姚仁喜

建築家 姚仁喜（ヤオ・レンシー）

姚仁喜（ヤオ・レンシー、英語名：クリス・ヤオ）は、1951年台湾・台北市生まれの著名な建築家です。アメリカ[[建築家協会]]名誉研究員でもあり、台湾を中心に数多くの公共建築を手がけてきました。2019年には、日本初の「誠品生活」（東京・日本橋）の店内設計を担当したことでも知られています。

人物

姚仁喜は、私立東海大学建築学科で学士号を取得（1975年卒）後、カリフォルニア大学バークレー校で建築修士号を取得（1978年卒業）しました。1985年には自身の建築設計事務所「姚仁喜〡大元建築工場（KRIS YAO ARTECH）」を台北と上海に設立。彼の作品は、主に東アジア地域に所在し、オフィスビル、駅舎、学校、博物館などの公共建築を多数手がけています。代表作としては、蘭陽博物館、中鋼集団総部大楼、故宮博物院南部院区などが挙げられます。

また、ヴェネチア・ビエンナーレなどの国際的な展覧会にもインスタレーション作品やコクーンハウスを出展しています。

設計思想

姚仁喜の設計思想には、建築物に対する深い洞察が反映されています。彼は、建築を単なる構造物としてではなく、業者や所有者の物語、思想が込められたものとして捉え、「カメラのレンズを通した視点」と「街のストーリー性」を建築に反映させています。友人であるTVプロデューサーの王偉忠は、姚の建築展を訪れた際、「姚は建築を一つの舞台と考えている」と評しました。

彼は、ニューヨークフィルムアカデミーで短期間映画を学んだ経験も持ち、そのことが彼の建築に対する考え方に影響を与えている可能性があります。また、兄弟も建築設計を学んでおり、幼少期に両親から自由な発想を許容されていたことが、その背景にあると語っています。幼少期には重病を患い、週に一度しか登校できない時期がありましたが、担任教師からは叱責や懲罰を受けることなく、束縛のない環境で育ちました。自宅療養中は、辞典から漫画まで幅広く読書に耽り、高校時代には美術に興味を持ち、画廊に通っていたこともありました。しかし、進学先の東海大学には美術学科がなく、建築学科に進むことになりました。

姚仁喜は、頻繁に利用する台湾桃園国際空港を「流動性を優先し、刹那的な感覚に囚われる」とあまり好んでいません。高鉄彰化駅の設計では、駅舎に柱を多用したデザインを取り入れました。これは、当地の名産である花卉を意識し、駅舎を温室に、内部の柱を花やサトイモに見立てたものです。また、演出家の頼声川が「東洋のアヴィニョン演劇祭」を目指した烏鎮戯劇節の劇場設計も担当し、頼の代表作「如夢之夢」と烏鎮の18、19世紀の情景を思い浮かべながらデザインしました。

台北の聯合報大楼の建て替えでは、地下室の印刷工場が印象に残ったことから、活版印刷の活字棚に着想を得て、ビル外観のデザインに活用しました。

家族構成

姚仁喜は3兄弟の次男で、長兄の姚仁禄（エリック・ヤオ）はデザイナー、三男の姚仁恭は照明デザイナーであり、原住民の少年サッカーチーム「C33 Football League」の創設者です。妻は作家の姚任祥です。

受賞歴

姚仁喜は、数々の賞を受賞しており、その業績は高く評価されています。主な受賞歴は以下の通りです。

第八屆東海大学傑出校友
2005年 カリフォルニア大学バークレー校 Distinguished Alumnus Award
内政部第3屆中華民国傑出建築師奨傑出建築師規劃設計貢献奨（1997年）
国家文化芸術基金会第十一屆（2007年）国家文芸奨建築部門
中華民国不動産協進会（FIABCI-Taiwan）国家国土建設特別貢献奨（2011年）
2014年 アメリカ[[建築家協会]]名誉研究員

