三河安藤氏

安藤氏：三河から華族へ至る武家・華族の歴史

安藤氏は、日本の歴史において重要な役割を果たした武家・華族の家系です。その起源は三河国の土豪にまで遡り、松平氏に仕えたことから歴史が始まりました。江戸時代には、紀州徳川家の付家老として、そして磐城平藩の藩主家として勢力を拡大していきます。明治維新後には、それぞれの系統が華族に列せられ、男爵家と子爵家を形成するに至りました。本稿では、安藤氏の歴史を、紀州家系と磐城平家系の2系統に分けて詳述します。

紀州徳川家系：田辺藩主から男爵家へ

安藤家重は、徳川家康の父である松平広忠に仕え、安藤氏の礎を築きました。その後、家重の子である安藤基能は、元亀3年（1572年）の三方ヶ原の戦いで戦死するという悲劇に見舞われます。しかし、基能の嫡男である安藤直次は、家康の側近として活躍し、その才能を発揮しました。慶長15年（1610年）には徳川頼宣（後の紀州藩主）の傅に任じられ、元和3年（1617年）には遠州掛川城主となり、2万石の所領を与えられました。

元和6年（1620年）、頼宣が紀伊国に移封されると、直次も田辺城に3万8000石で移封され、以降代々紀州徳川家の付家老家として明治維新までその地位を維持しました。最後の田辺城主となった安藤直裕は、明治元年に紀州藩から独立し、紀伊田辺藩を立藩しました。明治2年の華族制度発布により、安藤家は華族に列せられ、明治17年には華族令に基づき、安藤直行が男爵に叙せられました。その後、直行の子孫は貴族院議員を務めるなど、華族社会において重要な役割を果たしました。安藤男爵家の邸宅は、東京府東京市杉並区荻窪にありました。

紀州家系歴代当主： 安藤直次、安藤直治、安藤義門、安藤直清、安藤直名、安藤陳武、安藤陳定、安藤雄能、安藤次由、安藤寛長、安藤次猷、安藤道紀、安藤直與、安藤直則、安藤直馨、安藤直裕、安藤直行、安藤直雄、安藤直義など

磐城平家系：平藩主から子爵家へ

安藤直次の弟、安藤重信は、元和5年（1619年）に下総国小見川から上野国高崎に5万6000石で加増移封されました。その後、備中松山藩、加納藩と転封を重ね、宝暦6年（1756年）には陸奥国平藩に移封され、廃藩置県まで同地を治めました。

幕末期の藩主、安藤信正は幕府老中となり、和宮親子内親王の徳川家茂への降嫁を進めるなど、公武合体による幕府権力回復を図りました。しかし、尊皇攘夷派からの反発を受け、老中を辞任し、減封・隠居処分を受けました。戊辰戦争では奥羽越列藩同盟に与し、戦後謹慎処分を受けました。戊辰戦争当時藩主であった安藤信勇も王師に抗した罪で謹慎となりましたが、後に赦免され、磐城平藩知事を務めました。明治2年の華族制度発布により、安藤家は華族に列せられ、明治17年には、当時の当主安藤信守が子爵に叙せられました。安藤子爵家の住居は東京市杉並区高円寺にありました。

磐城平家系歴代当主： 安藤重信、安藤重長、安藤重博、安藤信友、安藤信尹、安藤信成、安藤信馨、安藤信義、安藤信由、安藤信正、安藤信民、安藤信勇、安藤信守、安藤信篤、安藤信昭、安藤信和、安藤綾信など

阿久和安藤家

安藤基能の弟、安藤定次は旗本として相模国鎌倉郡阿久和村に知行を得て、阿久和安藤家を開きました。

安藤氏は、紀州徳川家や磐城平藩といった大名家に仕え、華族として明治時代を生き抜いた歴史を持つ家系です。その栄枯盛衰は、日本の歴史そのものを反映しており、今後の研究が待たれます。

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