岩風角太郎

岩風 角太郎

岩風 角太郎（いわかぜ かくたろう）は、1934年1月22日に宮城県で生まれ、東京都江戸川区春江町で育った大相撲力士です。本名は岡本 義和、大藤 義和、小沢 義和と複数回変わっています。若松部屋（一時的に西岩部屋）に所属し、最高位は東関脇でした。現役時代の体格は身長174cm、体重117kg。筋骨隆々とした体つきと、低い姿勢から相手の懐に潜り込むような速攻相撲が得意で、「鉄筋」「潜航艇」という愛称で親しまれました。

経歴

実家は鉄筋業を営んでおり、これが「鉄筋」というあだ名の由来の一つとなりました。中学校卒業後、家業を2年間手伝った後、18歳となった1952年5月場所で若松部屋へ入門し、土俵を踏みました。同期には後の大関・栃光がおり、当初は彼をライバルとして意識していたようです。

入門場所では番付外、新序で共に好成績を収めたため、翌場所では序ノ口を飛び越え、いきなり序二段に番付されました。当初の四股名は本名と同じ「岡本」でしたが、1954年1月場所から「岩風」と改名し、そのまま引退まで通しました。

その後、1955年5月場所で十両に昇進。そして翌年5月場所、22歳で新入幕を果たしました。

力士としての特徴と活躍

岩風は並外れた怪力の持ち主としても知られ、70貫（約263kg）のレールを持ち上げたという伝説が残っています。巡業先でも、重いものを探して持ち運んだり、薪割りをしたりすることが多かったそうです。得意手は右四つからの寄りや上手捻り。低い体勢から一気に相手に迫る相撲は「潜航艇」の異名にふさわしいものでした。

幕内では、その怪力と独特の相撲で上位陣を苦しめました。1959年7月場所では当時の横綱・若乃花を破って初の殊勲賞を獲得。翌1960年7月場所では12勝3敗と大きく勝ち越し、敢闘賞を受賞しました。この活躍により、岩風は江戸川区出身力士として二人目となる三役（小結）に昇進しました。

続く場所からは、関脇4場所、小結5場所と、実に9場所連続で三役の地位を維持しました。この三役在位中には、当時の横綱・大鵬に対し、1961年9月場所と11月場所で連勝するという金星ラッシュを演じました。糖尿病の持病を抱えながらも土俵を務め、後の横綱である栃ノ海や佐田の山に対しても善戦するなど、実力者としての存在感を示しました。

また、序二段に番付された1952年9月場所から引退まで、一度も休場することなく土俵に上がり続けたことも特筆されます。その連続出場回数は958回に及びます。

引退と晩年

9場所連続三役を務めた後、持病などの影響もあり徐々に番付を下げていきました。十両8枚目に在位した1965年9月場所限り、31歳で現役を引退しました。三役経験者でしたが、年寄名跡を取得することができず、相撲協会には残れませんでした。

岩風は現役時代から極度の無口な性格で知られていました。取組の結果に関わらずほとんど言葉を発せず、記者からは「むっつりでは横綱級」と評されるほどでした。気に入らないことがあると一週間、二週間と口をきかないこともあったといいます。対照的に、同期の房錦は饒舌で記者受けが良かったそうです。また、酒は全く飲めない下戸でした。

取的時代には、要領が悪く部屋の雑用で失敗を重ね、兄弟子から厳しい指導を受けたというエピソードが残っています。力士の基本動作である股割りも最後までできなかったといいます。相撲に嫌気がさし部屋を脱走し、一度は髷を切りましたが、師匠らの説得で帰参したこともありました。

稽古嫌いとの評判もありましたが、当時の若松部屋には稽古土俵がなく、一門の総帥である高砂部屋で稽古する環境でした。取的時代は厳しくしごかれましたが、関取になると高砂部屋の力士は遠慮し、岩風自身も「分家」の立場から遠慮があり、十分な稽古ができない状態が続いたことが要因とされています。若松部屋に稽古土俵ができたのは、岩風が力士としてのピークを過ぎた後でした。

私生活では、関脇時代の1961年5月場所後に結婚し、婿養子となりましたが、廃業後に抱えた多額の借金が原因で1970年に離婚。その後再婚し、一子をもうけています。

廃業後は、東京都足立区で妻の喫茶店を手伝うなどしましたが、無口な性格が災いし、市井での生活にも苦労が多かったとされます。晩年はトラック一台で廃品回収業を営み、余生を送っていたといわれています。

1988年4月30日、心不全のため東京都千代田区内の病院で逝去。54歳でした。怪力と速攻で土俵を沸かせた一方で、寡黙で不器用な人柄から波乱に満ちた生涯を送った力士でした。

主な戦績

通算成績: 480勝478敗（勝率.501）
幕内成績: 374勝406敗（勝率.479）
現役在位: 69場所
幕内在位: 52場所
三役在位: 11場所（関脇5場所、小結6場所）
連続出場: 958回（序二段以来無休）
三賞: 4回（殊勲賞3回、敢闘賞1回）
雷電賞: 2回
金星: 6個（千代の山1、吉葉山1、若乃花2、栃ノ海2）
各段優勝: 十両優勝1回 (1956年1月場所)

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