メトトレキサート

メトトレキサート：作用機序から副作用まで

メトトレキサートは、葉酸代謝拮抗作用を有する免疫抑制剤であり、抗がん剤、抗リウマチ薬、そして妊娠中絶薬として幅広く利用されています。その多様な用途と潜在的な副作用について、詳細に解説します。

作用機序

メトトレキサートは、体内で葉酸を活性型に変換する酵素dihydrofolate reductase(DHFR)を阻害します。この阻害作用により、DNA合成に必要な核酸の生成が阻害され、細胞増殖が抑制されます。 この作用は、急速に増殖する癌細胞や免疫細胞に特に有効です。

免疫抑制効果に関しては、リンパ球増殖の抑制や免疫グロブリン産生阻害によるものと考えられています。さらに、関節リウマチにおける滑膜や軟骨の破壊に関与するコラゲナーゼの産生も抑制します。

臨床応用

メトトレキサートは、様々な疾患の治療に用いられます。

抗がん剤としての使用

抗がん剤としては、主に注射剤として用いられ、「メトトレキサート・ロイコボリン救援療法」という特殊な投与方法が用いられる場合があります。これは、メトトレキサート投与後に、解毒剤であるロイコボリン（フォリン酸）を投与することで、副作用を軽減する手法です。 この療法は、骨肉腫、軟部肉腫などの肉腫、急性白血病の中枢神経系や睾丸への浸潤、悪性リンパ腫の中枢神経系への浸潤などに用いられます。また、胃癌、乳癌、尿路上皮癌など、他の抗がん剤との併用療法にも用いられることがあります。

抗リウマチ薬としての使用

錠剤（2.5mg）として、関節リウマチをはじめ、皮膚筋炎、多発筋炎などの治療に用いられます。

乾癬治療薬としての使用

海外では長年乾癬治療に用いられてきましたが、日本では2019年3月まで乾癬への適応はありませんでした。現在では、「局所療法で効果不十分な尋常性乾癬」や「関節症性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症」にも使用が認められています。

妊娠中絶薬としての使用

メトトレキサートは、ミソプロストールとの併用により、妊娠初期の中絶薬として用いられます。また、子宮外妊娠の治療にも使用されることがあります。

副作用

メトトレキサートは、効果の高い薬剤である一方、深刻な副作用のリスクも伴います。

間質性肺炎

最も深刻な副作用の一つに間質性肺炎があります。頻度は1～2％程度とされていますが、用量依存性はなく、葉酸による予防もできません。特に関節リウマチ治療においては、投与開始初期に注意が必要です。胸部レントゲン、CT検査、KL-6やSP-Dなどの血液検査で肺へのダメージを評価します。

肝障害

肝機能障害を引き起こす可能性があります。

骨髄抑制・骨髄破壊

赤血球、白血球、血小板の減少を引き起こす骨髄抑制、ひどい場合は骨髄破壊に至る可能性があります。高齢者、特に75歳以上ではリスクが高いため、高齢者の関節リウマチ治療には、メトトレキサートの使用は慎重に検討する必要があります。他の治療薬（ステロイド、タクロリムスなど）の併用や検討が必要となる場合があります。

口内炎・消化性潰瘍・消化管出血

消化器系の粘膜障害として、口内炎、潰瘍、消化管出血などが起こる可能性があります。

これらの副作用軽減のため、メトトレキサート服用後24～48時間後に葉酸製剤（フォリアミンなど）を服用することがあります。

まとめ

メトトレキサートは、多様な疾患に有効な薬剤ですが、深刻な副作用のリスクも伴います。そのため、医師による適切な診断と、副作用のモニタリングが不可欠です。自己判断による服用は絶対に避け、医師の指示に従って正しく服用することが重要です。

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