足利義視

足利義視（あしかが よしみ）

足利義視は、室町時代の武将であり、室町幕府第6代将軍・足利義教の十男として生まれました。異母兄には、第7代将軍・足利義勝、第8代将軍・足利義政、堀越公方・足利政知がいます。また、第10代将軍・足利義稙（初め義材・義尹）の父でもあります。今出川殿、今出川公方とも称されました。

生涯

義政の後継者として

永享11年（1439年）に足利義教の十男として誕生。母は義教の側室である小宰相局で、庶子として扱われました。その後、母方の親族である正親町三条実雅の養子となります。嘉吉3年（1443年）には出家し、天台宗浄土寺の門跡となり、義尋（ぎじん）と名乗りました。

寛正5年（1464年）、実子がいなかった兄・義政に請われ、還俗することになります。当時、義政の兄弟で生存していたのは、古河公方に対抗するため堀越公方となっていた異母兄の政知のみでした。同年12月2日に還俗し、乳母の正親町三条実雅の屋敷に移り住み、今出川殿と呼ばれるようになります。同日、従五位下・左馬頭に叙任され、義視と名乗りました。

翌寛正6年（1465年）には従四位下に昇叙。幕府の行事では、義政やその御台所・日野富子と同等の扱いを受けるようになりました。また、日野重子の旧邸である「高倉殿」を「今出川殿」と改め、居所としました。7月には富子の妹である良子を正室に迎えます。これは義政と富子の勧めによるものでした。11月には元服し、参議と左近衛中将に補任され、順調に義政の後継者としての地位を確立していきます。同月、義政と富子の間に甥の義尚が誕生しますが、義視の立場に変化はありませんでした。

文正の政変

文正元年（1466年）、義政は斯波義敏を越前国・遠江国・尾張国の守護に任じ、斯波義廉を討伐するように命じます。しかし、山名宗全や畠山義就らはこれに反対し、義敏を支援する伊勢貞親らと対立します。9月5日、貞親は義視が反逆を企んでいると訴え、義政に義視の誅殺を求めました。義視も義廉と親しく、貞親の動きに対抗していました。

義視は山名宗全の屋敷に逃れ、元管領の細川勝元に無実を訴えます。翌6日には貞親が讒訴の罪を問われ失脚。義視は、以前から交流のあった季瓊真蘂とも親しく交際を続けました。政変後も義視の扱いに変化はなく、大嘗会では義政に代わって後花園天皇に供奉する役を務めています。

応仁の乱、そして亡命

文正2年（1467年）1月、畠山氏の家督争いが発端となり、応仁の乱が勃発しました。義視は義政と共に畠山義就を支援し、勝元の面目を失わせます。2月には両軍に和睦を呼びかけますが失敗。5月には細川勝元らの東軍と、山名宗全らの西軍との間で戦闘が始まりました。義視は義政・富子・義尚らと共に東軍に属し、6月には主将となります。しかし、義政が失脚していた貞親を呼び戻したため、孤立。8月には京都から出奔し、伊勢へ下向しました。

翌応仁2年（1468年）、西軍と古河公方足利成氏との間で同盟が結ばれますが、伊勢にいた義視はこれを承認します。9月には義政の説得で帰洛するも、義兄である日野勝光を非難したほか、貞親を起用した義政との対立を深めます。11月には室町第を脱走し、山名宗全の西軍に与しました。西軍では擬似幕府が創設され、義視は「公方様」「相公」と呼ばれます。義政は激怒し、義視を朝敵として追討の対象としました。

文明5年（1473年）に宗全が死去した後、義視は一条兼良に進退を相談します。文明8年（1476年）には義政との和睦交渉を開始し、翌文明9年（1477年）には富子へ和睦の仲介料を支払うなど関係修復を図りますが、義政との溝は埋まらず、西軍が解体された後は子の義材を伴い美濃へ亡命しました。

復権

長享元年（1487年）、子の義材が元服。義材は従五位下・左馬頭に叙位任官されます。これは、義尚に子がなかったことを憂いた富子の意向が強く働いたものでした。長享3年（1489年）、9代将軍・義尚が死去すると、義視は義材と共に上洛。富子の支持を受け、4月には出家し道存と号します。この頃、義政は政務を執っていましたが、病に倒れ、翌延徳2年（1490年）に死去します。

大御所として

義政の死後、義視は富子との関係を深めますが、富子が義材の従弟である足利義澄を擁立しようとしているという噂が立ち、義視は富子の所領を奪います。7月には義材が10代将軍となり、義視は将軍の父（大御所）として政務を執るようになりました。しかし、延徳3年（1491年）に病で死去。享年53歳でした。

義視の死後、義材は独裁的な政治を行い、富子や諸大名から反感を買います。そして、義視の死から2年後、義材は都を追われることになります（明応の政変）。

祭祀

義視の御影堂は相国寺の大智院に置かれました。これは足利義満以降の歴代将軍と同様の待遇です。義視は、将軍には就任しなかったものの、事実上の将軍家の当主として扱われ、その礼遇を受けていました。

官職および位階等の履歴

寛正5年（1464年）12月2日：還俗し、義視を名乗る。従五位下・左馬頭に叙任。
寛正6年（1465年）1月5日：従四位下に昇叙。11月20日：元服。11月25日：参議に補任、左近衛中将を兼任。12月17日：従三位に昇叙、権大納言に転任。
文正元年（1466年）1月6日：従二位に昇叙。
文正2年（1467年）1月5日：正二位に昇叙。8月23日：伊勢国に出奔。
応仁2年（1468年）12月5日：解官。
延徳元年（1489年）12月27日：出家。
延徳2年（1490年）7月5日：准后宣下。
延徳3年（1491年）1月7日：死去。2月24日：贈従一位・太政大臣。

偏諱を与えられた人物

一色視房
一色視冬
一色視元
大舘視綱
種村視久

関連作品

テレビドラマ

『若き日の北條早雲』（1980年、テレビ朝日、演：仲谷昇）
『花の乱』（1994年、NHK大河ドラマ、演：佐野史郎）

関連項目

応仁の乱

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