中国＝パキスタン国境

中国＝パキスタン国境（中巴国境）の詳細

中国＝パキスタン国境、別名中巴国境は、中華人民共和国とパキスタンの間に存在する国境です。この国境は、西はアフガニスタンとの三国国境地点から始まり、カラコルム山脈を越えて、インドとの紛争地域であるシアチェン氷河付近に至るまで、東西方向に約592キロメートルにわたって伸びています。

国境が接する地域

パキスタン側では、ギルギット・バルティスタン州に属するフンザ県、シガール県、ガンチェ県が国境に接しています。一方、中国側では、新疆ウイグル自治区のカシュガル地区に属するタシュクルガン・タジク自治県とカルギリク県が国境を接しています。

歴史的背景

現代の国境線は、イギリスがインドを支配していた時代にそのルーツを持ちます。当時、パキスタンはイギリス領インド帝国の一部でした。1899年、イギリスは中国に対し、イギリス領インドとの国境線（マクドナルド線）を提案しましたが、中国がこれを受け入れなかったため、正式な国境とはなりませんでした。

その後、数十年にわたり、関係する当事者から様々な地図が発行され、国境線が大きく変化していることが示されました。1947年にイギリス領インド帝国からインドとパキスタンが分離独立した際、中国との国境紛争はそのまま引き継がれ、さらに印パ間のジャンムー・カシュミールを巡る紛争によって、状況は複雑化しました。

1960年代初頭、カシミールを巡る印パ間の紛争が解決されない中、チベットにおける中国の影響力が拡大しました。1962年には中印国境紛争が発生し、中国がインドが実効支配していたアクサイチンを掌握したことで、中国とパキスタンとの国境問題が表面化しました。1961年、両国は国境線を明確に画定することで合意し、翌年から交渉が開始され、1963年に中国パキスタン国境協定が調印されました。この協定により、パキスタンはカラコルム回廊を中国に割譲しました。協定締結後、航空測量と地図作成、国境標識の設置が行われました。

国境線の詳細

1963年の中国パキスタン国境協定第2条では、国境線は以下のように定められています。

1. 国境線は、標高5,630メートルの地点（東経74度34分、北緯37度03分）から始まり、タリム川水系の支流とインダス川水系の支流の間の分水嶺に沿って、おおむね東に進んだ後、南東方向へ進みます。この線は、キリク・ダバーン、ミンタカ・ダバーン、カルチャナイ・ダバーン、クテジルガ・ダバーン、パルピック峠を経て、クンジュラブ・ダバーンに到達します。
2. クンジュラブ・ダバーンを通過後、国境線は分水嶺に沿って南下し、その後、アキジルガ川とタグダンバシュ川（オプラング川）の間の支脈に沿って南東方向に進みます。中国側の地図では、この支脈の南東端からケリマン・スー川の中流域を経由してケレチン川との合流点まで達します。一方、パキスタン側の地図では、この支脈の南東端からシャクスガム川（ムスタグ川）の急な湾曲部に達するとされています。
3. 国境線は、ケレチン川（またはシャクスガム川）の河床の中央線に沿って、ソルブラク・ダリア川（シムシャル川またはブラルドゥ川）との合流点（東経76度02分、北緯36度26分）まで遡ります。
4. 中国側の地図では、国境線は合流点から支脈の稜線を登り、カラコルム山脈の主脈に合流する（東経75度5分、北緯36度15分）とされています。パキスタン側の地図では、同様に支脈の稜線を登り、標高6,520メートル地点を通過してカラコルム山脈の主脈に合流する（東経75度57分、北緯36度03分）とされています。
5. そこから国境線は、カラコルム山脈の主脈に沿って、ムスターグ峠を通過し、チョゴリ峰(K2)、ブロード・ピーク、ガッシャーブルム峰、インディラコリ峠、テラム・カンリ峰を経て、カラコルム峠に至ります。

国境紛争

パキスタンは、中国との国境に接するインド支配地域であるラダックの領有権を主張しています。パキスタン政府の地図では、ラダックにおける中国との境界を「国境未定義」と記載し、その状態はカシミール紛争解決後に正式化されるとしています。

一方、インド政府は、1963年の中パ国境協定を認めていません。インドはジャンムー・カシュミール藩王国の全域の領有権を主張しており、その主張によれば、パキスタンと中国は国境を接せず、インドがアフガニスタンと国境を接することになります。インドは、カラコルム回廊の中国への割譲も認めていません。さらに、インドと中国の間にも国境問題が存在するため、状況はより複雑化しています。

1984年、インドはシアチェン氷河に軍隊を派遣し、事実上の三国間の国境線を変更しました。1963年の中パ国境協定第6条では、カシミール問題解決後に国境を再交渉すると規定されていますが、インドと中国の関係は冷え切っており、インドとパキスタンも敵対関係にあるため、この国境問題の解決は困難な状況です。

国境通過点

現在、中国とパキスタンを結ぶ唯一の国境通過点はクンジュラブ峠であり、カラコルム・ハイウェイがここを通っています。過去にはミンタカ峠やキリク峠も利用されていましたが、現在は車両でのアクセスが困難なため、閉鎖されています。

中国＝パキスタン国境