広開土大王級駆逐艦

広開土大王級駆逐艦

広開土大王級駆逐艦（광개토대왕급 구축함）は、大韓民国海軍が初めて国産化した駆逐艦です。KDX-I（Korean Destroyer eXperimental）計画に基づいて建造され、3隻が就役しました。本級の登場は、韓国海軍の作戦範囲を沿岸海域から外洋へと拡大する上で重要な転換点となりました。

開発の経緯

韓国海軍は建軍当初、沿岸での作戦に限定されていました。朝鮮戦争後、アメリカ海軍の駆逐艦に触れた韓国海軍軍人たちは、その優れた機動力と火力に感銘を受け、駆逐艦の導入を熱望しました。1958年の「新芽計画」で駆逐艦の取得が盛り込まれましたが、アメリカの艦艇貸与法の制約などから計画は遅延しました。

1963年、ようやくフレッチャー級駆逐艦「忠武」が就役し、その後もアメリカからの供与により駆逐艦の戦力が強化されました。しかし、これらの駆逐艦は老朽化が進んでおり、国産化の必要性が高まっていました。1970年代に朴正煕政権が打ち出した「自己完結型の国防力整備」計画に基づき、韓国は戦闘艦の国産化に着手。蔚山級フリゲートや東海級コルベットの建造経験を経て、1980年代初頭から駆逐艦の国内建造に向けた研究開発が始まりました。

1985年、「韓国型駆逐艦」（KDX）計画が正式に決定し、大宇造船海洋（現ハンファオーシャン）が建造を担当することになりました。当初は1996年の1番艦竣工を目指しましたが、設計の遅延などにより計画は遅れました。KDX計画は、後にKDX-2（李舜臣級）計画が開始されたことに伴い、KDX-1と改称されました。当初は最大20隻の建造も検討されましたが、最終的に3隻の建造に落ち着きました。

設計

船体は平甲板型を採用していますが、格納庫を設置した後部上部構造物は両舷いっぱいに広げられています。艦内容積の不足を補うため、上部構造物は高く、艦橋構造物の上にも大型の甲板室が設けられているため、やや重心が高くなっています。また、艦内余積に乏しく、復原性などの洋上行動力にも課題があると言われています。V字型に傾斜した並列式の2本煙突は、ステルス性を考慮した設計とも言われていますが、KDX-2ではシンプルな単煙突に改められています。

主機はCODOG（複合ディーゼル・ガスタービン）方式を採用し、高速機にはゼネラル・エレクトリック LM2500ガスタービンエンジン、巡航機にはMTU 20V956 TB92ディーゼルエンジンを使用しています。可変ピッチ式スクリュープロペラを両舷に2軸配置し、巡航機と高速機が各推進器に1基ずつ接続されています。

装備

電子装備は米欧折衷型で、戦術情報処理装置にはイギリスのSSCS Mk.7をベースにしたKDCOM-I、戦術データ・リンクには韓国型NTDS（KNTDS）を搭載しています。しかし、2012年以降、戦闘システムが頻繁にシャットダウンする問題が発生しており、システムのアップグレードが検討されています。

レーダーは、対空捜索用にAN/SPS-49(v)5、目標捕捉用にMW-08を搭載。ソナーは、艦底にDSQS-21BZ、曳航ソナーにSQR-220Kを装備しています。

武器システム

防空用には、RIM-7P シースパロー個艦防空ミサイルの垂直発射機（VLS）であるMk.48 mod.2を搭載し、STIR-180レーダーで誘導を行います。主砲はオート・メラーラ社製127mmコンパット砲、近接防御用にはゴールキーパー 30mmCIWSを装備。対水上火力としてハープーン艦対艦ミサイル、対潜兵器としてMk.32 3連装短魚雷発射管を搭載し、短魚雷は国産のK745 青鮫に更新が進められています。電子戦装置としては、APECS-II/AR-700電波探知妨害装置とDAGAIE Mk.2チャフ・フレア発射機を搭載しています。

同型艦

1. DDH-971 広開土大王（광개토대왕）
2. DDH-972 乙支文徳（을지문덕）
3. DDH-973 楊万春（양만춘）

艦名は、高句麗の王や将軍の名前に由来しています。

運用史

2018年12月には、広開土大王が能登半島沖で海上自衛隊のP-1哨戒機に火器管制レーダーを照射したとされるレーダー照射問題が発生しました。

また、指揮管制装置や曳航ソナーを換装する能力向上改修が計画され、2020年9月には3番艦の楊万春が改修を完了しました。

広開土大王級駆逐艦は、韓国海軍の近代化に大きく貢献した艦級であり、その技術は後の駆逐艦開発に活かされています。

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