弘法寺 (市川市)

真間山弘法寺は、千葉県市川市真間にある日蓮宗の由緒ある本山です。その歴史は古く、奈良時代に行基が真間の手児奈の霊を弔うために求法寺を建立したのが始まりとされています。その後、平安時代には空海が伽藍を整備し、寺名を弘法寺と改めました。一時天台宗に改宗しましたが、鎌倉時代に日蓮の教えを受け、時の住持・了性法印が法華経寺の富木常忍との論争の末に日蓮宗に改宗しました。この時、常忍の子である日頂が初代貫首となり、寺は大きく発展しました。

室町時代には、寺の門前に真間宿という門前町が形成され、江戸時代には徳川家康から朱印地30石を与えられました。徳川光圀も訪れ、茶室に「遍覧亭」という号を贈っています。また、紅葉の名所としても知られ、多くの書物にその美しさが記されています。

幕末の戊辰戦争の際には、一時的に幕府軍が逗留し、土方歳三も軍議に参加しました。その後、官軍が陣を構え、市川・船橋戦争の舞台となりました。明治時代には火災で諸堂が焼失しましたが、その後再建され、現在に至っています。

境内には、日蓮が自ら刻んだとされる大黒天を祀る大黒堂、鐘楼、仁王門、伏姫桜と呼ばれる枝垂桜などがあり、小林一茶、水原秋桜子、富安風生といった俳人たちの句碑も点在しています。また、境内には弘法寺古墳（前方後円墳）や真間山古墳（円墳）も存在し、歴史の重みを感じさせます。

現在の住職は82世の鈴木日晋貫首で、池上法縁五本山の一つとして知られています。

歴史の詳細

737年（天平9年）：行基が求法寺を建立。
822年（弘仁13年）：空海が伽藍を整備し、弘法寺と改称。
881年（元慶5年）：天台宗に改宗。
1275年（建治元年）：住持・了性法印が富木常忍との法論に敗れ、日蓮宗に改宗。日頂が改宗開山となる。弘法大師像を總持寺に移す。
1323年（元亨3年）：千葉胤貞より寺領の寄進を受ける。
1380年（康暦2年）：天台宗の僧・玄妙（顕本法華宗の祖）が弘法寺に帰伏し、日什と改名。
1457年（長禄元年）：太田道灌が茶室を寄進。
1501年（文亀元年）：弘法寺7世・日与が手児奈霊神堂を建立。
1591年（天正19年）：徳川家康が朱印地30石を寄進。
1695年（元禄8年）：徳川光圀が茶室に遍覧亭という号を贈る。
1888年（明治21年）：火災により諸堂を焼失。
1890年（明治23年）：諸堂を再建。
1972年（昭和47年）：本堂が鉄筋コンクリートで再建
1976年（昭和51年）：立大黒天神殿が造立

伽藍・境内

本殿
客殿
祖師堂
大黒堂
龍神堂
赤門
真間道場
仁王門
鐘楼堂
寂光土観音
手児奈霊神堂

文化財

真間万葉顕彰碑（真間女墓）：市川市指定有形文化財
涙石：正面石段の下から27段目にある石で、常に濡れているように見える。

涙石の伝承

江戸時代、作事奉行の鈴木長頼が日光東照宮の造営に使う石材を運搬中、船が動かなくなり、近くにあった弘法寺の石段に使用しました。責任を問われた長頼は、石段で切腹。その時の無念の血と涙が石に染み込んでいると伝えられています。また、市川市は湧き水が豊富なため、偶然水脈が石に触れているという説もあります。

旧末寺

日蓮宗は1941年に本末制度を解体したため、現在では旧本山・旧末寺と呼ばれています。弘法寺には多くの末寺があり、その一部を以下に示します。

東光山玄授院（千葉県市川市）
玉泉山安國院（千葉県市川市）
妙行山龍泉院（千葉県市川市）
真間山亀井院（千葉県市川市）
朝日山大林院（茨城県桜川市）
法頂山妙國寺（茨城県結城市、福井県福井市、新潟県上越市）
開会山妙関寺（福島県白河市）
他多数

交通アクセス

JR総武線 市川駅から徒歩15分
京成電鉄京成本線 国府台駅から徒歩10分
京成電鉄京成本線 市川真間駅から徒歩10分

真間山弘法寺は、長い歴史と豊かな文化を持つ寺院であり、多くの人々が訪れる場所です。

もう一度検索