大森政輔

大森政輔

大森政輔（おおもり まさすけ、1937年5月11日 - ）は、日本の裁判官、弁護士、そして民法学者として知られています。特に身分法・戸籍法の分野で深い知識と研究を持ち、法曹界において重要な役割を果たしてきました。また、内閣法制局長官や国家公安委員会委員を歴任するなど、行政分野でも活躍しました。

生い立ちと学歴

1937年5月、兵庫県神戸市で生まれた大森政輔は、灘高等学校を経て京都大学法学部に進学しました。1960年3月に同大学を卒業し、在学中に司法試験に合格するという優秀な成績を収めました。その後、司法修習生として法律家としての第一歩を踏み出しました。

裁判官、法務官僚、法制官僚としてのキャリア

1962年4月、判事補に任官された大森は、京都地方[[裁判所]]を皮切りに、秋田、東京、岡山、大阪の各地の裁判所で裁判官としての経験を積みました。民事事件、刑事事件、家事事件、少年事件と幅広い分野を担当し、裁判官としての確固たる基礎を築きました。

その後、法務省に出向し検事として、民事局の第二課長や参事官を務めました。さらに内閣法制局に再出向し、総務主幹、第二部長、第一部長と要職を歴任しました。1992年には内閣法制次長に就任し、1996年には内閣法制局長官に就任しました。内閣法制局長官としては、第一次橋本内閣から小渕第一次改造内閣まで、日本の法制を支える重要な役割を果たしました。

退官後の活動

1999年に弁護士登録を行い、第一東京弁護士会に所属しました。弁護士としての活動に加え、ソニーや第一生命保険などの企業の監査役も務めました。また、2000年から2002年にかけては、東京家庭[[裁判所]]の家事調停委員として、市民の紛争解決にも貢献しました。

さらに、警察不祥事を受けて発足した警察刷新会議の委員や国家公安委員会委員を務めるなど、社会の様々な分野で活躍しました。2000年から2007年まで、早稲田大学法学部で客員教授として教鞭を執り、後進の育成にも尽力しました。

主張と意見

大森政輔は、選択的夫婦別姓制度の導入に賛意を示しています。2003年の衆議院法務委員会では、参考人として「自分と異なる意見に対する寛容の精神を基本として対応すべき」と述べました。また、国民感情の多様性を考慮しつつも、個人の自由意思を尊重する観点から、夫婦別姓の選択を認めるべきであるとの考えを示しています。

研究分野

民法、身分法、戸籍法をライフワークとして研究しており、民法学者としての顔も持っています。特に、最高裁判所家庭局付判事補として家事事件を担当した経験から、身分法や戸籍法への関心を深めました。法務省民事局では、戸籍を所管する第二課長を務めた経験も、研究に大きな影響を与えています。

人物像

大森政輔は、滝川事件に感銘を受け、学問の自由を重んじる京都大学を志望しました。司法修習生時代には、弁護士か裁判官かで迷いましたが、最終的に裁判官の道を選びました。法務省への出向や内閣法制局での勤務は、当初の志とは異なるものでしたが、霞ヶ関での経験を通じて視野が広がり、思考も柔軟になったと述べています。

「人生に悔いは残らない」と語る大森政輔は、法律家としてだけでなく、社会の様々な分野で重要な役割を果たし、その功績は広く認められています。

略歴

1959年（昭和34年）10月 司法試験合格
1960年（昭和35年）3月 京都大学法学部卒業
1960年（昭和35年）4月 司法修習生
1962年（昭和37年）4月10日 京都地方[[裁判所]]判事補
1965年（昭和40年）5月1日 秋田地方[[裁判所]]大曲支部判事補兼秋田家庭[[裁判所]]大曲支部判事補
1967年（昭和42年）4月16日 秋田地方[[裁判所]]判事補兼秋田家庭[[裁判所]]判事補
1968年（昭和43年）7月1日 東京家庭[[裁判所]]判事補兼東京地方[[裁判所]]判事補・最高[[裁判所事務総局]]家庭局付
1971年（昭和46年）4月10日 岡山地方[[裁判所]]判事補兼岡山家庭[[裁判所]]判事補
1972年（昭和47年）4月10日 岡山地方[[裁判所]]判事兼岡山家庭[[裁判所]]判事
1975年（昭和50年）4月1日 大阪地方[[裁判所]]判事
1978年（昭和53年）3月25日 東京地方[[裁判所]]判事
1978年（昭和53年）4月1日 法務省民事局第二課長・検事
1982年（昭和57年）4月1日 法務省民事局参事官・検事
1983年（昭和58年）1[[1月]]1日 内閣法制局総務主幹
1985年（昭和60年）1[[1月]]19日 内閣法制局第二部長
1989年（平成元年）8月18日 内閣法制局第一部長
1992年（平成4年）12月18日 内閣法制次長
1996年（平成8年）1月11日 内閣法制局長官
1999年（平成11年）8月24日 依願免官
1999年（平成11年）8月 内閣法制局参与
1999年（平成11年）10月22日 弁護士登録（第一東京弁護士会所属）
2000年（平成12年）4月 早稲田大学法学部客員教授
2001年（平成13年）6月 ソニー株式会社監査役
2002年（平成14年）1[[1月]] 国家公安委員会委員
2007年（平成19年）7月 第一生命保険相互会社監査役

栄典

2007年（平成19年）1[[1月]]3日 瑞宝大綬章受章

主な著作

『戸籍法〔全訂版〕』（青木義人と共著）（日本評論社、1982年）
『セミナー戸籍実務』（編著）（ぎょうせい、1988年）
『注解 判例民法4 親族法・相続法』（林良平と共編著）（青林書院、1992年）
『新行政法辞典』（園部逸夫と共編代表）（ぎょうせい、1999年）
『二〇世紀末期の霞ヶ関・永田町――法制の軌跡を巡って』（日本加除出版、2005年）
『立法学講義』（鎌田薫と共編著）（商事法務、2006年）
『法の番人として生きる　大森政輔元内閣法制局長官回顧録』（聞き手・牧原出）（岩波書店、2018年）

関連人物

瀧川幸辰

関連項目

滝川事件
警察不祥事
夫婦別姓

外部リンク

八重洲法律事務所 - 大森を紹介する八重洲法律事務所のページ
* 内閣法制局長官 - ウェイバックマシン（2001年5月11日アーカイブ分） - 大森を紹介する総理大臣官邸のページ

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