三千院

三千院の概要

三千院は、京都市左京区大原来迎院町に位置する天台宗の寺院であり、山号を魚山と称します。本尊には薬師如来を祀り、その格式の高さから三千院門跡とも呼ばれています。京都市街の北東、大原の静かな山里にあり、かつては貴人や仏教修行者の隠棲の地として知られていました。青蓮院、妙法院とともに、天台宗山門派の三門跡寺院の一つに数えられています。

歴史

三千院の歴史は8世紀、最澄が比叡山に建立した円融房に始まります。その後、比叡山東麓の坂本へと移り、幾度かの移転を経て、1871年に現在の大原の地に移りました。「三千院」という寺名が使われるようになったのは大原に移転してからのことで、それ以前は「円融院」「円徳院」「梨本門跡」「梶井宮」「梶井門跡」などと呼ばれていました。一方、境内に位置する往生極楽院は、平安時代末期から大原にあった阿弥陀堂であり、三千院とは元々別の寺院でした。1871年に梶井門跡の本坊がこの地に移ってきてから、その境内に組み込まれました。

三千院は天台三門跡の中でも最も古い歴史を持ち、最澄が延暦年間に比叡山延暦寺を開いた際に、東塔南谷に「円融房」を構えたのが起源とされています。その地に860年、承雲和尚が最澄自刻の薬師如来像を安置し、円融院と称しました。その後、梶井に里坊を設け、1086年には梶井に本拠を移し円徳院と称しました。梶井の地名と加持に用いる井戸があったことから、「梶井宮」と呼ばれるようにもなりました。

1118年には、堀河天皇の皇子である最雲法親王が入寺し、その後、皇室や摂関家の子弟が歴代の住持を務めるようになりました。護良親王もその一人です。最雲法親王は1156年に天台座主に任命されましたが、同じ年に大原に梶井門跡の政所が設置されました。これは、大原に住み着いた念仏行者を取り締まり、来迎院や勝林院などの寺院を管理するためのものでした。大原は古くから貴人や念仏修行者が隠棲する地として知られており、『伊勢物語』にもその様子が描かれています。融通念仏や天台声明も盛んに行われた場所であり、聖応大師良忍もこの地に住みました。

山号の魚山は、声明の発祥にちなんだものです。坂本の梶井門跡は1232年の火災をきっかけに京都市内に移転し、各地を転々とした後、1331年に船岡山の東麓に落ち着きました。その後、応仁の乱で焼失し、大原の政所を本坊としました。1698年には徳川綱吉によって京都[[御所]]周辺に寺地が与えられましたが、明治維新の際に、梨本宮家が創設され、寺院内の仏像などは大原に移されました。1871年、大原の政所が「三千院」と改称され、隣接する極楽院を合併しました。寺名は、梶井門跡の持仏堂の名称「一念三千院」に由来しています。

往生極楽院

往生極楽院は、重要文化財に指定されている阿弥陀堂で、入母屋造、杮葺き、妻入りの建物です。内部は船底天井で、国宝の阿弥陀三尊像が安置されています。中尊の阿弥陀如来は来迎印を結び、脇侍の観音菩薩と勢至[[菩薩]]はそれぞれ蓮台に乗せる姿と合掌する姿をしています。天井には極彩色の天女や菩薩が描かれています。

極楽院は元々、天台宗の門跡とは無関係の寺院でした。寺伝では986年に恵心僧都源信が創建したとされますが、実際には12世紀末に藤原実衡の妻である真如房尼が建立したものです。1871年に梶井門跡の本坊が移転して三千院と改称すると、極楽院は吸収合併され、三千院のお堂となりました。1885年に「往生極楽院」と改称されました。

境内

三千院の境内は、呂川と律川という二つの川に挟まれています。境内には、往生極楽院の正門である朱雀門や、拝観入口である御殿門があります。御殿門は重厚な門構えで、近江坂本の穴太衆が築いた石垣が特徴です。門をくぐると、客殿、宸殿、庭園があり、庭園内には往生極楽院が建っています。庭園にはわらべ地蔵が佇み、奥の院へ進むと弁財天、金色不動堂、観音堂などがあります。また、律川沿いには阿弥陀石仏、御殿門の南側には円融房と円融蔵があります。

主要な建物と庭園

宸殿: 1926年建立の本堂で、宮中の紫宸殿を模して建てられました。宮中御懺法講が行われる道場であり、本尊の薬師瑠璃光如来像が安置されています。
客殿: 平安時代には龍禅院と呼ばれ、大原寺の政所でした。豊臣秀吉によって建て替えられ、障壁画は当時の京都画壇の画家たちによって描かれました。
庭園「有清園」: 池泉回遊式庭園で、宸殿前から往生極楽院にかけて広がります。
庭園「聚碧園」: 池泉観賞式庭園で、客殿の周囲に広がります。金森宗和の作庭と伝えられています。
その他: 弁天池、朱雀門、あじさい苑、弁財天、金色不動堂、観音堂、北小観音堂、南小観音堂、石庭「二十五菩薩慈眼の庭」、勝手神社、売炭翁石仏、西方門、南門、円融房、円融蔵などがあります。

文化財

国宝: 木造阿弥陀如来及両脇侍坐像（往生極楽院の本尊）
* 重要文化財: 往生極楽院阿弥陀堂、木造救世観音半跏像、木造不動明王立像など、多数。

その他

三千院は、西国薬師四十九霊場、近畿三十六不動尊霊場、神仏霊場巡拝の道にも含まれており、多くの参拝者が訪れます。バス停からも徒歩圏内でアクセスも容易です。

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