レナウン級巡洋戦艦

レナウン級巡洋戦艦は、イギリス海軍が第一次世界大戦中に建造した高速戦艦です。同型艦は「レナウン」と「レパルス」の2隻で、その高速性と攻撃力を両立させた設計が特徴です。

概要

レナウン級の建造は、当時のイギリス海軍第一卿フィッシャー提督の提唱に基づき、第一次世界大戦中の1914年に始まりました。フィッシャーは、フォークランド沖海戦での巡洋戦艦の活躍に触発され、より高速で強力な巡洋戦艦の必要性を強く感じていました。

当初、アスキス内閣は戦時中の建造に難色を示しましたが、フィッシャーは15ヶ月という短期間での建造を約束し、計画を強行しました。このため、キャンセルされたリヴェンジ級戦艦の資材を流用し、艦名もその6番艦と7番艦のものを採用しました。設計は、前級のタイガーとは異なり、新たに就任した海軍造船局長ユースタス・テニソン＝ダインコートが担当しました。

レナウン級は、高速を追求するあまり防御が犠牲になったため、第一次世界大戦後には防御力強化の改装が行われました。しかし、それでもなお防御力の不足は否めませんでした。また、レナウン級を2隻以上建造することは資材や兵装の調達面で困難だったため、その設計を基に、主砲を減らし、装甲を軽くしたカレイジャス級巡洋戦艦が建造されました。

設計思想

レナウン級は、フィッシャー提督の「高速は最良の防御」という思想を具現化したもので、アウトレンジ戦法を重視した設計がなされました。主砲は、クイーン・エリザベス級戦艦と同じ15インチ砲を連装砲塔に収めて搭載しましたが、30ノットという高速を達成するために防御は比較的薄くなっています。しかし、第一次世界大戦後の改装により、ライオン級巡洋戦艦に匹敵する装甲を手に入れました。

艦形

レナウン級の艦体は、軽巡洋艦から発展したデザインのため、軽快でスタイリッシュな印象です。長船首楼型の船体で、水面下に浮力確保のための膨らみがあります。艦首甲板にはシアが付けられており、荒天時には波が容赦なく流れ込んできました。しかし、軽量な艦体のため、凌波性と安定性は良好でした。

主砲は、新設計の38.1cm連装砲塔を2基、艦首甲板に背負い式に配置。艦橋構造物の後方には三脚マストが立ち、副砲は10.2cm速射砲を3連装砲架で左右に配置しました。2本の煙突と後部マスト、艦載艇格納庫などを備えた艦体構成となっています。レナウンとレパルスの外観上の違いは、煙突の高さで、レナウンは2本とも同じ高さ、レパルスは1番煙突のみが高くなっています。

近代化改装

レナウン

レナウンは、第二次世界大戦前に大規模な近代化改装を受けました。艦橋は近代的な塔型構造に更新され、測距儀や射撃指揮装置が搭載されました。機関は、アドミラリティ式重油専焼三胴型水管缶とパーソンズ式ギアードタービンに換装され、2番煙突も後方に移動しました。また、艦載艇格納庫とカタパルトが設置され、対空兵装も強化されました。これにより、艦の吃水は増大し、凌波性に限界が生じたと報告されています。

レパルス

一方、レパルスは竣工時の姿をほぼ維持し、1933年から1936年の改装で、前部マストのフラット部分が拡大され、1番煙突を基部とする三角形状の構造となりました。機関区はレナウンと同様に改装されましたが、対空兵装の強化は限定的でした。

武装

主砲

レナウン級の主砲は、新設計の38.1cm（42口径）砲で、連装砲塔に収められています。最大射程は21,702mで、射距離13,582mで305mmの装甲を貫通する能力を持ちます。装填機構は自由角度装填で、発射速度は毎分2発でした。当初、リヴェンジ級に搭載予定だった1912年型38.1cm砲を高速性能のため3基に削減されましたが、遠距離射撃に必要な門数は最低限確保されました。

