古のもの

古のもの：クトゥルフ神話の太古の支配者

クトゥルフ神話において、古のもの（Elder Thing、Old Oneなど、様々な名称で呼ばれる）は、地球を最初に支配した宇宙からの来訪者として描かれています。ラヴクラフトの代表作『狂気の山脈にて』で初登場し、その後、多くの作家によってクトゥルフ神話の重要な存在として体系化されてきました。本稿では、彼らの特徴、歴史、文化、そして様々な呼称について詳細に解説します。

多様な呼称

古のものは、日本語訳では「旧支配者」と呼ばれることもありますが、ラヴクラフトの原典ではOld One、Great Old Oneといった呼称が混在し、統一されていません。後続作家によってElder Thingという呼称が定着しましたが、邪神を指す「旧支配者」とは明確に区別されます。さらに、海百合状生物、樽型異星人といった比喩的な表現も用いられるなど、その呼称は多様性に富んでいます。作品によって異なる呼称が用いられるため、注意が必要です。

長い歴史

古のものは、起源不明ながらもこの宇宙で誕生した物質的な生物です。10億年以上にわたる地球史において、彼らは人類以前に多くの星々に勢力を拡大し、地球もその支配下に置きました。「ネクロノミコン」によれば、彼らは地球の生命を創造したとされ、その過程には偶然や意図的な要素が混在していた可能性も示唆されています。

地球上では南極を聖地として文明の中心地を築き、海中都市から大陸への進出、地球規模の都市建設へと発展を遂げました。しかし、クトゥルフの眷属やミ＝ゴといった他の宇宙種族との支配権争いや、イースの大いなる種族との小競り合いなども経験しています。高度な技術力を持っていたものの、長い年月を経て退化し、大寒波やショゴス（彼らが創造した生物）の反乱なども相まって衰退の一途を辿りました。現在では、かつての都市や遺跡で冬眠状態にある生き残りがほとんどで、活動している個体は僅かです。

1931年と70年後の2度にわたって、南極で彼らの遺跡と遺体が発見されており、現代の研究によって、彼らが人類のDNAを操作して誕生させ、そのエネルギー源が人間の恐怖心であること、そして異次元世界に本拠地を置き、改造された人間を監視役として地球に送り込んでいることが明らかになっています。

生物学的特徴

古のものは、胞子で繁殖する半植物的な生物であり、性別や家族といった概念を持ちません。また、地球の生物とは異なり、DNAを持たないことが大きな特徴です。植物のような放射相称性を持つ体長約2.4メートルの体型は、樽状の胴体、球根状の首、五芒星形の頭部を特徴とします。胴体には5枚の膜状の翼と5本の触手が並び、水中・大気中両方で活動可能です。特殊な器官から眼や口を開閉し、無機物と生物の両方を摂取します。

強靭で柔軟な体組織と非常に長い寿命を持ち、寿命で死ぬことは稀です。翼の先端には胞子嚢がありますが、繁殖は必要がない限り行われません。テレパシーで意思疎通を行い、精神力に弱い人間を錯乱させる力も持ちます。また、念動力で異次元から重機を操り、人間を攻撃することも可能です。翼は星間飛行能力を有していたとされますが、退化していると考えられています。

文化と科学

古のものは高度な知能と独自の感性によって、高度な文化と科学を発展させてきました。彼らの巨石建造物や彫刻は、人間には奇妙に見えるものの、高度な技術と計算に基づいていることがわかります。科学技術は現代の人類を遥かに凌駕していますが、必要がない限りは使用しません。機械に頼らず、身体能力で様々な環境に適応しますが、戦闘時には強力な未知のエネルギー兵器を使用します。

登場作品

古のものは、ラヴクラフトの『狂気の山脈にて』を筆頭に、『時間からの影』『魔女の家の夢』『闇をさまようもの』などにも言及されています。他にも、ブライアン・ラムレイ『狂気の地底回廊』、リン・カーター『暗黒の知識のパピルス』（Polar One）、『クトゥルフ神話TRPG』（Elder Thing）、コリン・ウィルソン『古きものたちの墓』（First One）、フレッド・チャペル『残存者たち』（Star Head）、矢野健太郎『邪神伝説シリーズ ラスト・クリエイター』など、多くの作品に登場し、それぞれの作品で異なる解釈がなされています。

まとめ

古のものは、クトゥルフ神話において、謎多き存在として重要な役割を担っています。彼らの長い歴史、独特の生物学的特徴、高度な文明、そして多様な呼称は、クトゥルフ神話の奥深さを象徴する存在と言えるでしょう。彼らの存在は、人類の起源や宇宙における存在意義といった根源的な問いを私たちに突きつけてきます。

もう一度検索