主な受賞物件

1998年 - 元智大学図書館（台湾建築師雑誌：台湾建築奨佳作）
1999年 - 台北富邦商業銀行金融中心（台湾建築師雑誌：台湾建築奨佳作）
1999年 - 大陸工程総部大楼/漢徳民生大楼（台湾建築師雑誌：台湾建築奨佳作）
2001年 - 仁宝電脳企業総部大楼（台湾建築師雑誌：台湾建築奨）
2002年 - 同上（世界建築雑誌社：第1屆WA中国建築奨佳作）
2007年 - 台湾高速鉄道新竹駅（財団法人徐元智先生紀念基金会：第六屆「遠東建築奨」佳作）
2010年 - 蘭陽博物館（財団法人徐元智先生紀念基金会：第七屆「遠東建築奨」台湾区傑出奨）
2012年 - 蘭陽博物館（シカゴ・アセニアム国際建築賞）
2012年 - 実践大学体育館・図書館（台北市都市景観大奨）
2013年 - 法鼓山農禅寺（世界華人建築師協会（WACA）：設計師大奨優秀作品）
2013年 - 中鋼集団総部大楼（アーキタイザー：Architizer A+ アワード ）
2016年 - 故宮博物院南部院区（台湾建築師雑誌：台湾建築奨佳作）
2019年 - 台大次震宇宙館（台湾建築師雑誌：台湾建築奨佳作）

主な作品

以下に、姚仁喜が手がけた主な作品を、竣工年ごとにまとめました。

台湾

台北市

1995年 - 誠品生活敦南店
1996年 - 台北富邦商業銀行金融中心
1999年 - 大陸工程総部大楼（漢徳民生大楼）
1999年 - 仁宝電脳企業（コンパル）総部大楼
2002年 - 三立電視弁公大楼
2003年 - 光寶科技（LITE-ON）総部大楼
2009年 - 克緹大楼（Kelti、全豊盛信義105大楼）
2009年 - 実践大学体育館・図書館
2009年 - 上海銀行仁愛大楼（上海商業貯蓄銀行仁愛分行）
2012年 - 法鼓山農禅寺
2013年 - 台湾人寿金融総部大楼
2013年 - 新光信義金融大楼（ハンブルハウス台北（台北寒舍艾麗酒店）および微風広場松高）
2014年 - 華南銀行総行世貿大楼
2016年 - 台湾戯曲中心
2017年 - 国立台湾大学次震宇宙館
2018年 - 聯合報弁公大楼（聯合･大於）
2019年 - 遠東百貨信義A13
建設中 - 富邦信義A25総部（レンゾ・ピアノとの共同）

新北市

2013年 - 板橋大遠百二期弁公大楼（黒川紀章との共同）
2017年 - 民視林口数位媒体総部
2015年 - 法鼓文理学院
2018年着工 - 新北市立美術館（鶯歌区）

桃園市

1998年 - 元智大学図書館

新竹市

2016年 - 新竹転運站

新竹県

2006年 - 台湾高速鉄道（高鉄）新竹駅

彰化県

2015年 - 高鉄彰化駅

雲林県

2015年 - 高鉄雲林駅

嘉義県

2015年 - 故宮博物院南部院区

台南市

2018年 - 国立台湾史前文化博物館南科分館（南科考古館）

高雄市

2012年 - 中鋼集団総部大楼

屏東県

2016年 - 屏東演芸庁

宜蘭県

2010年 - 蘭陽博物館
2019年（入札中） - 宜蘭第二行政中心（羅東鎮）

金門県

国立金門技術学院（現・国立金門大学）多功能健康活動中心（体育館・プール）
2011年 - 金門和平紀念園区の平和の鐘

台湾国外

日本

2019年 - 誠品生活日本橋（室内監修。日本橋室町三井タワー・コレド室町テラス）

中国

2013年 - 烏鎮劇院（浙江省嘉興市）
2015年 - 函谷山荘（北京市密雲区）
2015年 - 誠品生活蘇州（江蘇省蘇州市）
2018年 - 中国華潤大廈（室内監修、広東省深圳市）
2017年着工 - 湖畔大学（一期、浙江省杭州市）

書籍

姚仁喜の作品や設計思想を紹介する書籍も出版されています。

2001年 - 《Kris Yao/ARTECH Selected and Current works》（Images Publishing（オーストラリア）、ISBN 9781876907037）
2003年 - 《姚仁喜/大元聯合建築師事務所》（中国建築工業出版社（中国）、ISBN 9787112049653）
2011年 - 《ARCHITECTURE OF KRIS YAO/ARTECH》（Images Publishing（オーストラリア）、ISBN 978-1864702194）
2017年 - 《内境外象(姚仁喜的建筑美学)》（湖南美術出版社、ISBN 978-7535680105）

外部リンク

姚仁喜〡大元建築工場官方網站
Kris Yao 姚仁喜
姚仁喜校友（東海大學）
姚仁喜 大元建築工場 KRIS YAO ARTECH


姚仁喜は、建築を通して人々に新たな視点や物語を提供し続ける、現代を代表する建築家の一人です。

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