内豎省

内豎省の概要

内豎省（ないじゅしょう）は、奈良時代後期に設立された日本の令外官であり、天皇に近侍する内豎及び後宮を統括し、内裏の警護を担当していました。この組織は、天皇や皇族の安全を守るために重要な役割を果たしました。

内豎の歴史的背景

内豎という名は、元々内裏での雑務や警備を行う役人や童子を指していましたが、時代とともに組織化が進み、内豎所という統率機関が設けられるようになりました。この内豎所は、神護景雲元年（767年）にその機能を拡大する形で内豎省が設置された際に、より重要な役割を担うこととなりました。

『続日本紀』によると、内豎省には内豎卿、大輔、少輔などの職位が設けられ、その下には省掌や史生、使部、直丁といった様々な職員が存在しました。具体的には、卿や大輔、少輔がそれぞれ1名や2名の役職を持ち、内部の統制を行っていたとされています。このような高い地位には、称徳天皇の側近や道鏡の親族が就任していました。特に、内豎卿には道鏡の実兄である弓削浄人が任され、内豎大輔には藤原是公、内豎少輔には藤原雄依が就任したことが知られています。

内豎省の機能と役割

内豎省は、称徳天皇の政権を支えるための軍事的な組織として機能していました。当時は、内豎省が政治・軍事力を保持することで、太政官を拠点にした藤原氏や皇親勢力に対抗するために設けられた家司機関の一つと考えられています。内豎省は、このように政権の中枢を支える軍事機関としての役割を担い、内裏の警護を通じて天皇家の安全維持にも貢献していました。

組織の変遷

しかし、称徳天皇が崩御し、道鏡兄弟が追放されると、内豎省の存在意義は失われました。この時期、内豎大輔を務めていた藤原雄田麻呂が中心的な人物だったことは皮肉な選択でした。内豎省は宝亀3年2月16日（772年）に廃止され、その機能は近衛府や中衛府、左右兵衛府に分割されてしまいます。

その後、内豎の役割は途中で復置されることや、廃止されて大舎人によって担われることもありましたが、弘仁年間に入ると内豎及び内豎所は蔵人所の下部組織として復活します。このように、内豎省は日本の官制において重要な歴史的役割を果たしながらも、時代とともにその形態や機能が変わっていく過程を辿りました。

参考文献

• - 山本信吉「内豎省の研究」

関連項目

• - 日本の官制
• - 内侍省（唐をモデルにした官司で、内豎省とも関連がある）
• - 紫微中台（軍事機関として変質した家司機関）

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