天野隆綱

天野隆綱：戦国時代の武将、大内・毛利両氏に仕えた生涯

天野隆綱は、戦国時代の安芸国（現在の広島県西部）に勢力を持った国人領主であり、大内氏と毛利氏という二つの有力な戦国大名に仕えた武将です。彼は安芸国賀茂郡志芳庄の米山城を本拠とする生城山天野氏の当主でした。

出自

安芸天野氏は、藤原南家工藤氏の流れを汲み、安芸国に下向して土着した一族です。天野隆綱の家系は、天野顕義を祖とする生城山天野氏に属します。一方、安芸国内には天野隆重、天野隆良、天野元明といった金明山天野氏も存在しました。

当時の天野氏は、毛利氏や宍戸氏と同格の国人領主という立場でした。代々、周防国（現在の山口県東南部）の大内氏の影響下にあったものの、隆綱の父である天野興定の時代に、出雲国（現在の島根県）の尼子経久が勢力を拡大して安芸国へ侵攻するようになると、大内氏から離反して尼子氏に味方しました。

しかし、後に大内義興が勢力を盛り返し、大永5年（1525年）に天野氏の居城である米山城を包囲すると、天野氏は滅亡寸前にまで追い込まれました。この時、毛利元就の仲介によって降伏が許され、興定は元就に対し、対等な関係を誓う起請文を交わして関係を深めました。以降、天野氏は大内氏と毛利氏の双方に友好的な立場を維持しました。

生涯

天野隆綱は、安芸国の国人領主である天野興定の子として生まれました。

天文年間には、大内義隆のもとに人質として送られ、その際に義隆から偏諱（名前の一字）を与えられて「隆綱」と名乗るようになりました。この人質時代に、同じく人質として来ていた毛利隆元と親交を深め、天文18年（1549年）には兄弟の契りを結ぶほど親密な関係となりました。

天文16年（1547年）に父・興定の跡を継いだ隆綱は、天文23年（1554年）に毛利氏が大内氏から独立すると、いち早く毛利氏に忠誠を誓う起請文を提出しました。翌弘治元年（1555年）には、武運長久と長寿を祈願して、並滝寺に東西条・原村の80貫の土地を寄進しました。

しかし、厳島の戦いの直後の同年11月27日に死去しました。隆綱には嫡男がいなかったため、弟の元定が後を継ぐこととなりました。

系譜

父：天野興定（1475年 - 1541年?）
正室：弘中隆兼の娘
生母不明の子
男子：澄月（? - 1569年） - 出家。永禄12年5月28日（1569年6月12日）に自害。



天野隆綱は、激動の戦国時代において、大内氏と毛利氏という二つの勢力の間で巧みに立ち回り、天野氏の存続に貢献した人物として評価されています。また、毛利隆元との個人的な親交も、毛利氏との関係を深める上で重要な役割を果たしました。

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