ロシアワイン

ロシアワイン

ロシアワインとは、ロシア国内で生産されるワインを指します。広義には、旧ソビエト連邦内で生産されたアルメニアワイン、アゼルバイジャンワイン、グルジアワイン、モルドバワイン、ウクライナワインなど、ロシア産と誤認されたワインも含まれる場合があります。

概要

ロシアワインは、その特徴において他国のワインとは異なる点が多くあります。より正確には、ロシア南部のダゲスタン共和国、チェチェン共和国、カバルダ・バルカル共和国、クラスノダール地方、ロストフ地方、スタヴロポリ地方、アルタイ地方、西部のトヴェリ州で生産されたワインを指します。

現代のロシアでは、ブドウの品種を表すアペラシオンが導入されており、シビリコヴィー、ツィムリャンスキー・チョルニー、プレチスティーク、ナルマ、ギュリャビ・ダゲスタンスキーなどが存在します。

歴史

野生のブドウは数千年前からカスピ海、黒海、アゾフ海周辺に存在しており、古代ギリシャとの貿易を通じてブドウ栽培が行われていたことが、黒海沿岸の遺跡から明らかになっています。これは、黒海周辺地域が世界最古のワイン製造地域の一つであることを示唆しています。

ロシアにおける現代的な商業用ワイン生産の創始者は、レフ・ゴリツィン公爵です。彼はクリミア地方にシャンパン工場を設立し、1889年にはパリのワイン品評会で金賞を受賞しました。1891年には、アブラウ・ドゥルソーの帝国ワイナリーの調査官に任命され、ソビエト・シャンパン（人民シャンパン）の製造を指揮しました。

1917年のロシア革命後、フランスのワイン製造業者がロシアに集まりましたが、ワイン製造工場の建設は1920年代から徐々に進められました。ワイン産業はソビエト連邦時代の1940年代と1950年代に発展しましたが、1985年のミハイル・ゴルバチョフによる反アルコールキャンペーンにより、国内の製造体制に改革がもたらされました。ソビエト連邦崩壊後は民営化が進みましたが、優良なブドウ畑の多くが他の用途に転用され、2000年までにブドウ栽培面積は1980年代の半分以下に減少しました。

しかし、1992年の国有農園民営化に伴い、ワイン産業は転換期を迎えます。アブローラ社は、かつてソ連有数の国有農園でしたが、民営化によりロシア人投資家によって買い取られ、世界水準のワイナリー建設を目指しました。2003年にはフランスの建築会社によって近代的なワイナリー「シャトー･ル･グラン･ヴォストーク」（CGV）が完成し、フランス人醸造家のフランク・デュセナーを招聘してボルドー型ワイン醸造に力を入れる方針が採られました。

デュセナーは、ロシアの在来品種であるクラスノストップの遺伝子をクリーンアップするため、母国フランスに送るという挑戦も行いました。クラスノストップは、異なる種類のブドウのDNAが混入しており、雑味が多いことが課題でしたが、デュセナーは地元の品種を使ったワイン製造に意欲を持っており、その問題解決に尽力しました。現在、クリーンアップされたクラスノストップ種の苗木がCGVのブドウ園で栽培されています。

2013年には、ロシアで販売されたワインの80%がブドウ濃縮物から作られていましたが、ソビエトワインの低品質の評判からの脱却が図られています。

2014年5月、デニス・プズィレフはデイリー・テレグラフ紙上で、ロシアのワイン産業が発展していることを述べています。

ロシアは栽培中のブドウ畑の面積で世界第11位にランクされており、地方自治体によって「アルコール度数の高いスピリッツに代わる『より健康的な代替嗜好品』を産み出す産業」として推進されています。現在、ロシアは世界市場へのワインの大量輸出を計画しており、国内市場へのワイン原材料の輸入を制限する方針を打ち出しています。これは、ワイン産業におけるライセンス価格の低下や、ワインが「農産品」に格上げされたことが背景にあります。ブドウおよびワインの製造に対する国の支援額は増加傾向にあります。

地理と気候

ロシア国内でワイン生産が盛んな北カフカス地方は、典型的な大陸性気候です。厳冬期の霜に対応するため、ワイン製造業者はブドウの木に土をかぶせています。クラスノダール地方では、ブドウが完熟するまでに必要な期間の内、霜が降りない日が193～223日あります。ダゲスタン共和国はステップ気候であり、ブドウ製造に必要な期間の内、霜が降りない日が180～190日あります。ロシアワインの約13%がスタヴロポリ付近で生産されています。ロストフ・ナ・ドヌ周辺地域は、高温で湿度の低い夏と厳しい冬の気候であり、ロシア国内の他地域よりも小規模にワインを製造しています。

ワインとブドウ

ロシアでは、様々な品種のブドウが生産されており、主にスパークリングワインやデザートワインの製造に利用されています。現代では、100種類を超える品種のブドウがワイン製造に使用されています。製造量ではリカツィーテリ品種が全体の45%を占めるほか、アリゴテ、カベルネ・ソーヴィニヨン、セヴェルニ、クレレット・ブランシュ、メルロー、マスカット、ピノ・グリ、プラヴァイ、ブラウアー・ポルトギーザー、リースリング、サペラヴィ、シルヴァーナー、サヴァニャンなどが生産されています。

観光

ロシアではワイン観光も盛んであり、クラスノダール地方、ロストフ州、スタブロポリ地方、クリミアではブドウ畑を活用した独自のイベントが開催されています。特に人気があるのは、クラスノダール地方にあるリゾート地アブラウ・デュルソーです。2015年には、30万人以上が見学とテイスティングに訪れました。次いでクリミア・マサンドラ、ロストフ州エルブズドが人気を集めています。トヴェリ州とアルタイ地方ではベリーワインが生産されており、これらのワインを目的とした旅行者も存在します。

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