想い出のG.S.九十九里浜

Mi-Ke 1stオリジナルアルバム『想い出のG.S.九十九里浜』

1991年4月13日、音楽ユニットMi-Keから彼らにとって初となるオリジナル・アルバム『想い出のG.S.九十九里浜』が、D.O.G. HOUSEレーベルよりリリースされました。

Mi-Keは、1990年に発表したデビューシングル『想い出の九十九里浜』で大きな注目を集めました。この楽曲は、1960年代後半に日本で一大ムーブメントを巻き起こしたグループサウンズ（GS）の雰囲気を色濃く反映しており、特にザ・ワイルドワンズの代表曲『想い出の渚』へのオマージュであることが明確に示されていました。このデビュー曲の成功とコンセプトを受けて企画されたのが、本作『想い出のG.S.九十九里浜』です。

アルバムは全10曲で構成されており、タイトルにもなっているデビューシングル『想い出の九十九里浜』以外は、すべてGS黄金期を彩った名曲のカバーで占められています。これは、Mi-Keの音楽的なルーツや方向性を示すだけでなく、当時のGSブームをリアルタイムで体験した世代にとっては懐かしく、また若い世代にとっては新鮮なサウンドとして受け止められることを狙ったものでしょう。

GSオリジナルメンバーが豪華ゲスト参加

このアルバムが単なるGSカバー集に終わらず、特別な輝きを放っている最大の理由は、カバーされた楽曲の多くで、オリジナルの歌唱グループに所属していたメンバーがゲストとして参加している点にあります。彼らはボーカルやセリフなどでMi-Keの演奏に加わり、楽曲に往年の息吹と説得力を加えています。

参加したオリジナルメンバーと担当楽曲は以下の通りです。

真木ひでと（オックス）：『スワンの涙』
アイ高野（ザ・カーナビーツ）：『好きさ好きさ好きさ』
鳥塚しげき（ザ・ワイルドワンズ）：『想い出の渚』
加橋かつみ・森本太郎（ザ・タイガース）：『落葉の物語』
岡本信（ザ・ジャガーズ）：『君にあいたい』
清水道夫（ヴィレッジ・シンガーズ）：『亜麻色の髪の乙女』
デイヴ平尾（ザ・ゴールデン・カップス）：『長い髪の少女』
かまやつひろし（ザ・スパイダース）：『あの時君は若かった』

このように、当時の人気GSバンドを代表する面々が多数集結しており、Mi-Keのサウンドとの共演は、世代を超えた音楽的な橋渡しとしても機能しています。

収録曲解説

アルバムに収録された楽曲は以下の通りです。

1. 想い出の九十九里浜：Mi-Keのデビューシングルであり、アルバムタイトルにも冠された代表曲。
2. スワンの涙：1968年にオックスが発表した楽曲のカバー。オリジナルメンバーである真木ひでとがセリフと歌で参加。本作リリース後に『好きさ好きさ好きさ』とのダブルタイトルでシングルカットされました。
3. 好きさ好きさ好きさ：ザ・カーナビーツが1967年に日本語詞でヒットさせたバージョンをカバー。原曲はゾンビーズ。ザ・カーナビーツのボーカリストだったアイ高野がゲスト参加しています。
4. エメラルドの伝説：1968年のザ・テンプターズによる名曲。
5. 想い出の渚：ザ・ワイルドワンズが1966年に放った大ヒット曲で、Mi-Keのデビュー曲の直接的なオマージュ元です。オリジナルメンバーの鳥塚しげきが参加しています。
6. 落葉の物語：ザ・タイガースが1968年に発表した楽曲。元メンバーの加橋かつみと森本太郎が参加しています。
7. 君にあいたい：ザ・ジャガーズが1967年に発表したヒット曲『君に会いたい』のカバー。本作ではタイトルが『君にあいたい』と「あ」が平仮名で表記されています。元メンバーの岡本信がゲスト参加。
8. 亜麻色の髪の乙女：ヴィレッジ・シンガーズが1968年に大ヒットさせた楽曲のカバー。元メンバーの清水道夫が参加しています。
9. 長い髪の少女：ザ・ゴールデン・カップスが1968年に発表した楽曲のカバー。元メンバーのデイヴ平尾が参加。
10. あの時君は若かった：ザ・スパイダースが1968年にリリースした楽曲。元メンバーのかまやつひろしがゲスト参加しています。

これらの楽曲は、Mi-Keならではのコーラスワークと現代的なアレンジによって新たな息吹を吹き込まれつつ、オリジナルアーティストの参加によってGS時代の本物のテイストも加味されています。アルバム全体として、単なる懐メロカバーに終わらない、音楽史における特定の時代への敬意と、それを現代に提示しようとするMi-Keの意欲が感じられる作品と言えるでしょう。

『想い出のG.S.九十九里浜』は、Mi-Keの初期の方向性を決定づけただけでなく、GSという日本のポピュラー音楽史における重要なジャンルに改めて光を当てた意義深いアルバムとして記憶されています。

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