副砲

副砲は、1913年型10.2cm速射砲を三連装砲架で5基、単装砲架で2基、計17門を搭載しました。また、対水雷艇用に7.6cm砲、高角砲、魚雷発射管も装備されました。

近代化改装後

レナウンは、近代化改装で新型の11.4cm高角砲を連装砲架で10基搭載し、近接戦闘用に4cmポンポン砲も装備しました。レパルスは、10.2cm高角砲を増設し、2cm機銃などの対空兵装を強化しました。

防御様式

レナウン級は、集中防御を採用しており、船体中央部に装甲が集中しています。高速性を優先したため、装甲は比較的薄く、舷側水線部は152mm、主甲板は76mmとされています。しかし、第一次大戦後の改装で、舷側装甲は229mmに強化されました。レナウンは対魚雷防御を、レパルスは対艦防御を強化するなど、改装内容が異なりました。

機関

建造時

レナウン級の機関は、タイガーの機関を改良したもので、B＆W大径水管缶42基とブラウン・カーチス式直結タービンを搭載しています。公試では、レナウンが12万6300馬力、32.58ノット、レパルスが11万9025馬力、31.725ノットを発揮しました。

1936年以降のレナウン

レナウンは、1936年からの改装で、主ボイラーをアドミラリティ式加熱器つき三胴型細径水管缶、タービンをパーソンズ式ギアード・タービンに更新しました。これにより、機関重量が軽量化され、航続距離が延伸しましたが、最高速度は低下しました。

同型艦

レナウン (HMS Renown)

1916年竣工。第一次世界大戦ではユトランド沖海戦に間に合わず、第二次世界大戦では大西洋や地中海、太平洋で活動しました。1945年に除籍され、1948年に解体されました。

レパルス (HMS Repulse)

1916年竣工。日本海軍の第二特務艦隊が視察したこともあります。第二次世界大戦では、ドイツ戦艦ビスマルク追撃作戦に参加し、その後東洋艦隊に編入されましたが、太平洋戦争開戦直後のマレー沖海戦で日本海軍の航空攻撃により撃沈されました。

脚注

注釈

出典

参考文献

「世界の艦船増刊第6集第2次大戦のイギリス軍艦」（海人社）
「世界の艦船増刊第22集近代戦艦史」（海人社）
「世界の艦船増刊第30集イギリス戦艦史」（海人社）
「世界の艦船増刊第67集第2次大戦時のイギリス戦艦」（海人社）
「世界の艦船増刊第83集近代戦艦史」（海人社）
福井静夫著「“ハッシュ・ハッシュ”巡洋艦の話」、阿部安雄、戸高一成編『福井静夫著作集 ― 軍艦七十五年回想第八巻世界巡洋艦物語』光人社、1994年6月。ISBN 4-7698-0656-6。
福井静夫著、阿部安雄、戸高一成編『新装版福井静夫著作集 ― 軍艦七十五年回想第六巻世界戦艦物語』光人社、2009年3月。ISBN 978-4-7698-1426-9。
ミリタリー・クラシックス編集部、執筆（松代守弘、瀬戸利春、福田誠、伊藤龍太郎）、図面作成（田村紀雄、こがしゅうと、多田圭一）「第三章イギリスの戦艦」『第二次大戦世界の戦艦』イカロス出版〈ミリタリー選書6〉、2005年9月。ISBN 4-87149-719-4。
「Conway All The World's Fightingships 1906–1921」（Conway）
「Conway All The World's Fightingships 1922-1946」（Conway）
アジア歴史資料センター（公式）
『「英海軍水雷に関する記事」、大正7年～8年第2特務艦隊調査綴(防衛省防衛研究所)』1919年。Ref.C10081038300。
『「大正8年第2特務艦隊報告(大正8年)航海調査視察(12)」、大正3年～9年大正戦役戦時書類巻226 第2特務艦隊報告(防衛省防衛研究所)』1919年。Ref.C10128524800。

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