伊射波神社

伊射波神社（いざわじんじゃ）は、三重県鳥羽市の加布良古崎に鎮座する、歴史ある神社です。古くは「志摩大明神」「加布良古大明神」とも呼ばれ、地元では「かぶらこさん」として親しまれています。

祭神

伊射波神社には、以下の四柱の神々が祀られています。

稚日女尊（わかひめのみこと）：天照大神に仕えた神とされ、『日本書紀』に登場する神功皇后が三韓征伐の際に現れた神と同一視されています。元々は現在の兵庫県神戸市にある生田神社に祀られていた神であるという説もあります。
伊佐波登美命（いざわとみのみこと）：垂仁天皇の時代に、皇女倭姫命が皇大神宮の御贄を奉る地を探して志摩国を訪れた際に出迎えた神とされています。この神の本宮跡は、安楽島の二地（ふたぢ）の鳥羽贄遺跡であるとされ、平安時代後期に現在地に移されたと考えられています。
玉柱屋姫命（たまはしらやひめのみこと）：伊雑宮の『御鎮座本縁』によれば、天叢雲命の裔であり、伊勢国造の祖である天日別命の子とされています。伊佐波登美命の妃神であるとも伝えられています。
狭依姫命（さよりひめのみこと）：宗像三女神の一柱である市杵島姫命の別名で、かつて近くの長藻地という島に祀られていましたが、島が水没したため、伊射波神社に合祀されました。

また、御崎の先には、別の領有神が祀られています。境内の玉垣内には丸い白石が敷き詰められており、古くから漁民はこの白石を船霊として船中に安置し、豊漁を祈る習慣があります。船守りとして持ち帰った白石は、必ず2倍3倍にして神社に返さなければならないとされています。

歴史

創建時期は不明ですが、1500年以上の歴史を持つとされています。稚日女尊を海の道から加布良古崎に祀ったことが始まりとされ、古代から志摩国の海上守護神として崇敬を集めてきました。

延長5年（927年）の『延喜式神名帳』には「貞コ粟嶋坐伊射波神社二座　並　大」と記載されており、このうちの一社が当社であるとされています。しかし、他の説では、もう一社は伊雑宮であり、伊射波神社は合祀されて伊雑宮に祀られたため、当社は式内社ではないともされています。

建久3年（1192年）の『皇大神宮年中行事』や『外宮旧神楽歌』には、当社が阿久志神社や赤崎神社と共に古くから知られていたことが示唆されています。伊射波神社は、伊雑宮と共に志摩国の一宮とされていますが、その理由については、伊雑宮が伊勢神宮の別宮であったため、民社である当社を一宮としたとする説や、鳥羽藩が伊雑宮の神職を牽制するために一宮を二つ作ったとする説があります。

また、別の研究では、以下の理由から伊雑宮こそが志摩国の一宮であると主張されています。

1. 「伊射波」は「伊雑」の万葉仮名であると考えられる。
2. 伊雑宮は、神宮と国司で呼び方が異なっていた。
3. 加布良古明神は古くは荒前神社と呼ばれており、伊射波神社の名は古代・中世の史料にない。
4. 当社を伊射波神社と称したのは文化4年（1807年）からである。
5. 一宮は国府に近い大社とされる慣例があるが、伊雑宮の方が国府推定地に近い。

戦国時代には社地を失い、安政元年（1854年）の大地震と大津波、火災によって記録が失われたとされています。

明治の近代社格制度では無格社とされましたが、昭和31年（1956年）に籠堂が再建され、昭和51年（1976年）には本殿と拝殿が造営されました。平成13年（2001年）には神明造の本殿と拝殿を現在地に遷座しました。

境内

[境内写真１]

[境内写真２]

[境内写真３]

[境内写真４]

主な祭事

明神祭：7月7日に近い日曜日に行われます。
大漁祈願祭：11月23日に行われます。この祭では、御魚取り神事が行われ、五人年寄りが神前で刺し網を張り、「大漁じゃ」の掛け声と共に新鮮な魚を投げ入れます。神事後、魚は焼いて食べられます。

現地情報

所在地：三重県鳥羽市安楽島町字加布良古1020
交通アクセス：鳥羽駅（JR東海参宮線または近鉄鳥羽線）から、かもめバス（鳥羽市コミュニティバス、安楽島行き）で「安楽島」バス停下車（下車後徒歩約40分）

参考文献

谷川健一『日本の神々 -神社と聖地-　6　伊勢・志摩・伊賀・紀伊』㈱白水社、1984年。
中世諸国一宮制研究会編『中世諸国一宮制の基礎的研究』岩田書院、2000年。
入江孝一郎『諸国一の宮』移動教室出版事業部、2001年。
全国一の宮会編『公式ガイドブック 全国一の宮めぐり』全国一の宮会、2008年。

関連項目

伊雑宮 - 志摩国一宮を称するもう一つの神社
鳥羽一番街 - 鳥羽三女神の1柱として、伊射波神社の代理受付所を設置

外部リンク

伊射波神社 - 鳥羽市観光情報サイト
粟島坐伊射波神社二座 - 國學院大學21世紀COEプログラム「神道・神社史料集成」

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