徳基水庫

徳基水庫（とくきすいこ）

徳基水庫は、台湾の台中市和平区、大甲渓の上流に位置するダム湖です。このダムは、徳基発電所の貯水池として機能しており、大甲渓の河口から約87キロメートル、中部横貫公路の東勢区起点から約62キロメートルの地点にあります。台湾電力公司が管理するこのダム湖は、台湾で最も高い場所に位置しています。

概要

徳基水庫の流域面積は592平方キロメートルから600.02平方キロメートルに及び、貯水池面積は414ヘクタール、総貯水容量は2億3200万立方メートルです。この貯水量は、台湾の水庫の中で4番目に大きく、曽文水庫、翡翠水庫、石門水庫に次ぐ規模を誇ります。満水位は海抜1,408メートル、通常水位は1,400メートルに設定され、貯水は治水や発電のために調整されます。最低放水位は1,310メートルですが、土砂の堆積により、1,320メートルまたは1,325メートルまで水位が下がると給水が困難になります。

徳基水庫は、発電だけでなく、上水道の供給、治水、灌漑など、台湾中部にとって重要な多目的貯水池としての役割を担っています。水庫の水位は厳密に管理され、発電運転が可能な最低水位は1,350メートルに設定されています。

生態系

徳基水庫の集水域は、台湾の保護種であるタイワンマスの重要な生息地となっています。また、周辺地域はクマタカ、カンムリワシ、ツキノワグマ（亜種タイワンツキノワグマ）などの貴重な野生動物の生息地としても知られています。これらの動物たちは、この地域の豊かな自然環境を象徴する存在です。

ダムの構造

徳基ダムは、アーチ式コンクリートダムであり、堤高は180メートル、堤長は290メートル、天端幅は4メートルです。台湾で最も高いダムであり、日本の黒部ダムに匹敵するとされ、北東アジアでは2番目の高さです。ダムの頂上には、5つの水門が設置されており、洪水時に水を排出する機能を持っています。また、堤体の左右には2つの排砂門、中央には上下に2つの放水口が設けられています。

水力発電のために、日立製作所製の3基の立軸フランシス水車発電機が設置されています。発電所は地下200メートルの場所にあり、取水口はダムの南側に位置し、その後、排水トンネルに繋がっています。

歴史

大甲渓でのダム建設の計画は、日本統治時代に遡ります。1929年、台湾総督府の土木技師であった八田與一が、大甲渓上流での水力発電を構想しました。1934年には現地調査も行われましたが、計画は継続されませんでした。その後、1937年に日中戦争が勃発すると、台湾の資源として水力が注目され、1938年に大甲渓電源開発計画が決定しました。1939年には上流ダムの建設地に達見（徳基）が選定されました。当初計画では、堤高210メートルの重力式コンクリートダムが計画されていました。

大甲渓の水力発電計画は、達見（徳基）を含む8か所に発電所を建設するものでしたが、太平洋戦争の影響で、計画は頓挫しました。戦後、1946年に国民政府が台湾電力を接収し、未完の事業を引き継ぎました。その後、1956年に「大甲渓総合開発計画」が策定され、フランスの専門家による調査を経て、達見ダムの計画が再開されました。1968年には世界銀行からの融資を受け、建設が正式に認可されました。

建設

1967年、台湾電力はイタリアのELC Electroconsultに設計・建設のエンジニアリングサービスを依頼し、建設費を算出しました。1969年、国際入札の結果、イタリアのトルーノ社と日本の熊谷組の合弁会社が建設を請け負うことになりました。ダム建設地の河床は標高1,236メートル、右岸の斜面は2,000メートル以上、左岸は約1,500メートルでした。1969年12月8日に着工し、1973年12月に貯水を開始、翌1974年6月26日に最初の発電機が導入され、同年9月までに3基の発電機が全て稼働しました。ダム湖と発電所は1974年10月6日に完成し、蒋介石総統によって「徳基」と命名されました。

運用

1974年の完成後、徳基発電所が運転・保守管理を行ってきましたが、1996年からは大甲渓発電所が、大甲渓一帯の発電所を統合して総合的な運用管理を行っています。2021年には、徳基水庫と谷関水庫を結ぶ全長10.7キロメートルの水路トンネルを用いた揚水式水力発電計画が開始されており、2034年の稼働開始を目指しています。

関連項目

徳基発電所
大甲渓発電所
大甲渓
中部横貫公路
台湾の水庫
台湾の湖沼一覧
* 台湾のダム一覧

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