塩焼王

塩焼王の生涯

塩焼王（しおやきおう）は、日本奈良時代の著名な皇族であり、当初は臣籍降下して氷上 塩焼（ひがみ の しおやき）と名乗った。彼は天武天皇の孫であり、一品・新田部親王の子である。塩焼王の生涯は、時代背景や家族関係、政争、そして栄達の道をたどる中で波乱に満ちていた。

経歴の始まり

天平5年（732年）、塩焼王は無位から従四位下に昇進し、政治の舞台に登場した。彼は聖武天皇の側近としてしばしば行幸に供奉し、次第に重要な役職に就いていく。天平12年（740年）には、従四位上に昇叙され、同じ年の10月には御前長官として聖武天皇の伊勢行幸に参加。その後、功績が認められ、翌月には正四位下へと昇進したことが記録されている。

しかし、塩焼王の政治回路は順風満帆ではなかった。天平14年（742年）夏、彼は紫香楽宮への行幸において前次第司を務めた。その頃、彼は川辺東女を含む女性たちとともに平城獄に投獄され、後に伊豆国に流罪となった。皇位継承問題や遷都への反対がその原因とされているが、詳細は不明である。天平17年（745年）に赦免され、翌年には本位に復帰したものの、この事件は彼の名声に影を落とした。

政争と皇嗣推挙

その後、塩焼王は聖武朝末から孝謙朝半ばにかけて『続日本紀』には登場しないため、彼の動向は不明瞭であった。天平勝宝9年（757年）には、弟の道祖王の廃太子に伴い、皇嗣選定の会議が開催された。塩焼王は有力視されたが、孝謙天皇から拒否された。その理由は、過去に聖武天皇に無礼を咎められたことや、妻の不破内親王が称徳天皇から批判を受けていたことが影響したと考えられている。結局、皇太子には舎人親王の子、大炊王（後の淳仁天皇）が選ばれた。

同年5月、塩焼王は再び正四位上に昇進し、6月には大蔵卿に任じられる。さらに7月には橘奈良麻呂の乱に際して、新天皇候補の一人として名前が挙がるも、最終的には不問に付されることとなった。これらの出来事は、彼にとって一時的な安定をもたらしたが、その後の状況は変わってしまう。

昇格と降格

天平宝字2年（758年）には淳仁天皇の即位を受けて従三位に叙せられ、名声を高めた。彼はさらに権力を拡大しようとして、姉の陽侯女王の夫である恵美押勝に接近。天平宝字3年（759年）には礼部卿にまで出世し、意見封事を天皇に届け、その意見が採用された。また、天平宝字6年（762年）には参議、中納言と昇進し、高い地位を得ることになる。

権力争いと悲劇

天平宝字8年（764年）、恵美押勝が孝謙上皇との権力争いによって武装叛乱を起こすと、塩焼王は押勝によって新しく天皇として擁立されるが、彼の時運は再び悪化する。押勝の敗北後、孝謙上皇の軍に捉えられ、近江で殺害されてしまった。この事件は、当時の権力争いの激しさを物語っている。

官歴と家系

塩焼王の官歴は多岐に渡り、政治の中枢で活躍した。彼の父は新田部親王、妻は聖武天皇の娘、不破内親王であり、子供としては氷上志計志麻呂や氷上川継がいた。彼の人生は、王族の栄光と苦悩、その時代背景を描き出している。塩焼王の波乱に満ちた歴史は、奈良時代の政治的なドラマの一部であり、彼の名は日本史に刻まれている。

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