在原安貞

在原安貞（ありわら の やすさだ）は、平安時代前期に活躍した貴族です。平城天皇の孫であり、高岳親王の子として生まれました。彼の生涯は、父である高岳親王の皇太子廃位という出来事に深く影響され、波乱に満ちたものでした。

生い立ちと臣籍降下

在原安貞は、父である高岳親王が薬子の変により皇太子の地位を廃されると、兄の善淵と共に臣籍降下し、在原朝臣姓を賜りました。これにより、皇族としての身分を離れ、貴族としての道を歩むことになります。

清和朝での活躍

天安2年（858年）、清和天皇の即位に伴い、在原安貞は従五位下に叙爵され、官僚としてのキャリアをスタートさせました。貞観3年（861年）には大和権守に任官し、その後、大宰権少弐、大宰少弐と昇進を重ね、貞観8年（866年）には従五位上・肥後守に叙任されました。この間、九州地方の地方官を歴任し、清和朝の中盤を支える重要な役割を果たしました。

父の失踪と封邑返還の請願

貞観7年（865年）、父である高岳親王が唐の広州から天竺を目指して出発したものの、消息を絶つという悲劇に見舞われました。貞観15年（873年）、在原安貞は兄の善淵と共に、長期間消息不明となった父・高岳親王の封邑の返却を朝廷に上表しますが、この時は許可されませんでした。しかし、陽成朝に入り、元慶3年（879年）に再度封邑の返却を上表した際には、その願いが受け入れられました。

その後の官歴

陽成朝に入ると、在原安貞は摂津守に任ぜられ、元慶2年（878年）には次侍従に補任されました。元慶3年（879年）には正五位下に叙せられ、その官歴を終えました。彼の官歴は、『日本三代実録』に詳しく記されており、その詳細な変遷を辿ることができます。

系譜

在原安貞の父は高岳親王、母は不詳です。妻も不詳ですが、男子に在原載春がいます。

まとめ

在原安貞は、皇族の血を引きながらも、父の失脚によって臣籍降下し、波乱に満ちた生涯を送りました。清和朝では地方官として活躍し、父の失踪後は、その封邑返還のために奔走しました。彼の生涯は、平安時代前期の貴族社会における複雑な人間関係と政治情勢を反映しており、歴史研究において重要な人物として知られています。

官歴の詳細

時期不詳：正六位上
天安2年（858年）11月7日：従五位下
貞観3年（861年）1月13日：大和権守
貞観4年（862年）6月5日：大宰権少弐
貞観5年（863年）2月10日：大宰少弐
貞観8年（866年）1月7日：従五位上。11月29日：肥後守
貞観15年（863年）11月14日：見前肥後守
貞観19年（877年）1月：摂津守
元慶2年（878年）4月2日：次侍従。9月2日：摂津守（本官起之）
元慶3年（879年）1月7日：正五位下

参考文献

武田祐吉、佐藤謙三訳『読み下し 日本三代実録』（上下巻）、戎光祥出版、2009年
宝賀寿男『古代氏族系譜集成』古代氏族研究会、1986年

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