成実宗

成実宗の概要

成実宗（じょうじつしゅう）は、仏教の一派であり、特に『成実論』を研究する論宗として知られています。この宗派は、経典ではなく論を基にしたもので、中国の十三宗、そして日本の南都六宗の一つに位置付けられています。

成立の背景

成実宗の成立は、鳩摩羅什による成実論の漢訳が行われた412年にさかのぼります。当初は北朝で伝えられていましたが、鳩摩羅什の弟子である僧導が南方の寿春や建康で講演を行い、広く普及しました。さらに、僧導の弟子である道猛が、建康の興皇寺において成実の教えを広めたことも、宗派の発展に寄与しました。

隆盛の時代

南朝の梁代（502年 - 556年）に、成実宗は最も栄えました。この時期には、光宅寺の法雲、開善寺の智蔵、荘厳寺の僧旻の三大法師が成実の教えを発展させ、仏教界において重要な存在となりました。彼らは「三大法師」として知られ、成実論の重要性を一層強調しました。

異なる評価

その後、隋代に入り、天台宗の智顗や三論宗の吉蔵によって成実論は小乗の教えとして再分類され、次第に衰退の道をたどります。特に吉蔵は『三論玄義』の中で、大乗の空と成実の空の違いを論じ、成実論の位置付けを再考しました。初唐の時代には宗派としての存在は薄れていきましたが、律宗の道宣はこの教えが大乗に通じるものだと評価しました。

日本への伝来

日本には、百済の道蔵が成実宗を伝えたとされています。延暦25年（806年）には、太政官の指示により、三論に関する学びの中で成実論が教えられたことが記録に残っています。成実宗は独自の宗派になることはなかったものの、日本の仏教の形成において重要な役割を果たしました。

教義の特徴

成実宗は「俗諦」と「真諦」を対比させる教義が特徴的です。俗諦は一般的な事実や現象を指し、真諦はその背後にある真実を示します。この教えでは、俗諦は存在するものの、真実の視点から見るとそれは空であるとされます。

結論

成実宗はその成立から、教育、思想、そして日本の仏教の発展に大きく貢献してきました。その教えは今もなお、現代の仏教理解に深い影響を与えています。成実宗の歴史と哲学は、仏教の多様性を理解する上で欠かせない要素となっています。

参考文献

『成実論　新国訳大蔵経 インド撰述部 大蔵経毘曇部6・7』 大蔵出版、平井俊榮・荒井裕明・池田道浩校注

関連項目

• - 訶梨跋摩
• - 成実論
• - 南都六宗

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