乙逸

乙逸（おつ いつ）

乙逸（生没年不詳）は、五胡十六国時代の前燕に仕えた人物であり、平原郡の出身です。子に乙璋がいます。

生涯

乙逸は鮮卑慕容部の大人である慕容皝に仕え、東夷護軍に任じられました。

333年10月、遼東城で前の大司農であった孫機らが、反乱を起こした征虜将軍慕容仁に応じた際、東夷校尉の封抽や遼東相の韓矯とともに城から脱出しました。

その後、玄菟郡太守に任じられました。

352年11月、燕王慕容儁が龍城に留台を置くと、乙逸は尚書に任じられ、政務を委ねられました。

その後、幽州刺史に任じられました。

357年1月、左光禄大夫に任じられました。

これ以後の事績については、史書に記録が残されていません。

人物・逸話

乙逸が移動する際、夫婦は鹿車に乗っていましたが、息子の乙璋は数十騎を従え、豪奢な服装で、道端で人々に出迎えをさせていました。これを見た乙逸は大いに怒り、車内を閉じて一言も口を利きませんでした。城に着くと、乙逸は乙璋を厳しく責めましたが、乙璋は改めようとしませんでした。乙逸は嘆いて言いました。「私は幼い頃から学問を修め、自らの欲に打ち勝ち、道理を守ってきたからこそ、僅かな才能でも罪を免れてきたのだ。乙璋は質素倹約ができず、豪奢なことを好んでいる。どうして乙璋が幸せになれるだろうか。今の時代は次第に衰え廃れていくだろう。」

しかし、乙璋はその後、中書令や御史中丞を歴任したと伝えられています。

参考文献

『晋書』巻109
『資治通鑑』巻95、巻99、巻100
* 『十六国春秋』巻24、巻26、巻27、巻31

もう一度検索