中院通為

中院通為（なかのいん みちため）

中院通為は、戦国時代の公卿であり、権中納言・中院通胤の子として生まれました。官位は正二位・内大臣にまで昇り、父祖と同様に、たびたび加賀国に下向し、家領である額田庄などの直務支配に尽力しました。本名は通右・通量と称しました。

経歴

大永元年（1521年）9月に5歳で叙爵。大永6年（1526年）10月には侍従に任官しました。享禄4年（1531年）4月に従四位下に叙されて元服し、天文2年（1533年）11月、左権中将を兼ねた際に通量から通為へと改名しました。天文3年（1534年）2月には従四位上・参議に叙任され、公卿に列し、天文4年（1535年）2月には正四位下、天文5年（1536年）4月には従三位へと昇進しました。

天文6年（1537年）3月、幕府が加賀額田庄の代官を主張する国人・朝日氏の訴訟を退け、中院家による直務を命じたため、通為は同年6月に加賀国へ下向しました。在国中の天文9年（1540年）6月には所労のため一旦辞職しますが、天文10年（1541年）6月には朝廷から在京継続の要請を受け、9月に上洛・参内し、12月には参議に還任しました。さらに、天文11年（1542年）閏3月には正三位・権中納言に叙任され、天文12年（1543年）3月には侍従を兼ねました。

同年11月、年貢を未進した泉弥二郎に対処するため、再び加賀へ下向。通為は泉の田地を没収するという強硬策に出ましたが、報復として横領の暴挙に遭いました。しかし、天文15年（1546年）5月には幕府から額田庄の知行が安堵されています。その後の直務の動向は不明ながら、天文24年（1555年）9月には加賀より再び上洛し、弘治2年（1556年）1月には正二位、9月には権大納言に叙任されました。永禄元年（1558年）9月には近臣となりましたが、永禄2年（1559年）11月には三度加賀へ下向しています。初めは額田庄内の桑原（現在の加賀市桑原町）に居住し、やがて越前国から一向衆が乱入した際には、北上して能美郡山内へ逃れました。

永禄7年（1564年）12月には在国のまま師秀親王の勅別当となり、永禄8年（1565年）8月には万里小路惟房へ書状を送り、「所労危急」のため任槐（大臣に任じられること）を嘆願して勅許を得ました。ただし、これには条件が付され、もし本復すれば召し返すこと、逝去すればその日を以て任日とすべしとのことでした。同年9月3日、通為は癰腫（腫れ物）のため山内で薨去。後日、朝廷では同日付を以て任内大臣の宣下が行われたと伝えられています（『公卿補任』『諸家伝』）。しかし、同時代の広橋兼秀の自筆と推定される『異本公卿補任』（広橋家本）にはこの注記が一切なく、通為は「腫物所労」で起居していた折、越前より乱入した一向衆に放火されて焼死し、永禄10年（1567年）9月に内大臣を追贈されたという異説も存在します。

いずれにしても、祖父の通世と父の通胤の官位が権中納言に留まったことを考えると、通為にとって大臣への昇任は悲願であったことは疑いありません。

歌人としては、『詠百首和歌』（京都大学附属図書館中院文庫蔵）を残しており、その中には「いかばかり都の手ぶり忘れましひなのすまゐのとしも経ぬれば」など、在国の侘しさを詠んだ歌も見られ、戦国期公家の心情を窺い知ることができます。この他、百韻連歌を嗜んだり、正親町天皇の命で源氏物語を校合したりすることもあったとされています。

系譜

父：中院通胤（1499-1530）
母：姉小路済継女（?-1535）
妻：三条西公条女
一男：中院通総（1543-1554） - 従五位上・左少将
三男：中院通勝（1556-1610）
男子：公厳（三級、?-?） - 毘沙門堂
妾：家女房
女子：岡島一吉室（?-?）
二男：白川雅朝王（1555-1631） - 白川雅業王の猶子
生母不明の子女
女子
女子：真祐 - 摂取院

参考文献

加賀市史編纂委員会編 『加賀市史 通史 上巻』 加賀市、1978年、NCID BN0157205X
菅原正子 「公家衆の『在国』」（『中世公家の経済と文化』 吉川弘文館、1998年、ISBN 9784642027625）
橋本政宣編 『公家事典』 吉川弘文館、2010年、ISBN 9784642014427

外部リンク

『慈西院也足院百首』 - 京都大学電子図書館

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