姉小路頼綱

姉小路頼綱の生涯

姉小路頼綱は、戦国時代から安土桃山時代にかけて活躍した武将、大名、公卿です。飛騨姉小路氏（三木姉小路氏）の当主であり、その生涯は激動の時代を反映したものでした。父は姉小路良頼（嗣頼）で、正室は斎藤道三の娘であるため、織田信長とは相婿の間柄になります。

三木氏の出自と成長

頼綱の出自である姉小路家は、元々飛騨国守護の京極氏の家臣であった三木氏です。戦国時代に入り守護の力が弱まると、三木直頼が益田郡南部を拠点に勢力を拡大しました。頼綱自身も、元服当初は光頼と名乗り、後に三木自綱と改名しました。

三木氏の家格向上と支配拡大

父の三木良頼は、飛騨国司姉小路家の宗家である小島氏と同盟を結び、さらに飛騨全土の支配者としての正当性を得るため、古川姉小路家との同化を試みました。永禄元年（1558年）には、良頼が従五位下に叙任され、光頼（後の自綱）も飛騨介に任官しました。この頃、三木氏は「三国司」という屋号を名乗ることを許されました。また、広瀬宗域と連合して高山晴高と山田紀伊守を滅ぼし、鍋山安室らを家臣としました。さらに小島時光が味方となり、三木氏の勢力は益田郡・大野郡に拡大しました。

「姉小路家」との同化と朝廷からの認証

永禄3年（1560年）、良頼は従四位下飛騨守、自綱は従五位下左衛門佐に叙任され、同時に名字を姉小路（古川）に改めました。三木氏による飛騨国司就任と姉小路氏の継承は、三木氏による乗っ取りとされてきましたが、実際には姉小路氏の一族として同化したというのが実情です。永禄5年（1562年）には、良頼が従三位となり、関白近衛前嗣から偏諱を賜って姉小路嗣頼と名乗り、自綱も姉小路頼綱と改名しました。同年、嗣頼は中納言任官を働きかけましたが、これは正親町天皇に拒否されました。しかし、頼綱は永禄6年（1563年）に侍従に任ぜられました。

武田氏との関係

永禄7年（1564年）、三木氏と敵対する江馬時盛が武田方に属し、武田軍の侵攻を受けますが、後に降伏します。しかし、永禄12年（1569年）に頼綱の弟が武田氏から離反したため、武田信玄の命を受けた遠山直廉が飛騨に侵攻し、大威徳寺が焼失しました。

遠藤氏との同盟

永禄12年（1569年）、遠藤慶隆と争いましたが、後に和睦し、娘を嫁がせて親族同盟を結びました。

上洛と拝謁

織田信長が上洛を果たすと、永禄13年（1570年）に姉小路嗣頼に上洛を命じました。頼綱は、斎藤利治と斎藤利堯を通じて父の名代として上洛し、正親町天皇に拝謁しました。また、信長が建てた二条御所の落成を祝う能楽にも「飛騨国司 姉小路中納言」として参加しました。頼綱は信長と親交を深める一方、上杉輝虎の要請に応じて越中国に出兵するなど、大勢力に囲まれた小勢力としての外交戦略も展開していました。

織田氏との親族同盟

上杉謙信の死後、頼綱は織田陣営に接近し、正式に織田氏と親族同盟を結びました。天正6年（1578年）には、織田軍が越中に攻め入る際、斎藤氏の親族としてこれを支援し、月岡野の戦いにも参加しました。天正7年（1579年）には本拠を松倉城に移し、飛騨統一に着手しました。頼綱は、佐々成政の越中における上杉征伐に協力しつつ、国内の親上杉派を攻め滅ぼしました。

飛騨国統一

天正10年（1582年）に信長が本能寺の変で死去すると、江馬輝盛が勢力拡大を狙い、小島城に夜襲をかけましたが、小島時光が勝利しました。頼綱は直ちに軍勢を率いて江馬輝盛を討ち、江馬氏を飛騨から追放しました。さらに、鍋山顕綱を滅ぼし、かつての味方を含めた敵対勢力を次々と掃討し、天正11年（1583年）頃には飛騨一国をほぼ手中に収めました。

内ヶ島氏との盟約と隠居

白川郷の内ヶ島氏とは長年争っていましたが、内ヶ島氏理を同盟者として自治を認めました。その後、家督を秀綱に譲り、自身は高堂城に移りました。織田家の北陸方面担当であった柴田勝家や佐々成政と行動を共にし、上杉氏に対抗しました。

飛騨征伐と追放

本能寺の変後、羽柴秀吉が台頭すると、秀吉軍は佐々成政の同盟者である姉小路氏を追討しました。金森長近の軍勢が飛騨に侵攻し、頼綱は高堂城で籠城しましたが、朝廷の命により降伏しました。頼綱と生き残った一族は京都に護送され幽閉されました。幽閉中は近衛前久に庇護され、遠藤氏や向氏に生活を援助されました。幽閉解放後は、公家として朝廷に働きかけ、姉小路氏の任官と飛騨国地主の保障を得ました。

晩年

公家として過ごし、剃髪して休安と号しました。天正15年（1587年）に死去し、橋本の浄林寺に葬られました。

人物・逸話

頼綱は京に縁のある姉小路家当主として振る舞い、朝廷に忠誠を尽くし、公家社会との交流を保っていました。また、室町将軍の家臣を書きならべた名簿にも、姉小路中納言飛騨国司として記載されています。頼綱の母は姉小路向氏であり、朝廷にて正式に姉小路名跡継承が許可されたとされています。正室は斎藤道三の娘であり、信長とは相婿の間柄でした。頼綱の肖像画が千光寺に現存しており、禅昌寺には位牌が保存されています。

官歴

永禄3年（1560年）2月16日：従五位下、左衛門佐
永禄6年（1563年）3月12日：侍従、光頼から自綱に改名

系譜

父：姉小路良頼
母：近衛前嗣の女
正室：斎藤道三の娘
長男：姉小路信綱
次男：姉小路秀綱
三男：姉小路季綱
四男：三木直綱
五男：小島基頼
男子：三木近綱
女子：遠藤慶隆継々室
* 女子：向宣政室

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