一条忠香

一条忠香

一条忠香（いちじょう ただか）は、江戸時代後期に活躍した公卿です。関白を務めた一条忠良の四男として生まれ、一条家の22代当主となりました。最終的な官位は従一位・左大臣にまで昇り、その存在感を示しました。法号は後大勝寺。

生涯

文化9年（1812年）に誕生した忠香は、文政2年（1819年）に童昇殿を果たし、元服と禁色昇殿も同年に経験。鷹司政通が加冠を務めました。正五位下から左近衛権少将に叙任されたのを皮切りに、順調に昇進を重ねます。文政3年（1820年）には従三位、文政4年（1821年）には正三位に叙せられました。

文政5年（1822年）には権中納言、文政11年（1828年）には権大納言に任じられ、同年には従二位に叙位。天保9年（1838年）には正二位に進みました。弘化5年（1848年）には右近衛大将兼左馬寮御監に叙任され、嘉永2年（1849年）には左近衛大将兼右馬寮御監となっています。安政5年（1858年）には内大臣に叙任されました。

安政6年（1859年）には左近衛大将と左馬寮御監を辞任。同日、左大臣に任じられ、随身兵杖を許されています。万延元年（1860年）には従一位となりました。文久元年（1861年）にも引き続き左大臣を務め、文久2年（1862年）には新設された国事御用掛に子である実良らと共に就任しました。文久3年（1863年）には男山八幡宮行幸に供奉しましたが、同年11月7日に左大臣と兵杖を辞退し、同日に52歳で薨去しました。

政治的には、14代将軍継嗣問題で一橋派を支持し、公武合体派として尊攘派の公家と対立しました。

多才な趣味人としての一面

忠香は、政治の世界だけでなく、文化的な分野でも才能を発揮しました。余技として絵を能くし、鹿背山焼で好みの煎茶器を作らせるなど、趣味人としての一面も持ち合わせていました。特に煎茶に対する造詣が深く、田中鶴翁に「煎茶家元」の揮毫を賜い、日本最初の煎茶道家元が誕生するきっかけを作りました。

系譜

正室は伏見宮邦家親王の第二王女である一条順子。娘の美子は、明治天皇の皇后である昭憲皇太后となりました。側室として新畑民子（花容院）がおり、彼女との間に実良を儲けています。また、三条実万の娘である峯や、今出川公久の娘である一条美賀子、醍醐忠順の娘である一条輝子（千代）を養女としています。美賀子は徳川慶喜の正室となり、輝子は慶喜の婚約者でしたが、疱瘡のために破談し、後に毫摂寺善慶の室となりました。

安政の大獄

安政の大獄では、慎十日の処分を受けています。

一条忠香は、公家社会において重要な地位を占めながらも、文化的な活動を通じて後世に影響を与えた人物として、その名が残っています。

参考文献

日本史籍協會叢書15『一条忠香日記抄』（東京大学出版会発行、1967年）

関連項目

田中鶴翁
* 安政の大獄

もう一度検索