戸川氏

戸川氏（とがわし）

戸川氏は、戦国時代から江戸時代にかけて存在した日本の武家、士族です。家紋としては「三本杉」や「梅鉢」紋などが用いられました。著名な人物としては、初代の戸川秀安や、明治時代に活躍した早島戸川家出身の戸川残花が挙げられます。

歴史

『戸川記』『戸川家譜』『備前軍記』などの史料によると、戸川氏の初代・戸川秀安は、母が宇喜多忠家の乳母であった関係から宇喜多氏に仕え、三村氏や毛利氏との戦いで武功を立てました。元亀元年（1570年）には、宇喜多直家が謀略によって金光宗高を切腹させた後の石山城（岡山城）の接収を馬場職家とともに行いました。天正3年（1575年）には常山城主となり、2万5000石を領有し、宇喜多氏の筆頭家臣として重きをなしました。天正14年（1586年）頃には、従五位下・肥後守に任官し、間もなく隠居しました。

秀安の後を継いだのは達安でした。達安は、若い頃から備中高松城攻め、九州征伐、小田原征伐、文禄・慶長の役といった主要な合戦に参戦しました。文禄元年（1592年）には、宇喜多秀家から国政を任されましたが、文禄3年（1594年）に秀家から長船綱直に国政を交代するよう命じられ、これに従いました。しかし、国政をめぐって綱直と対立することが多く、慶長5年（1600年）1月には、御家騒動（宇喜多騒動）により徳川家康に預けられ、常陸国で蟄居することとなりました。同慶長5年（1600年）の関ヶ原の戦いでは徳川軍として参戦し、島清興を討ち取るという軍功（早島戸川氏伝承）を立てました。戦後、備中国庭瀬藩主となり2万9200石を領有し、その後も大坂の陣に参陣しました。達安の弟である正安と勝安は旗本となりましたが、それぞれ3代、2代で断絶しました。

達安の後を正安が継ぎ、その際に弟の安尤と安利にそれぞれ早島3400石と帯江地区3300石を分知しました。

正安の後を安宣が継ぎ、その際に弟の安成に妹尾1500石を分知しました。

安宣の後を安風が継ぎ、その際に弟の達富に1000石を分知しましたが、安風が延宝7年（1679年）に9歳で死去し、無嗣断絶で改易となりました。しかし、宗家の名跡は安風の弟である達富が5000石の旗本（交代寄合）として家名存続することを許されました。

戸川家はその後、宗家の他に安尤、安利、安成の家系が旗本として存続しました。

幕末維新期の宗家の当主は戸川達敏でした。達敏は朝廷に早期帰順し、本領を安堵されて朝臣となり、中大夫席を与えられました。明治2年に中大夫以下の称が廃止されると、士族に編入されました。

明治17年（1884年）に施行された華族令で華族が五爵制になった際に定められた『叙爵内規』の前の案である『華族令』案や『叙爵規則』案では旧交代寄合諸家が男爵に含まれており、戸川家も男爵家の候補として挙げられていましたが、最終的な『叙爵内規』では対象外となったため、結局戸川家は士族のままでした。

略系図

（省略）

参考文献

松田敬之『〈華族爵位〉請願人名辞典』吉川弘文館、2015年11月。ISBN 978-4642014724

関連項目

庭瀬藩
宇喜多氏
今村俊也
* 岸昌

もう一度検索