになりました。ポルトガルは、スペインとの関係を強め、文化的にも大きな影響を受けました。大航海時代の成功は、ポルトガルの美術や学芸にも反映されました。

ハプスブルク家の統治

1580年、スペインのフェリペ2世がポルトガル王位を継承し、イベリア半島は同君連合となりました。フェリペ2世は、ポルトガルの自治を尊重し、経済は回復しました。しかし、オランダとの戦争や、スペインの支配強化への反発から、1640年にポルトガルは再び独立しました。

再独立の達成

ジョアン4世を初代とするブラガンサ王朝は、スペインとの戦争を戦い、独立を勝ち取りました。しかし、インド洋や東アフリカでの植民地支配は弱体化しました。イギリスと友好条約を結び、イギリスの支援を受けました。1668年にスペインはポルトガルの独立を承認しました。

王権の強化、財政改革

ブラジルの砂糖生産の衰退などによって経済が悪化すると、財政改革が行われました。ジョアン5世は絶対王政を志向し、対外戦争にも勝利しました。1755年のリスボン地震後、ポンバル侯は都市の再建と近代化を進めました。イエズス会が追放され、教育改革も行われました。

近代：半島戦争、ブラジルの独立

1807年、フランス軍が侵入し、王室はブラジルに逃れました。1815年には、ポルトガル・ブラジル・アルガルヴェ連合王国が成立しました。1820年に自由主義革命が起こり、1822年にブラジルが独立しました。

自由主義と絶対王政の対立

1820年代から1840年代にかけては、自由主義と絶対主義の対立が続き、内戦やクーデターが繰り返されました。

王制の終焉

19世紀後半から、共和主義が台頭し、1908年に国王カルロス1世が暗殺されました。1910年、共和主義者の蜂起によって、ブラガンサ王朝は滅亡し、第一共和政が成立しました。

現代：第一共和政、軍事政権

第一共和政は不安定で、軍事クーデターや内閣の頻繁な交代が続きました。1926年にはサラザールが首相となり、独裁体制が確立されました。第二次世界大戦では中立を保ち、植民地戦争も継続しました。

植民地戦争、独裁政権の崩壊

1960年代のアフリカ諸国の独立運動の高まりを受け、ポルトガルは植民地戦争に突入しました。1974年のカーネーション革命でサラザール政権は崩壊し、植民地は次々と独立しました。

民主化と現在

ポルトガルは民主化を果たし、欧州連合に加盟しました。1999年にはマカオが中国に返還され、2002年には東ティモールが独立しました。現在、ポルトガルは民主主義国家として、欧州の一員として発展を続けています。

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