今昔文字鏡

今昔文字鏡とは

今昔文字鏡は、株式会社エーアイ・ネットが開発・販売していたWindows用アプリケーションソフトウェアで、漢字を中心とした大規模な文字集合を扱えるように設計されています。主な機能は、漢字検索と印字で、17万字以上の文字を収録したフォントを搭載しています。

概要

このソフトウェアは、パソコン上で多種多様な文字を扱うことを目的としており、日本語のShift_JISコードポイントに、『大漢和辞典』の全収録字、日本国字、簡体字、方言字、甲骨文字、篆書などの漢字に加え、チュノム、水族文字、梵字、西夏文字、変体仮名、台湾語仮名など、広範な文字グリフを割り当てています。これらの文字は、フォントを切り替えることで表示でき、ワープロソフトなどでフォント指定することで印字も可能です。

各文字には一意の「文字鏡番号」が割り振られており、この番号はISO/IEC 10036にも反映されています。これにより、フォント指定ができないソフトウェア間でも文字情報を共有できます。ただし、『大漢和辞典』との完全な互換性があるわけではなく、特に重複登録文字やダッシュ付き番号、補巻に収録された文字など、一部で文字番号が一致しない箇所が存在します。そのため、文字番号を情報交換に利用する際は、どの版の『大漢和辞典』に基づいているか、一致範囲をユーザー側で十分に理解しておく必要があります。

ソフトウェア構成

今昔文字鏡には、明朝体フォントと文字一覧を表示する簡易入力ソフト『Mojikyo Character Map』が含まれていました。このソフトは、関連書籍の付録CD-ROMに収録され、図書館などで借りた場合でも複製利用が許可されていました。2018年12月からは、文字鏡研究会のウェブサイトで、フォントと合わせて無償ダウンロードできるようになっています。

有償版では、文字の読み、部首、画数などを用いた検索が可能で、再配布が許可されていない篆書体フォントも付属していました。また、Unicode文字のみを検索・出力できる『今昔文字鏡 UnicodeEdition』もかつては販売されていましたが、現在は廃盤となっています。エーアイ・ネットは、Unicodeコードポイントと同じ位置に文字グリフを配置した単体フォント製品も販売していました。

歴史

今昔文字鏡の開発は1985年に始まり、1997年には大修館書店から『大漢和辞典』の番号使用許可を得て最初の製品が発売されました。紀伊國屋書店が販売元となり、販売ルートを確立。その後、TrueTypeフォントの搭載やWebデータベースの開始、収録文字数の増加など、様々なバージョンアップが行われてきました。

2000年代には、『康煕字典』のDVD-ROM版や、プロフェッショナル版フォント、梵字に特化したソフトウェアなどもリリースされました。2018年には、紀伊國屋書店との販売代理店契約が解消され、エーアイ・ネットが単独で販売・サポートを行う体制となりました。しかし、同年8月には開発者である古家時雄氏が逝去し、12月には文字鏡研究会が解散しました。

製品ラインナップ

今昔文字鏡には、単漢字版、プロフェッショナル版、Unicode版など、様々な製品がありました。

今昔文字鏡 単漢字版: Windows 7, Vista, XP, 2000に対応し、16万字の漢字を収録。Unicodeにない特殊な人名用漢字、梵字、甲骨文字、篆書、西夏文字などの入力・印刷を可能にします。
今昔文字鏡プロフェッショナル版: 出版物などでの商業利用を目的としたフォントライセンス付きの製品で、『今昔文字鏡 単漢字版』とほぼ同じ文字数を収録。
今昔文字鏡 UnicodeEdition: UnicodeのCJK統合漢字拡張Bまでを検索・出力できる製品（現在は廃盤）。
文字鏡明朝ユニコードフォントセット: UnicodeのCJK統合漢字と拡張A、Bに対応したフォントセット。
文字鏡毛筆草書: 書家・渡邉東龍が揮毫した草書体をTrueType化したフォント。
文字鏡毛筆隷書: 書家・安東麟の原字を基に制作した隷書体フォント。
梵字鏡 湧出窓: 梵字に特化した検索・入力ソフトで、1万2千字を収録。

インストール時の注意点

今昔文字鏡のインストーラは、古いInstallShieldを使用していたため、Windows 10で正常に動作しない場合があります。その場合は、汎用インストーラをバイパスとして使用することで、インストールできる場合があります。Nathan Lineback氏が開発したInstallShield Engine 3.0やInstallShield Launcher 5などが利用可能です。

まとめ

今昔文字鏡は、多種多様な文字を扱うための強力なツールでしたが、開発元の解散やサポート体制の変化により、現在は入手やサポートが難しくなっています。しかし、その技術は大規模文字セットの分野で重要な役割を果たし、学術研究や出版などに貢献しました。

関連製品として、『康煕字典 DVD-ROM』や、各種筆文字フォントなどがあります。

参考資料

古家時雄「今昔文字鏡の開発と普及の経緯」
谷本玲大「JIS以外の文字コード 今昔文字鏡」
各製品の関連出版物

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