南沙織 ポップスを歌う

南沙織 ポップスを歌う

『南沙織 ポップスを歌う』は、日本のアイドル歌手、南沙織によって1975年2月21日に発表されたコンピレーションアルバムです。発売元はCBSソニーでした。本作は、これまでに彼女がリリースしたオリジナルアルバムの中に収録されていた洋楽カバー楽曲のみを特別にセレクトし、一堂に集めた企画盤としての性格を持っています。

アルバムの構成と背景

当時の南沙織は、日本の歌謡曲界で確固たる人気を誇る一方で、その洗練されたイメージから洋楽のカバーにも積極的に取り組んでいました。本作はそうした取り組みの中から生まれたもので、彼女のオリジナルアルバムに散りばめられていた珠玉のカバーソングをまとめて聴くことができるように企画されました。収録されている音源は、全て過去に発表されたアルバムのためにレコーディングされたものです。新たな録音は行われず、既存の音源を再構成する形で制作されたため、この作品で初めて聴けるような未発表テイクやレアな音源は含まれていません。

収録曲について

本アルバムには、1970年代前半を中心に世界的にヒットした様々な洋楽ナンバーが、南沙織の歌唱によって収められています。選曲された楽曲は、彼女のこれまでのオリジナルアルバムから満遍なくセレクトされています。

例えば、8枚目のアルバム『ひとかけらの純情』からは、カーペンターズの代表曲「トップ・オブ・ザ・ワールド」や、ロバータ・フラックの情感豊かな「やさしく歌って」、ドン・マクリーンによる心温まるバラード「アンド・アイ・ラヴ・ユー・ソー」が選ばれています。

デビューアルバム『17才』からは、リン・アンダーソンのカントリーヒット「ローズ・ガーデン」や、フィル・スペクターがプロデュースしたザ・ロネッツの初期衝動的な名曲「ビー・マイ・ベイビー」が収録されました。

2枚目のアルバム『潮風のメロディ』からは、映画の主題歌としても知られるビージーズの「小さな恋のメロディ」が、そして4枚目のアルバム『哀愁のページ』からは、こちらも映画『小さな恋のメロディ』関連楽曲であるビヨルン＆ベニー（後のアバ）の「木枯しの少女」、キャロル・キングの普遍的な友情の歌「君のともだち」が選ばれています。

さらに、6枚目のアルバム『傷つく世代』からはアルバート・ハモンドのヒット曲「カリフォルニアの青い空」、3枚目のアルバム『純潔／ともだち』からはニール・ダイアモンドの代表曲「スウィート・キャロライン」、スリー・ドッグ・ナイトの軽快なナンバー「オールド・ファッションド・ラヴ・ソング」、そしてコカ・コーラのCMソングとしても有名になったザ・ニュー・シーカーズの「愛するハーモニー」といった多彩な楽曲が収められています。

これらの楽曲は、南沙織のアイドルとしての魅力と、洋楽曲への深い理解を感じさせる歌唱力が融合した、聴きごたえのあるラインナップとなっています。

発売後の変遷と現在の入手状況

本作品はLPレコードとして最初にリリースされた後、長い間ファンからの要望が寄せられていました。1990年代に入ると、過去のカタログを廉価でCD化する「CD選書」シリーズの一環として、1997年7月21日に初めてCDとして再リリースされました。これは、南沙織がLP時代に発表した多数のベストアルバムの中で、単独でCD化された唯一のタイトルとしても特筆される点です。

しかしながら、現在ではこの「CD選書」盤も含め、本作品自体は生産終了となり、単体で新たに入手することは難しくなっています。ただし、2005年に発売された南沙織のデビュー35周年記念CD-BOX『Cynthia Premium』には、彼女の全オリジナルアルバムが復刻収録されており、そこから本アルバムに収められている全てのカバー楽曲を聴くことが可能です。このボックスセットを通じて、本作の収録曲は引き続き多くの音楽ファンに親しまれています。

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