封抽

封抽（ほう ちゅう）

封抽（生没年不詳）は、五胡十六国時代に生きた人物で、渤海郡蓨県を本貫とします。彼は西晋の東夷校尉であった封釈の子として生まれました。

生涯

封抽は西晋に仕え、幽州参軍という職に就いていました。永嘉5年（311年）12月、父である封釈の喪に服すため、兄の封悛（きしゅうしゅぼ）と共に、鮮卑慕容部の大人である慕容廆（ぼようかい）の元へ赴きました。慕容廆は封抽らの人物を見て、その才能を高く評価し、「千斤の犍（去勢された雄牛）に値する」と感嘆したと伝えられています。当時、戦乱により帰路が閉ざされており、故郷へ帰ることができなかった封抽らは、慕容廆に仕えることを決意し、封抽は長史に任じられました。

建興元年（313年）には、游邃（ゆうすい）、逄羨（ほうせん）、西方虔（さいほうけん）、宋奭（そうせき）、裴開（はいかい）らと共に慕容廆の股肱（重要な家臣）に任じられ、その後、東夷校尉という要職を担いました。

咸和6年（331年）9月、封抽は慕容廆の使者として、遼東相の韓矯（かんきょう）ら30余人と共に、東晋の太尉である陶侃（とうかん）の元へ上奏文を届けました。その内容は、慕容廆を大将軍に任じ、燕王に封じるようにという請願でした。陶侃は返書を送り、この請願を東晋朝廷の議題に上げることを約束しましたが、朝廷は最終的にこの請願を議決しませんでした。

咸和8年（333年）10月、征虜将軍の慕容仁（ぼようにん）が、鮮卑慕容部の大人である慕容皝（ぼようこう）に対して反乱を起こしました。この反乱により、遼東は慕容仁の支配下となり、封抽は韓矯や東夷護軍の乙逸（いついつ）らと共に城を捨てて逃走しました。

咸康4年（338年）5月、後趙の天王である石虎（せきこ）は、前燕国内に使者を放ち、前燕の勢力を誘い込みました。これに応じたのが、東夷校尉の封抽、護軍将軍の宋晃（そうこう）、成周内史の崔燾（さいとう）、武原県令の常覇（じょうは）、居就県令の游泓（ゆうこう）らであり、後趙はこれにより36城を手に入れました。しかし、燕王の慕容皝は軍を派遣し、後趙に応じたこれらの城を全て攻略しました。敗れた封抽は、宋晃、游泓と共に高句麗へ逃亡しました。

封抽の存在は、4世紀以降の高句麗の国家発展において無視できない役割を果たしました。彼は高句麗に新たな文化をもたらし、国政の整備、軍備拡張、そして積極的な外交政策を推進する上で貢献しました。

家系

父: 封釈
兄: 封𢚂、封悛
子: 封裕
従子: 封放、封奕

参考文献

『晋書』巻108、巻109
『資治通鑑』巻87、巻89、巻94、巻96
* 『十六国春秋』巻23、巻24、巻31

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