山田川疎水

山田川疎水（やまだがわそすい）は、兵庫県を流れる志染川（しじみがわ）（上流域は山田川）を堰き止めたつくはら湖を水源とする灌漑用水路です。三木市と神戸市西区を流れ、山田疎水と略されることもあります。この疎水は、淡河川疏水（おうかわそすい）と合流し、淡山疏水（たんざんそすい）として、稲美町（いなみちょう）など東播（とうばん）一帯（印南野（いなみの））をも潤しています。

歴史

山田川疎水の計画は、江戸時代の1771年（明和8年）に明石藩によって始まりました。測量が開始されたのは1867年（慶応3年）で、着工は1911年（明治44年）、完成は1919年（大正8年）のことです。つくはら湖が造られる前は、山田川から直接取水していました。1933年（昭和8年）には、山田池も造成されました。1991年（平成3年）には、水源が東播用水へと切り替えられ、取水堰は解体されました。また、各疎水のコンクリート化などの改修も行われました。

2014年（平成26年）には、淡河川疏水を包括する神戸市と稲美町の淡山疏水が、国際かんがい排水委員会により、かんがい施設遺産に登録されました。

経路

つくはら湖を出た山田川疎水は、三木市志染町三津田・笠松峠下を隧道で経て、神戸市西区押部谷町で一度地表に現れます。その後、兵庫県道83号平野三木線と交差し、再び三木市緑が丘町で隧道に入り、神戸電鉄粟生線広野ゴルフ場前駅の直下を抜けます。再び地表に現れるのは、三木市志染町広野の広野ゴルフ倶楽部敷地内で、そこから宮ヶ谷調整池（大堤池）に貯水されます。ここまでが当初計画の水路で、総延長は10.75キロです。この疎水によって、848ヘクタールの耕作地が潤されています。

呉錦堂池（ごきんどういけ）から神出支線が派生し、下勝成池（しもかつなりいけ）（新松池）で淡河川疏水と合流し、淡山疏水となります。合流幹線は、神戸市西区神出町小束野（こうでちょうこづかの）で雌岡山（めおがやま）の北側を迂回し、老ノ口分水所（おいのくちぶんすいしょ）で山田川疎水に合わせ整備された岩岡支線と、既存の淡河川疏水系に分岐します。岩岡支線は神出浄水場（こうでじょうすいじょう）を経て、国道175号と並行し、西区神出町南から神出町宝勢へと屈曲します。兵庫県道377号野村明石線と並行し、岩岡支線の開通に合わせて新たに作られた17個のため池の一号池から、西区岩岡町印路・平野町印路を経て、一旦明石市大久保に入り、再び西区西脇で十二号池・十四号池に給水した後、印籠池などを経て、明石市魚住町の十七号池が流末になります。排水は、明石市を流れる瀬戸川や庄内用水、赤根川に流入し、瀬戸内海へと注ぎます。

また、神出浄水場からは平野支線も派生し、鍋谷池を経て、神戸市西区平野町常本・西戸田の田を潤した後、福知川へ注ぎ、明石川へ放水されます。この平野支線は、藤江川（ふじえがわ）の水源にもなっています。

一方、神出支線は雌岡山と雄岡山の間を抜け、兵庫県道65号神戸加古川姫路線と交差した後、西区押部谷町和田で明石川に至ります。

山田川取水口から宮ヶ谷調整池まではやや上り勾配で、送水は隧道部における水流・水圧や、埋設導水管による連結管の原理によって行われます。宮ヶ谷調整池から先は自然流下ですが、高低差は比較的緩やかです。

山田池

山田川疎水の完成後の1924年（大正13年）に大規模な干ばつが発生したことを受け、山田池が造成されました。現在はつくはら湖へ給水していますが、完成前は山田川疎水導水路へ直接送水していました。集水面積が57ヘクタールと小さかったため、1935年（昭和10年）から二年間かけて、シブレ山からの引水路が開削されました。この山田池は、土木学会の「日本の近代土木遺産～現存する重要な土木構造物2000選」に選定されています。

藤江川

藤江川は、本来は自然河川（明石川水系二級河川）ですが、上流域で山田川疎水平野支線・東播用水から給水を受けています。福知川をサイフォンで潜り抜け、明石川と並行しつつ明石市の野々池貯水池を経た後、明石市小久保では暗渠となり、西明石駅西側で地表に現れ、播磨灘に至ります。

東播用水

淡山疏水（淡河川疏水・山田川疎水）を補完するものとして、1970年（昭和45年）に着工し、1996年（平成8年）に完成したのが東播用水（とうばんようすい）です。篠山川（ささやまがわ）の川代ダムを取水口とし、川代導水路を経て、一度東条川に注ぎ、大川瀬ダムから大川瀬導水路で南進します。三木市の吉川地区へも供給しつつ、神戸市北区で僧尾川（そおがわ）となり、国道428号の丸山橋脇で淡河川疏水と立体交差して一部は疏水に給水されます。淡河川へ合流した後、シビレ山西麓に埋設された導水管がつくはら湖の呑吐ダム堰堤上を通過し、笠松峠下を抜ける山田川疎水路と埋設導水管に送水されます。

東播用水は、淡山疏水の補完目的で整備されましたが、完成の頃には減反政策・転作や離農などにより、灌漑用途の意味が薄れていました。そのため、導水管水路は神出浄水場まで伸びており、水道水としても用いられています。また、神戸市西区押部谷町細田の住吉神社付近で明石川支線を分岐し、西神ニュータウンの西神工業団地で工業用水道にも利用されています。松笠峠で分岐し、富士見が丘・月が丘から押部谷町西盛の新興住宅地を流れる水路（西盛川・福住川）として現れ、生活環境や緑化景観を形成しつつ明石川へ放水されます。

さらに、淡河川疏水の御坂サイフォン橋手前（御坂神社背後の愛宕山吞口水槽）から平井支線の埋設導水管が分岐し、山陽自動車道に併行し、三木市平井に至ります。東播用水土地改良区の水利事業所は、平井支線沿いに置かれています。

東播用水の総延長は281キロ、受益耕作面積は7390ヘクタールです。

現在、平成25～33年度の工期で第二期水利事業が進められています。

関係施設

山田川疎水関係

山田川取水堰跡
経済産業省近代化産業遺産に認定
北緯34度45分49.54秒東経135度6分38.56秒
宮ヶ谷調整池
北緯34度46分9.45秒東経135度0分24.49秒
呉錦堂池
北緯34度46分1.26秒東経135度0分42.33秒
下勝成池
北緯34度46分33.18秒東経135度0分3.71秒
神出浄水場
北緯34度44分38.18秒東経134度59分25.93秒
老ノ口分水所
北緯34度45分23.64秒東経134度59分22.99秒
円筒分水
一号池
北緯34度43分33.19秒東経134度58分14.63秒
十二号池・十四号池
北緯34度42分10.47秒東経134度55分52.23秒
十七号池
北緯34度42分4.22秒東経134度54分45.83秒
平野支線（藤江川）サイフォン
北緯34度42分34.19秒東経134度58分34.78秒

東播用水

川代ダム
北緯35度4分48.71秒東経135度9分35.38秒
大川瀬ダム
北緯34度56分45.22秒東経135度7分1秒
丸山橋立体交流・分水点
北緯34度49分4.77秒東経135度5分56.36秒
水土里ネット東播用水
北緯34度47分44.52秒東経135度2分29.67秒

脚注

出典

補詳

外部リンク

* 淡山疏水・東播用水博物館 (PDF)

もう一度検索

山田川疎水