小黒丸城

小黒丸城：南北朝時代の激戦地

福井県福井市黒丸町に存在した小黒丸城は、南北朝時代に築かれた平城です。足羽川と九頭竜川の合流地点に近い沖積地に位置し、足羽七城と呼ばれる城郭群の一つとして数えられることもあります。近隣には大黒丸城があり、両城を合わせて「黒丸城」と総称される場合もあります。集落名から「郡黒丸城」と呼ばれることもあります。大黒丸城から約6キロメートル離れた地点に位置していました。

小黒丸城の築城年代は正確には分かっていませんが、『太平記』によると、延元3年/建武5年（1338年）2月、越前国で北朝方の守護・斯波高経と南朝方の新田義貞が激突した日野川の戦い後、敗走した斯波高経が新たな拠点として築城したとされています。この際に、斯波高経は黒丸城周辺に複数の支城を築き、それらが足羽七城を構成したと考えられています。なお、『太平記』では、大黒丸城と小黒丸城は明確に区別されておらず、「黒丸城」と記述されています。

激動の戦場

『太平記』の記述によると、延元3年/建武5年（1338年）5月、新田義貞率いる軍勢は黒丸城と足羽七城への大規模な攻撃を開始しました。5月2日の攻撃は撃退されましたが、5月21日にも攻撃準備が行われたものの、後醍醐天皇の義貞帰京命令により中断しました。

閏7月2日、新田軍は30000の大軍で再び攻勢をかけました。しかし、藤島城攻略に苦戦していたため、義貞はわずか50騎で藤島城へ向かい、小黒丸城から出撃してきた斯波方の軍勢300と遭遇、戦死しました（藤島の戦い）。

その後も、新田勢は脇屋義助をリーダーとして斯波高経と戦い続け、延元4年/暦応2年（1339年）7月には黒丸城を攻略し、一時的に高経を加賀国（現在の石川県）に撤退させました。しかし、黒丸城は斯波勢によって奪還され、脇屋義助は美濃国（現在の岐阜県）に逃れました。暦応4年/興国2年（1341年）頃までには、越前国全域は斯波高経の支配下に帰することとなります。

現在の状況

現在、小黒丸城跡は水田と宅地となり、地表には遺構は残っていません。しかし、石碑が建てられており、埋蔵文化財包蔵地「黒丸遺跡」として指定されています。ただし、城跡としては公式には登録されていません。

交通アクセス

えちぜん鉄道三国芦原線 新田塚駅から福井市乗合タクシー高屋線「二日市第2」行きで約7分、「黒丸」下車、徒歩約200メートル。
タクシーまたは徒歩で約2キロメートル。

※休日・年末年始は乗合タクシーが運休となる場合がありますのでご注意ください。

参考文献

平井聖ほか『日本城郭大系第11巻（京都・志賀・福井）』（新人物往来社、1980年）
福井県の歴史散歩編集委員会『福井県の歴史散歩』（山川出版社、2010年）
* 兵藤裕己校注『太平記（三）』（岩波書店、2015年）

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