常楽寺 (上田市)

常楽寺（じょうらくじ）

長野県上田市別所温泉に位置する常楽寺は、天台宗の別格本山であり、金剛山を山号とする由緒ある寺院です。本尊には妙観察智如来を祀り、北向観音の本坊としても知られています。

歴史

寺伝によれば、常楽寺は平安時代初期の天長2年（825年）に、円仁（慈覚大師）によって開創されたとされています。当時「七久里の里」と呼ばれていたこの地に観音菩薩が出現し、その霊地を守るために寺院が建立されたと伝えられています。鎌倉時代には、塩田流北条氏の庇護を受け、鎌倉仏教や禅宗文化が栄え、「信州の学海」と呼ばれるほど学問の中心地となりました。安楽寺、長楽寺（廃寺）と共に「三楽寺」と称され、安楽寺の開祖である樵谷惟仙も、16歳まで当寺で天台宗の修行を積んだとされています。また、金沢文庫の記録には、正応5年（1292年）に称名寺の僧侶が当寺で「十不二門心解」という経典を書写した記録が残されており、中世における常楽寺の学問的地位を裏付けています。享徳元年（1452年）には、「天祐」という僧が「如法経」を書き写し、「信濃国霊験の奇は常楽寺を以て無双となす」と記したことからも、当時この寺が信州における随一の学問寺であったことが伺えます。元和7年（1694年）に長楽寺が廃絶された後は、北向観音を常楽寺の伽藍の一部として所有・管理するようになりました。

常楽寺美術館

常楽寺の境内には、寺にゆかりのある美術品を保護・収蔵するための美術館が併設されています。1970年10月10日に開館したこの美術館は、初代館長に半田孝淳を迎えました。所蔵品の中でも特に有名なのは、徳川家康が慶長7年（1612年）に書写した「南無阿弥陀仏」の書、観応3年（1352年）銘の足利尊氏版本願経、葛飾北斎の「劉備檀渓渡河図」、室町時代の阿弥陀如来像、宋時代の観音菩薩像などです。また、住職の半田孝海が蒐集した白鳳時代から鎌倉時代までの古瓦コレクション約500点も見逃せません。その他、棟方志功の版画、北原白秋の原稿、北向観音堂に奉納された絵馬なども収蔵されています。

利用情報

常楽寺の拝観時間は季節によって異なり、以下の通りです。

春（4月～5月）：午前9時～午後4時30分
夏（6月～9月）：午前9時～午後5時
秋（10月～11月）：午前9時～午後4時30分
冬（12月～3月）：午前9時～午後4時

休館日は12月25日から1月25日までです。

文化財

常楽寺には、以下の文化財が指定されています。

常楽寺石造多宝塔（国指定重要文化財）：弘長2年（1262年）の銘があり、歴史的価値の高い建造物です。
常楽寺本堂（上田市指定有形文化財）
常楽寺石造多層塔（上田市指定有形文化財）

アクセス

常楽寺へのアクセスは、上田電鉄別所線の別所温泉駅が最寄り駅となります。

周辺寺院

常楽寺が位置する塩田平周辺は、「信州の鎌倉」とも呼ばれ、かつて塩田北条氏の拠点として栄えた地域です。そのため、鎌倉時代から室町時代にかけての中世の文化財が多く残されています。周辺には、国宝に指定されている安楽寺の八角三重塔や大法寺の三重塔、重要文化財に指定されている前山寺の三重塔や龍王山延命院中禪寺の薬師堂、信濃国分寺の三重塔など、歴史的な寺院が点在しています。

安楽寺 （国宝）八角三重の塔 他
大法寺 （国宝）三重の塔 他
前山寺 （重要文化財）三重の塔
龍王山延命院中禪寺 （重要文化財）薬師堂 他
信濃国分寺 （重要文化財）三重の塔
寶珠山龍光院

参考文献

『探訪 信州の古寺』 第1巻（天台宗・真言宗）、郷土出版社、1996年。
北沢房子 文、安藤州平 写真『信州休日の社寺巡り 東北信編50社寺』信濃毎日新聞社、2003年9月。
長野県博物館協議会事務局 編『長野県ミュージアムガイド』長野県の博物館・美術館の情報発信事業実行委員会、2017年3月。

関連項目

中部地方の重要文化財一覧
長野県指定文化財一覧

外部リンク

北向観音・常楽寺'>北向観音・常楽寺
北向観音常楽寺 Facebook'>北向観音常楽寺 - Facebook
北向観音常楽寺 Instagram'>北向観音常楽寺 - Instagram
北向観音常楽寺 X(旧Twitter'>北向観音・常楽寺 - X（旧Twitter）)
常楽寺
上田市の文化財 - 上田市マルチメディア情報センター'>上田市の文化財 - 上田市マルチメディア情報センター
常楽寺本堂
常楽寺石造多宝塔
* 常楽寺石造多層塔

もう一度検索