マクデブルク市電

マクデブルク市電

マクデブルク市電（ドイツ語: Straßenbahn Magdeburg）は、ドイツの都市マクデブルク市内を網羅する重要な公共交通機関です。2021年現在、本路線は路線バス網と共に、マクデブルク市の完全子会社であるマクデブルク交通株式会社（Magdeburger Verkehrsbetriebe GmbH）によって運営されています。

歴史

マクデブルクにおける軌道交通の歴史は、1877年に開業したマクデブルク馬車鉄道（Magdeburger Pferde-Eisenbahn）に遡ります。これは文字通り馬が牽引する鉄道でした。その後、イギリス資本の企業も馬車鉄道を開設したほか、1886年には蒸気動力によるスチームトラムの運行も始まりました。

複数の事業者は1897年に統合され、マクデブルク市街鉄道（Magdeburger Straßen-Eisenbahn-Gesellschaft、MSEG）となりました。同社は1899年に電気で走行する路面電車の営業運転を開始し、それまでの馬車鉄道やスチームトラムを置き換えていきました。路面電車網はマクデブルク市内から郊外へと積極的に拡大し、1938年には社名をマクデブルク軌道（Magdeburger Straßenbahnen Aktiengesellschaft）に改称しました。

しかし、第二次世界大戦末期の1945年1月に受けた空襲とそれに続く市街地での戦闘により、マクデブルク市は壊滅的な被害を受け、市電の運行も長期にわたり停止せざるを得ませんでした。

戦後、東ドイツに属することになったマクデブルク市電は、数度の組織再編を経て、1951年以降は人民公社であるマクデブルク交通公社（VEB Magdeburger Verkehrsbetriebe）が運営を担いました。東ドイツ時代には一部路線の廃止があった一方で、1980年代からは都市開発に伴う宅地への延伸が進められました。また、運賃収受の合理化として信用乗車方式が導入されました。

車両面では、1960年代まで東ドイツ製の車両が導入されていましたが、1969年以降はチェコスロバキア（現在のチェコ）のČKDタトラ製の車両、いわゆるタトラカー（タトラT4、タトラT6A2など）が主力となりました。これにより、東ドイツ製の車両は1987年までにマクデブルク市電から姿を消しました。

ドイツ再統一後、マクデブルク市電の運営は民営化され、現在はマクデブルク交通株式会社が運営しています。民営化後は、超低床電車の大量導入や車両基地の再編など、近代化と効率化が図られています。並行して、2000年からは市内の南北を結ぶ第2の主要ルートを建設する大規模プロジェクトが進行しており、2020年代の全線開業を目指して段階的な工事が進められています。

系統

2021年現在、マクデブルク市電では9つの運行系統が運用されています。直近のダイヤ改正は2020年12月16日に実施されました。この改正では、ライファルゼン通りとワルシャワ通りを結ぶ新たな区間が開通したことに伴い、路面電車だけでなく路線バスを含む広範な系統で経路変更やダイヤの再編成が行われました。今後も路線改良工事の進捗に合わせて、ダイヤ改正が実施される予定です。

車両

2021年現在、マクデブルク市電で営業運転に使用されている主な車両は以下の通りです。

タトラT6A2: チェコスロバキアのČKDタトラが東側諸国向けに製造したタトラカーの一形式で、特に東ドイツなど車両限界が狭い都市向けに設計されました。マクデブルクには新造車6両と、1990年にシュヴェリーン市電から転属した4両が導入されました。2021年現在は4両が在籍し、営業運転に使用されています。また、ベルリン市電から譲渡された同型車がレール削正車や教習車などの事業用として活用されています。タトラB6A2付随車と共に、マクデブルク市電はドイツ国内でタトラT6A2が営業運転に使用される最後の路線でしたが、老朽化や部品確保の困難、法定検査期限などを理由に、2024年3月末をもって営業運転を終了しました。保存が予定されていますが、動態か静態かは2024年1月時点で未定でした。

タトラB6A2: タトラT6A2と連結して使用するために開発された付随車です。マクデブルクには6両が導入され、1990年にはT6A2と共にシュヴェリーン市電から2両が転属しました。2021年時点では2両がT6A2との編成で使用されていましたが、これも2024年3月末で営業運転を終了し、1両が保存される予定です。一方、2011年には輸送力増強のため、ベルリン市電から11両のB6A2が付随車として譲渡されました。これらの車両は電気機器などが改造され、後述の超低床電車NGT8Dと連結して使用されており、2024年以降も引き続き使用される計画です。

NGT8D: 車内全体の約70%が床上高さ350mmの低床構造となっている部分超低床電車です。民営化後の主力車両として、1994年から2000年にかけて72両、2012年から2013年にかけて11両が増備され、2021年現在は合計83両が在籍しています。NGT8Dが導入されたドイツの各都市の中で、マクデブルク市電は最も長期にわたり、かつ最も多数の車両を導入した路線です。ただし、初期に製造された車両は30年近く経過しており、置き換えが検討されています。

タトラKT4D: 各車体に1台車を持つ小型の2車体連接車、タトラKT4シリーズのうち東ドイツ向けに開発された車種です。マクデブルク市電で使用されているのは、ラッシュ時の混雑緩和を目的として2020年にベルリン市電から譲渡された車両です。塗装変更や機器修繕を経て、同年8月から営業運転に就いています。2021年現在は8両が在籍しています。

マクデブルク交通は、これらの営業用車両のほか、多数の事業用車両も保有しています。2012年に営業運転を終えたタトラT4や、1970年代に引退した2軸車の一部も、工事用車両などに改造されて現存しています。

また、歴史的な車両の動態保存も行われています。開業当時の馬車鉄道時代に車体更新された車両や、第二次世界大戦中に導入された「ヘヒトワーゲン」、東ドイツ時代の2軸車（ゴータカー）などが含まれます。中にはハノーファー路面電車博物館から譲渡された車両もあります。

今後の予定

第二南北線計画

マクデブルク市内には既に南北を結ぶ路面電車路線がありますが、これに加えて、これまで路面電車が通っていなかった地域を含む新たな南北ルート（「第2の南北線」）を建設する大規模プロジェクトが2000年から進められています。これはマクデブルク交通および市にとって最大の公共交通インフラ計画であり、全8段階に分けて工事が実施されています。前述の2020年12月のダイヤ改正で開業した新区間も、この計画の一環（第7段階）です。最終的に13.5kmの新規路線が2020年代中に開通し、マクデブルク市内の各地域の交通利便性を大幅に向上させることが期待されています。

新型電車

マクデブルク交通では、将来的な輸送力増強と、老朽化が進んだタトラカーおよび初期のNGT8Dを置き換えるため、新型車両となる4車体連接車のNGT10Dを導入する計画を進めています。この新型車両は、NGT8Dよりも9m長い全長約38m、車体幅も2.4mと広くなり、Wi-Fi対応機器や最新式の照明、空調装置などを備える予定です。2022年以降に実施される35両の導入には、約1億1,500万ユーロの費用が見込まれており、ザクセン＝アンハルト州からの助成金も活用される予定です。製造メーカーは2021年の入札によりアルストム社に決定しており、同社の超低床電車ブランドであるフレキシティ・クラシックとして導入されます。

最初の2両は2024年に完成し、同年9月に開催されたマクデブルク市電開通125周年の記念式典でお披露目されました。現在試運転が進められており、2025年から順次営業運転に投入される予定です。

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