国鉄クム80000形貨車

国鉄クム80000形貨車

国鉄クム80000形貨車は、1986年（昭和61年）から1991年（平成3年）にかけて、日本車輌製造、川崎重工業、日本貨物鉄道（JR貨物）広島車両所で合計79両が製造された、私有貨車です。この貨車は、4tトラックを鉄道で輸送するピギーバック輸送に使用されました。

背景

国鉄は以前から、大型トラックのピギーバック輸送に関する試験をクサ9000形やクラ9000形などで行っていましたが、様々な問題から実現には至りませんでした。しかし、1985年（昭和60年）に西濃運輸から4tトラックを利用したピギーバック輸送の提案が出されました。これは、小型トラックで集配を行い、物流センターで大型トラックに積み替えて幹線輸送を行うという従来のトラック輸送に対し、小型トラックをそのまま鉄道で輸送することで、積み替え作業をなくし、効率化を図るという発想でした。4tトラックであれば通常の貨車と大差ない大きさで輸送できるため、この提案を受けて本形式が製造されることになりました。

構造

本形式は、全長19,100mm、全幅2,720mm、全高1,992mmで、自重は18.8tです。長さ8.5mまでのトラックを2台搭載することが可能です。床面高さは970mmで、トラックの荷台を少しでも大きくするために、わずかに低床化されています。荷重は16tですが、これにはトラックの自重が含まれるため、貨物運賃が高くなり、後に衰退の原因の一つとなりました。

車体はコンテナ車に似た魚腹形の側梁を持ち、塗装は車体がファーストブルー（明るい青）、台車が灰色1号です。トラックが貨車上を走行するため、上面は平坦になっており、タイヤガイドやタイヤを固定する緊締装置が設置されています。また、隣の車両に移動するための渡り板も装備されています。

台車は、ク5000形の廃車発生品を流用したTR63CF形が使用されています。ブレーキはコキ50000形250000番台に準じたCL方式応[[荷重装置]]付き自動空気ブレーキで、側梁には留置用の手ブレーキが備わっています。最高速度は100km/hで設計されていますが、当初は95km/hで運用されていました。

積載するトラックは、市街地集配用の4t車をピギーバック用に改良したもので、屋根は鉄道の車両限界に合わせた丸屋根になり、タイヤは低床化のために扁平タイヤが使用されました。

年度別製造数

全車が日本フレートライナーの所有で、クム80000からクム80078までの79両が製造されました。各年度の製造会社と両数は以下の通りです。

昭和61年度：18両
日本車輌製造 11両 (クム80000 - クム80010)
川崎重工業 7両 (クム80011 - クム80017)
昭和62年度：37両
日本車輌製造 19両 (クム80018 - クム80036)
川崎重工業 16両 (クム80037 - クム80048, クム80051 - クム80054)
広島車両所 2両 (クム80049 - クム80050)
昭和63年度：14両
日本車輌製造 9両 (クム80055 - クム80063)
川崎重工業 5両 (クム80064 - クム80068)
平成元年度：1両
川崎重工業 1両 (クム80069)
平成2年度：2両
川崎重工業 2両 (クム80070 - クム80071)
平成3年度：7両
川崎重工業 7両 (クム80072 - クム80078)

運用

1986年（昭和61年）11月のダイヤ改正で、東京貨物ターミナル駅、名古屋貨物ターミナル駅、大阪貨物ターミナル駅、東広島駅の4駅3区間で初のピギーバック輸送が開始されました。各列車はコンテナ列車に1両から2両程度の本形式を連結して運行されました。運行開始に先立ち、汐留駅の着発線でトラックを載せた状態で展示が行われ、ピギーバック輸送がPRされました。

その後、本州内の各都市を結び、多くのトラック運送事業者が参入して、ピギーバック輸送は急速に成長しました。1987年7月には日本海縦貫線でも運行が開始され、大阪貨物ターミナル駅と沼垂駅を結びました。1988年（昭和63年）7月には上越線経由で、隅田川駅と南長岡駅・沼垂駅間を結ぶ各1往復の運行が始まりました。

1989年（平成元年）3月には、東京貨物ターミナル駅と名古屋貨物ターミナル駅間を結ぶ54・55列車の最高速度が100km/hに引き上げられました。同年6月には、上越線経由の列車が集約され、12両の本形式に5両のコンテナ車を連結した編成となり、この2083・2082列車は中越運送がトラック運送利用枠を独占し、「ピギー中越号」の愛称で呼ばれるようになりました。「ピギー中越号」は1990年（平成2年）3月には本形式のみの17両編成となり、さらに10月には20両編成となりました。

1990年3月には、東北地方でも隅田川駅と盛岡貨物ターミナル駅間での運転が開始されました。この列車には、八戸貨物駅行きの継走車も連結されていました。この時期には、クム1000形の投入によって運用に余裕があったため、ピギーバック輸送以外での輸送も行われました。例として、横浜本牧駅と梅田駅間でアメリカ製の輸入キャンピングカー輸送が行われました。

1992年（平成4年）度には、年間98,500台のトラックを輸送するまでに成長しましたが、ピギーバック輸送は、貨車にトラックをそのまま積み込むため、スペース効率が悪く、バブル崩壊に伴う景気低迷によって需要が減少しました。各社は輸送から撤退し、最も利用の多かった中越運送もUV26A形ライトコンテナによる輸送に切り替えました。

1998年時点で、クム80000形は新潟貨物ターミナル駅と大阪貨物ターミナル駅間を結ぶ4073・4072列車で運用されていましたが、2000年（平成12年）3月のダイヤ改正で全てのピギーバック輸送列車が廃止されました。2002年（平成14年）7月に最後まで残っていた13両が廃車され、形式消滅となりました。

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