岸宏一 (活動家)

岸宏一（きし こういち、筆名：麻生浩）は、1947年7月、群馬県渋川市に生まれた日本の新左翼活動家です。群馬県立渋川高等学校を経て、1966年に慶應義塾大学経済学部に入学しました。学生時代から政治活動に関わり、1967年には砂川闘争や第一次羽田事件に参加、同年12月にはマルクス主義学生同盟中核派に加盟しました。

1968年には、米軍王子野戦病院開設阻止闘争や新宿米タン阻止闘争で逮捕・起訴され、同年12月には革命的共産主義者同盟全国委員会（中核派）に加盟しました。1969年5月には全学連（中核派）書記局、8月には全学連書記長代行、全国全共闘書記局員を歴任し、第二次羽田事件では総指揮者の一人となり、1970年2月に逮捕・起訴されました。その後、1971年には破防法裁判闘争を支える会の事務局に着任しましたが、1974年1月14日に革マル派による破防法被告・弁護団襲撃事件が発生した際、最高指導者本多延嘉の護衛中に負傷しました。

1976年6月には中核派東京南部地区委員長に就任し、1981年1月から2006年まで25年6ヶ月もの間、中核派の三里塚闘争担当責任者として活動しました。この期間中、岸は10.20成田現地闘争、東鉄工業作業員宿舎放火殺人事件、千葉県収用委員会会長襲撃事件、日本飛行機専務宅放火殺人事件、新左翼セクト同士の内ゲバなど、数々のテロリズムに関与したとされています。

1989年12月には中核派の政治局員に就任しましたが、2006年に中核派を離れ、2007年に中核派から除名されました。そして、2017年3月26日、谷川岳連峰・東谷山での雪山スキー中に遭難し、リュックを残して消息を絶ちました。

岸は、成田空港問題を取り扱った2017年のドキュメンタリー映画『三里塚のイカロス』にインタビュイーとして出演しました。この映画の最後のシーンでは、岸は自身の活動家としての人生を振り返り、「国家権力との闘いの中心にいたことは恵まれていた」と語る一方で、中核派の現状や三里塚での失敗についても言及しました。監督の代島治彦に「それは岸さんの失敗でもある」と問われた際には、「完全にそうですね」と認めています。

この映画の撮影後、岸は消息を絶ったため、このインタビューは事実上の遺言となりました。また、岸は2015年に出版した『革共同政治局の敗北1975～2014 あるいは中核派の崩壊』を巡り中核派から攻撃対象とされており、知人や家族に相談した上で映画撮影に臨んでいたという背景もありました。

岸宏一は、その生涯を通して新左翼運動に関わり、特に中核派の幹部として多くの活動に関わりました。その活動は過激化し、テロリズムにも関与したとされますが、晩年は自身の過去を振り返り、自己批判的な言動も残しました。彼の人生は、激動の時代を生き、社会変革を夢見た一人の活動家の軌跡として、現代に問いを投げかけています。

著書

水谷保孝; 岸宏一『革共同政治局の敗北1975〜2014　あるいは中核派の崩壊』白順社、2015年。ISBN 978-4834401646。

外部リンク

岸宏一 (@yamanami333) - X（旧Twitter）

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