懐帝 (西晋)

懐帝（かいてい）

懐帝（284年 - 313年）は、西晋の第3代皇帝であり、名は熾（し）です。初代皇帝である武帝の第25子として生まれました。

生涯

皇帝即位まで

太熙元年（290年）に豫章王に封じられ、八王の乱では戦乱を避けて過ごしました。その後、車騎大将軍・鎮北大将軍に任じられます。永興元年（304年）には、甥である皇太子司馬覃が廃位されたため、皇太弟となりました。光熙元年11月（307年1月）に異母兄である恵帝が崩御すると、東海王司馬越によって皇帝として擁立されました。

皇帝として

即位当初、八王の乱は終結したものの、司馬越が実権を掌握しました。しかし、各地で反乱が頻発し、特に永嘉2年（308年）には匈奴の首長である劉淵が山西南部一帯を勢力下に収め、漢（後の前趙）を建国して皇帝を称するなど、中原に居住していた北方・西方出身の非漢民族（五胡）が八王の乱に乗じて自立し、西晋への攻撃を激化させました。中央政府の権威は失墜し、西晋は衰退の一途をたどります。また、朝廷内では懐帝と司馬越の対立が深まり、司馬越は懐帝の詔と偽って丞相を自称するなどの事態も発生しました。

永嘉の乱と最期

永嘉5年（311年）、懐帝が苟晞に司馬越討伐の密詔を出したことが発覚し、司馬越は軍を率いて首都洛陽を出て許昌に拠点を移しますが、その途中で病死し、西晋の求心力は完全に失われました。司馬越の軍は王衍が引き継ぎましたが、漢の武将である石勒に敗れ、王衍以下10万の将兵が殺害されました。同年6月、懐帝のいる洛陽も劉淵の後を継いだ劉聡、石勒、劉曜、王弥らの攻撃を受け陥落し、懐帝は長安へ脱出しようとしましたが、皇太子の司馬詮と共に劉曜に捕らえられました。この戦乱で3万以上の軍官民が犠牲になったとされています（永嘉の乱）。

捕虜となった懐帝は、劉聡によって平陽に連行され、奴僕の服装をさせられて酒宴で給仕や洗い物の役をさせられるなど、屈辱的な扱いを受けました。劉聡が外出する際には日除けの傘を持たされることもあり、人々から嘲笑されたと言われています。その後、劉聡は懐帝を儀同三司・会稽郡公に封じ、側近にも官職を与えましたが、これは懐帝を懐柔するための策略でした。

しかし、西晋の残党が長安で司馬鄴（愍帝）を皇帝に擁立し、勢力を盛り返すと、劉聡は懐帝を疎ましく思うようになります。永嘉7年（313年）1月、劉聡は懐帝に酒を注がせましたが、これに同席した晋の旧臣たちが慟哭したため、劉聡は不快感を露わにしました。同年1月、王儁らが劉琨に内通しているとの密告を受け、懐帝は平陽で処刑されました。享年30歳。劉聡は王儁をはじめとする晋の旧臣10余人を処刑し、懐帝に与えた劉夫人を再び自分の貴人とし、領内で大赦を行いました。

懐帝の死後、西晋は愍帝も同様の末路をたどり、滅亡へと向かいました。

年表

太熙元年（290年）：豫章王に封じられる。
永興元年（304年）：鎮北大将軍・都督鄴城守諸軍事となる。12月、皇太弟となる。
光熙元年（306年）11月：恵帝が死去し、司馬熾が皇帝に即位。
永嘉5年（311年）：洛陽が陥落し、劉曜に捕らえられる。
永嘉7年（313年）：劉聡により殺害される。

宗室

皇后：梁蘭璧（乱により行方不明）
夫人：会稽郡夫人劉氏（劉聡の元貴人）
子：不詳

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