一条実有

一条実有（いちじょう さねあり）

一条実有は、鎌倉時代前期に活躍した公卿であり、太政大臣を務めた西園寺公経の子として生まれました。一条家を興し、その家祖として名を残しています。官位は正二位・権大納言まで昇り、左近衛大将も兼任するなど、公家社会において重要な地位を占めました。また、清水谷家の祖でもあります。

経歴

一条実有の経歴は、『公卿補任』や『尊卑分脈』などの史料に詳しく記されています。

建保2年（1214年）：3月28日に叙爵。
建保3年（1215年）：1月13日に侍従に任ぜられる。
建保4年（1216年）：1月5日に従五位上に昇叙。
建保7年（1219年）：1月22日に左少将に任ぜられ、讃岐権介を兼ねる。
承久2年（1220年）：1月22日に上野権介を兼ねる。
承久3年（1221年）：1月5日に正五位下に昇叙。閏10月29日に禁色を許され、11月29日に従四位下に昇叙。12月1日に皇后宮権亮を兼ねる。
承久4年（1222年）：1月12日に従四位上に昇叙。同月24日に左中将に転任。
貞応元年（1222年）：11月22日に正四位下に昇叙。
貞応3年（1224年）：8月4日に皇后宮権亮を止める。
嘉禄元年（1225年）：1月5日に従三位に叙される。同月7日に左中将は元の如し。嘉禄2年（1226年）1月23日に周防権守を兼ねる。
安貞元年（1227年）：4月20日に正三位に昇叙。
寛喜3年（1229年）：4月26日に参議に任ぜられる。左中将は元の如し。同月29日に右衛門督を兼ね検非違使別当に補される。また同日に中宮権大夫を兼ねる。
貞永元年（1232年）：1月5日に従二位に昇叙。同月30日に権中納言に転任。同年2月7日に右衛門督、検非違使別当、中宮権大夫は元の如し。5月13日に検非違使別当を辞す。6月29日に右衛門督を辞す。9月7日、勅授。天福元年（1233年）4月1日に中宮権大夫を止める（中宮が女院（藻璧門院）となったため。）。
嘉禎元年（1235年）：6月17日に正二位に昇叙。
暦仁元年（1238年）：2月24日に権大納言に転任。
仁治2年（1241年）：11月10日に左近衛大将を兼ねる。同月11日に左馬寮御監の宣下あり。
仁治3年（1242年）：4月9日に権大納言と左大将を辞した。
寛元4年（1246年）：7月15日に母の喪に服す。
文応元年（1260年）：2月15日に出家。同年4月17日に薨去。

このように、一条実有は若くして官位を重ね、要職を歴任しました。その昇進の速さは、彼が公家社会でいかに重んじられていたかを示しています。

人物

『明月記』には、一条実有の人となりを示す記述があります。嘉禄3年（1227年）2月、北条義時の娘（唐橋通時と再婚した一条実雅の元妻の妹）と結婚しました。この結婚は、前年にその母が婿を募るため入京し、大炊御門家嗣や堀川具実など多くの公家が候補となる中で、鎌倉幕府執権の北条泰時が実有を婿に決定したという経緯があります。この結婚により、一条実有は鎌倉幕府との関係を深め、その後の政界での活動に大きな影響を与えたと考えられます。

系譜

父：西園寺公経
母：権少僧都範雅の娘
妻：北条義時の娘
長男：一条公持（1228-1268） - 正二位権大納言
二男：一条公藤（1235-1281） - 正二位権大納言
女子：近衛基平室
女子：鷹司兼平室（1231-1249）
女子：四辻実藤室
男子：公什 - 天台座主第104世
女子：滋野井公光室

一条実有は、西園寺家という名門公家出身であり、北条氏との姻戚関係を結ぶことで、政治的な基盤を強化しました。また、多くの子に恵まれ、彼らの多くも公家として活躍しました。特に、長男の一条公持と二男の一条公藤は、共に正二位権大納言にまで昇り、一条家の繁栄に貢献しました。

参考文献

『公卿補任』（新訂増補国史大系）吉川弘文館 黒板勝美、国史大系編集会（編） ※ 嘉禄元年（1225年）に実有が非参議従三位となった時以降の記事。
『尊卑分脈』（新訂増補国史大系）吉川弘文館 黒板勝美、国史大系編集会（編） ※「一条実有」の項。
近藤敏喬 編『宮廷公家系図集覧』東京堂出版、1994年
* 橋本政宣 編『公家事典』吉川弘文館、2010年

もう一度検索