モンケ・テムル

モンケ・テムル：ジョチ・ウルスの激動を生き抜いたハン

モンケ・テムル（Mängü-Temür、? - 1280年?）は、ジョチ・ウルスの第6代ハン（在位：1267年 - 1280年?）です。彼は、バトゥの次男トクカンの孫にあたります。

生涯

ハン即位まで

モンケ・テムルの母は、フレグの妃であったオイラト部族トレルチの娘、クチュ・ハトゥンです。1267年、大叔父ベルケの死後、ハン位を継承しました。

対外関係

即位当時の中央アジアは、アリクブケの皇位継承争いを制したクビライが派遣したバラクと、オゴデイ家のカイドゥとの間で対立が深まっていました。モンケ・テムルはカイドゥに加担し、即位早々に兵員を援助します。1269年には、バラク、カイドゥとタラス河畔で会盟し、領土配分を決定。しかし、バラクが領土不足を主張したため、翌年にはアバカの治めるイラン地域に侵攻しました。また、この会見で反元を掲げ、元と同盟を結ぶイルハン朝のアバカと敵対します。

1270年、バラクの敗死とカイドゥによるチャガタイ・ハン国の乗っ取りを見て、モンケ・テムルはカイドゥとの関係に危機感を抱き、クビライの元王朝によるモンゴル帝国の宗主権を承認。カイドゥと縁を切り、イルハン朝のアバカとも国交を回復させました。

1277年、クビライの皇子ノムガンとその弟ココチュが、シリギらの反乱により捕縛され、モンケ・テムルの許へ引き渡されるという事件が起こります。兄弟は反乱鎮圧までジョチ・ウルスに留め置かれ、モンケ・テムルの死後、クビライの元へ送還されました。ジョチ・ウルスの対元敵対回避には、モンケ・テムルの義母ケルミシュ・アガ・ハトゥンの尽力が大きかったとされています。

アバカの次の代には、イルハン朝との和平が破綻しカフカスに軍を派遣しますが、敗退。その後、再び和平が結ばれ、ガザン・ハンの時代まで関係が続きました。また、1271年にはマムルーク朝のバイバルスへ使節を派遣しています。

モンケ・テムルは、ベルケの時代にジョチ・ウルスへ亡命してきたルーム・セルジューク朝のイッズッディーン・カイカーウースにクリミア半島の封邑を与えました。

内政

内政においては、交易を重視し国家の安定化に努めました。ジェノヴァなどから商人（バザール）を呼び、都サライを繁栄させました。

死去とその後

1280年に死去。没年については異説もあります。

彼の死後、有力将軍ノガイの策略により、一族の最長老トデ・モンケが擁立され、ジョチ・ウルスは混乱期を迎えることになります。

家族

モンケ・テムルには10人の息子がいました。アルグイ、アヤチ、トデゲン、ブルルク、トクタ、サライ・ブカ、ムラカイ、カダアン、クドカン、トグリルチャです。

3人の正妃がおり、第一正妃ケルミシュ・アガ・ハトゥンとオルジェイ・ハトゥンは、それぞれアルグイとトクタを産んでいます。第二正妃スルタン・ハトゥンはトデゲンを、第三正妃クトクイ・ハトゥンはブルルクを産みました。また、末子のトグリルチャは、ウズベク・ハンの父として知られています。

モンケ・テムルやトデ・モンケの母クチュ・ハトゥンをはじめ、ジョチ家ではオイラト部族が姻族として活躍しましたが、モンケ・テムルの時代からコンギラト部族がジョチ・ウルスのハンを輩出するようになります。

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