宮原秀夫

宮原秀夫の生涯と業績

宮原秀夫（1943年6月21日 - 2024年7月12日）は、日本の計算機科学者であり、情報ネットワーク学のパイオニアとして知られています。大阪市に生まれ、大阪大学大学院で工学博士号を取得後、研究者としてのキャリアをスタートさせました。その専門は情報ネットワーク学であり、特にインターネットに代表されるコンピュータネットワークのモデル化と性能評価において、学問領域を確立しました。

インターネットの基礎理論確立への貢献

宮原秀夫の最大の功績の一つは、インターネットの基礎理論を確立したことです。ARPANETプロジェクト初期段階において、回線交換技術よりもパケット交換技術が優れていることを理論的に証明しました。この業績は、現在のインターネットの基盤となるパケット交換技術の普及に大きく貢献しました。宮原の研究は、インターネットが今日の形に発展する上で、非常に重要な役割を果たしたと言えるでしょう。

LAN技術の発展への貢献

その後、宮原はLAN（構内網）の研究に着手し、多重アクセス制御方式に関する研究成果は、LANアーキテクチャの方向性を決定づけました。特にイーサネットは、分散処理システムの基盤技術としてだけでなく、インターネットへのアクセス手段としても重要な技術となっています。宮原の研究は、今日のLAN技術の発展に不可欠なものでした。

ATM技術の研究

1980年代後半からは、ATM（非同期転送モード）方式の研究にも取り組みました。企業との共同研究では、新しいスイッチアーキテクチャを設計・提案し、その性能評価によって他のアーキテクチャに対する優位性を示しました。この研究も、情報通信技術の進歩に大きく貢献しています。

情報通信研究機構理事長としての活動

宮原秀夫は研究者としての活動だけでなく、情報通信研究機構の理事長として、日本の情報通信技術の発展を牽引しました。また、大阪府立産業技術総合研究所所長、財団法人地球環境センター理事長など、多くの要職を歴任し、そのリーダーシップを発揮しました。

学術的な貢献

宮原は、文部科学省国立大学法人評価委員会委員長代理を務めるなど、教育・研究分野でも大きな貢献を果たしました。また、多くの論文を発表し、学会での発表や著書を通じて、その研究成果を広く社会に伝えました。主な著書としては、『コンピュートロール 38』や『コンピュータネットワーク』などがあります。これらの書籍は、情報ネットワーク分野の研究者や学生にとって、重要な参考資料となっています。

受賞歴

宮原秀夫の功績は、国内外から高く評価されており、数々の賞を受賞しています。主な受賞歴として、電気通信普及財団テレコム自然科学賞、電子情報通信学会論文賞、通商産業大臣賞、IEEEフェロー、電子情報通信学会業績賞、日本医用画像工学会学会賞、情報処理学会フェロー、エリクソン・テレコミュニケーション・アワード、総務大臣表彰、電子情報通信学会功績賞、NHK放送文化賞、高柳健次郎賞、大川賞などがあります。これらの受賞歴は、宮原の研究がいかに優れていたかを物語っています。

宮原秀夫の逝去

宮原秀夫は、2024年7月12日に白血病のため、81歳で亡くなりました。その死を悼み、従三位に叙され、瑞宝大綬章が追贈されました。宮原の逝去は、日本の科学界にとって大きな損失であり、その功績は永く語り継がれることでしょう。

宮原秀夫の略歴

1963年3月 - 大阪府立高津高等学校卒業
1967年3月 - 大阪大学工学部通信工学科卒業
1969年3月 - 大阪大学大学院工学研究科通信工学専攻修士課程修了
1972年3月 - 大阪大学大学院工学研究科通信工学専攻博士課程単位取得退学
1972年4月 - 日本学術振興会奨励研究員
1973年1月 - 大阪大学工学部助手
1973年1月 - 工学博士（大阪大学）　論文名「確率回路網および計算機網に関する研究」
1973年4月 - 京都大学工学部助手
1980年4月 - 大阪大学基礎工学部助教授
1981年8月 - 大阪大学情報処理教育センター助教授
1983年4月 - 大阪大学基礎工学部助教授
1987年1月 - 大阪大学大型計算機センター教授
1989年10月 - 大阪大学基礎工学部教授
1995年4月 - 大阪大学大型計算機センター長
1997年4月 - 大阪大学大学院基礎工学研究科教授
1998年4月 - 大阪大学大学院基礎工学研究科長・基礎工学部長
2000年4月 - 大阪大学留学生センター長
2002年4月 - 大阪大学大学院情報科学研究科長
2003年8月26日 - 第15代大阪大学総長（2007年8月25日まで）
2007年6月25日 - 財団法人地球環境センター理事長
2007年9月1日 - 情報通信研究機構理事長（2013年3月31日まで）
2009年7月5日 - 一般社団法人 臨床医工情報学コンソーシアム関西会長
2013年6月25日 - 大阪ガス株式会社取締役

主な著書

『コンピュートロール 38』（コロナ社、1992年4月）
（尾家祐二）『コンピュータネットワーク 基礎情報工学シリーズ』（森北出版、1992年5月）
（尾家祐二）『コンピュータネットワーク 情報・電子入門シリーズ』（共立出版、1999年11月）
（村田正幸）『インターネットがもたらすマルチメディア社会』（大阪大学出版会、2001年2月）
（尾家祐二、西尾章治郎、後藤滋樹、小西和憲、村井純）『岩波講座 インターネット〈1〉インターネット入門』（岩波書店、2001年3月）

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