慶命

慶命（きょうめい）

慶命は、平安時代中期に活躍した天台宗の僧侶で、卓越した能力と人望により、法性寺座主と天台[[座主]]という二つの要職を歴任しました。その生涯は、当時の政治情勢、特に藤原道長の存在と深く関わりながら展開しました。

生い立ちと出家

慶命は、藤原北家真夏流の藤原孝友の子として生まれました。幼少の頃から仏道に惹かれ、延暦寺静慮院の遍救のもとで受戒しました。その後、延暦寺の塔頭である無動寺に入室し、修行に励みました。

立身

長保5年（1003年）、慶命は尊叡から権律師の位を譲り受けます。この時、尊叡は慶命の人相を見て「必ずこの山の仏法の棟梁となるであろう」と予言したと伝えられています。また、慶命が内覧左大臣・藤原道長と親しかったことも、この位譲与の背景にあったとされています。この逸話は『今昔物語集』にも記されており、当時の人々が慶命に寄せていた期待の大きさを物語っています。

寛弘7年（1010年）には権少僧都に任じられ、その後も順調に昇進を重ねていきました。寛弘9年（1012年）には、藤原道長の子である顕信が突然出家した際、その事実を道長に報告しました。その後、延暦寺での授戒の際には戒師を務めるなど、道長との関係を深めていきました。同年、法性寺座主に就任し、同寺東北院の別当も兼ねるなど、その地位を確固たるものとしました。長和3年（1014年）には権大僧都に進んでいます。

藤原道長との関わり

慶命と藤原道長との関係は、単なる庇護者と被庇護者という関係に留まりませんでした。長和3年（1014年）、道長が大僧都慶円の天台[[座主]]就任に難色を示した際には、慶円と道長の仲介役を務め、円滑な事態の収拾に貢献しました。また、長和4年（1015年）には、道長の五十賀の法会で急病となった定澄の代わりを務め、法性寺で行われた法会でも講師を務めるなど、道長からの信頼も厚かったことが伺えます。

寛仁3年（1019年）、道長が出家した際には、定基と共に剃髪を担うという重要な役割を果たしました。これらの事績は、慶命が道長にとって欠かせない存在であったことを示しています。

晩年と入滅

治安3年（1023年）には権僧正に任じられます。同年、摂津国内の荘民が左衛門尉宮道式光の馬を射てしまった事件では、荘民の宥免を訴え、認められています。万寿3年（1026年）には太皇太后藤原彰子の落飾に際して、心誉と共に唄師を務めました。万寿5年（1028年）には、ついに天台[[座主]]に就任し、「無動寺座主」と称されるようになります。同年、僧正に転じています。

長元2年（1029年）には覚空より両部伝法灌頂を受け、長元3年（1030年）には法成寺東北院落成供養で導師を務めました。長元4年（1031年）には、山門僧の円意と合戦があったという記録が残っています。同年、大僧正に上りましたが、長元6年（1033年）には辞任しています。一条朝以来断絶していた勧学会の復興を提唱し、随願寺での復興を実現しました。長暦2年（1038年）9月7日、慶命は入滅しました。その死後、後任の座主を巡り、山門派と寺門派が激しく争う事態となりましたが、翌年、朝廷は山門派の教円を天台[[座主]]に任じました。

慶命は、その生涯を通じて、天台宗の発展に大きく貢献しました。また、藤原道長との親密な関係は、当時の政治情勢や仏教界の動向を理解する上で重要な鍵となります。彼の事績は、後世にまで語り継がれ、今なお多くの人々に影響を与えています。

参考文献
上田正昭; 西澤潤一; 平山郁夫ほか編『日本人名大辞典』講談社、2001年。
林家辰三郎; 村井康彦; 森谷尅久編『京都市の地名』平凡社〈日本歴史地名大系〉、1979年。
桃裕行「勧学会」『国史大辞典』 3巻、吉川弘文館、1983年。
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東京大学史料編纂所編『大日本史料第二編』 4巻、東京大学出版会、1969年。
東京大学史料編纂所編『大日本史料第二編』 6巻、東京大学出版会、1969年。
東京大学史料編纂所編『大日本史料第二編』 6巻、東京大学出版会、1970年。
東京大学史料編纂所編『大日本史料第二編』 8巻、東京大学出版会、1970年。
東京大学史料編纂所編『大日本史料第二編』 9巻、東京大学出版会、1970年。
東京大学史料編纂所編『大日本史料第二編』 19巻、東京大学出版会、1980年。
東京大学史料編纂所編『大日本史料第二編』 20巻、東京大学出版会、1990年。
東京大学史料編纂所編『大日本史料第二編』 22巻、東京大学出版会、1990年。
東京大学史料編纂所編『大日本史料第二編』 22巻、東京大学出版会、1990年。
東京大学史料編纂所編『大日本史料第二編』 28巻、東京大学出版会、2004年。
東京大学史料編纂所編『大日本史料第二編』 30巻、東京大学出版会、2011年。

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