下甑町手打

下甑町手打（しもこしきちょうてうち）

鹿児島県薩摩川内市に属する下甑町手打は、甑島列島の下甑島の最南端に位置する地域です。かつては下甑村の中心地として栄え、豊かな自然と歴史的な背景を今に伝えています。

地理

下甑島南部に位置し、北には下甑町青瀬と片野浦に隣接、南は東シナ海に面しています。手打湾は天然の良港として知られ、湾頭には砂丘が連なっています。この砂丘からは弥生時代の遺跡も発見されており、古代から人々が生活を営んでいたことがわかります。手打湾沖では海洋深層水が取水され、地域産業に貢献しています。

かつては甑島郷の地頭仮屋が置かれ、その麓に集落が形成されました。明治時代の町村制施行以降は、下甑村の役場や診療所、歴史民俗資料館が置かれ、村の中心としての役割を担ってきました。現在でも、港、麓、本町の3箇所に自治公民館が設置され、地域のコミュニティ活動を支えています。

地名の由来

「手打」という地名の由来は、源平合戦で敗れた平家の落人がこの地に流れ着き、「ここは良い所だ」と手を打って喜んだという伝説に由来すると伝えられています。この地名には、この土地の魅力が古くから認識されていたことが示唆されています。

自然公園・自然保護地区

2015年、甑島列島は甑島国定公園に指定されました。手打地区もこの国定公園の区域内に含まれており、東部と西部の一部が特別地域に指定されています。また、手打の海域は「下甑島西海岸海域公園地区」として保護されており、豊かな自然環境が守られています。

山岳

手打地区には以下の山があります。

口岳 - 標高487.3m
勝山 - 標高389.5m
ひょうたん岳 - 標高364.5m

島嶼・岩礁

手打地区周辺には、長瀬（おさんせ）をはじめとする島嶼や岩礁が点在しています。

歴史

前史時代

手打地区からは、弥生土器や人骨が発掘されており、大原・宮園遺跡からは弥生時代中期前半以降の遺物が出土しています。手打貝塚からは、弥生時代終末期から古墳時代にかけての貝塚が発見され、本土との文化交流があったことがうかがえます。

手打村の成立から町村制施行まで

江戸時代には、薩摩国甑島郡甑島郷の一部であり、地頭仮屋が置かれていました。伊能忠敬の「九州東海辺沿海村順」には、手打村、下甑村、浜之市浦の戸数が記録されています。また、手打には遠見番所や薩摩藩直営の牧場も設置されていました。鎖国時代には、キリスト教布教のため漂着したポルトガル人やインド人が一時的に住んでいたという記録も残っています。

明治時代には、小学校や警察署の分署が設置され、1884年には下甑島の6村を管轄する戸長役場が設置されました。

町村制施行以降の手打

1889年の町村制施行により、手打村を含む6村が合併し下甑村が発足、手打はその大字となりました。村役場は手打に置かれ、1890年には第一区が設置されました。1917年には区が改正され、麓、濱、在の３区に分かれました。2004年には下甑村が薩摩川内市と合併し、下甑町手打となりました。合併に伴い、大字名も「下甑町手打」に改称されました。

文化財

国指定

甑島のトシドン：重要無形民俗文化財であり、ユネスコ無形文化遺産にも登録されています。手打地区には、港トシドン保存会、麓トシドン保存会、本町トシドン保存会が存在しています。

県指定

甑島の植物繊維衣料：下甑郷土館に所蔵されている有形民俗文化財です。甑島の伝統的な紡織習俗によって制作された衣類です。

市指定

武士踊：薩摩川内市が指定する文化財です。

施設

公共施設

薩摩川内市役所甑島振興局下甑支所（旧下甑村役場）
薩摩川内市立図書館下甑分館
薩摩川内市下甑手打診療所：漫画「Dr.コトー診療所」のモデルとなった医師が勤務していた場所です。
薩摩川内市社会福祉協議会下甑支所
薩摩川内市シルバー人材センター下甑支所
下甑高齢者多目的ホール
下甑住民生活センター
下甑手打へき地保健福祉館
手打地区コミュニティセンター
薩摩川内市下甑郷土館

教育施設

薩摩川内市立海陽中学校（休校中）
薩摩川内市立手打小学校

郵便局

手打郵便局

寺社

新田神社
諏訪神社
大照寺
法雲寺

商業施設

こしき海洋深層水本社：手打湾沖で取水される海洋深層水の販売を行っています。

人口

国勢調査によると、1995年以降、人口は減少傾向にあります。

教育

手打地区には手打小学校が設置されています。中学校は以前は海陽中学校がありましたが、現在は休校中です。高等学校は設置されていません。

中学校

下甑村立手打中学校は1947年に設置され、1980年に海陽中学校となりました。2021年に休校となり、2024年 4月1日に閉校しました。

小学校

手打小学校は、明治初期に手打学館として開設され、1892年に尋常小学校となりました。1941年に国民学校、1947年に手打小学校となっています。

幼稚園

1970年に手打幼児学級として設置され、1978年に下甑村立手打小学校附属幼稚園となりましたが、2015年に閉園しました。

交通

陸上交通

道路：鹿児島県道349号手打藺牟田港線、鹿児島県道350号長浜手打港線が通っています。
バス：「甑かのこゆりバス」が運行しており、里港と手打、手打と片野浦を結んでいます。

海上交通

港湾施設：手打港があります。
灯台施設：釣掛崎灯台が下甑島の最南端に位置しています。

手打が登場する作品

『釣りバカ日誌9』：手打海岸でロケが行われました。

脚注

詳細な情報については、参考文献や外部リンクをご参照ください。

参考文献

角川日本地名大辞典編纂委員会『角川日本地名大辞典 46 鹿児島県』角川書店、1983年。
芳即正、五味克夫『日本歴史地名大系47巻鹿児島県の地名』平凡社、1998年。
下甑村郷土誌編纂委員会『下甑村郷土誌』下甑村、2004年。

外部リンク

* 手打地区コミュニティ協議会

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